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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
152/214

第152話 似非お嬢様


「ネイサン様ごきげんようですわ」


「・・・」


「とってもおひから‥‥ おひがら? が良くてございますですわ オホホホホですわ」


「・・・」


「あららどういたしましたでございますです事ですわ」


「・・・」


「ネイサン様なんで黙ってんのです事?」


「・・・」


「な 何でロープ出してんのです事? 嫌‥‥ 縛らないで下さい事ですの、ねえ何でなの?」


「お前どう言うつもりだ? てか何、名前を勝手に呼んでる? 俺は許可した覚えは無いぞアンナ」


「だって守長はこーゆー風に言われるのが好きなんでしょ? ねえ縛らないで」


「分かった分かった、と言うフリだろ? 俺はちゃんと分かってるから大丈夫だ、縛らないで、絶対縛らないでって前フリ何だろ? ちゃーんと分かってるから」


このアホは何抜かしやがってくれてんだ?


あれか? マデリン嬢の真似か?


しかも何、ファーストネームを勝手に言ってくれちゃってんだ?


うん、久々に縛って簀巻きにしよう、そうしよう。


「ねえ守長、フリじゃ無いから、本当に! フリじゃ無いの、ねえ守長」


「ってフリだろ? 分かってる、分かってる、ちゃーんと分かってるから、って前フリだろ? 俺はちゃんと分かってるから大丈夫だアンナ」


「ねえ違うの本当なの、前フリとかじゃ無いから」


うん、念入りな前フリだな。


ならば俺もきっちり応えてやらねばならん。


てか余りにも杜撰なお嬢様言葉だ、所詮は出来の悪い猿真似でしかない。


コイツには教育が必要だ、俺がきっちりと教育してやろうじゃないか。


本当にしょーもない、マデリン嬢が昨日来て、今日早速こんなマネしくさってからに‥‥


昨日は何やかんやで本当に疲れた。


久々に精神を削られたし、あんなヒリヒリとした会話や空気感は堪えた。


今日は一日ゆっくりのんびり自由気儘に過ごす、そう決めたんだ。


仕事何か朝イチで当然終わらして、ポケーっとボケーっとしてる時にコイツは‥‥


「てかお前学校が終わって荷物だけ家に置いて即来やがったな? 良い根性してるじゃないか、ご褒美に簀巻きにして吊るしてやるな、久々だなお前を吊るすのは‥‥」


「ねえ、学校終わって荷物置いてすぐ来るのなんて何時もの事じゃない、何でなの?」


「うん、そうだな、と言ってもそう言う話じゃ無いんだ、まず己が仕出かした事、発言を思い出せ」


「何で、ねえ何でなの? 守長あーゆー話し方が好きなんでしょ? 昨日は喜んでたじゃない、ニコニコしてたでしょ?」


「あー‥‥ そこから間違いだな、まぁ良いだろう、さて‥‥ (むしろ)を取って来るか‥‥」


「ねえ待って守長、ねえ、待ってよ、ねえってば」


お嬢様モドキが何か言ってるが聞こえんな。


さっさと筵を持って来て簀巻きにしなければ。


~~~


「良し終わりっと」


「・・・」


何時も思うがコイツはこの状態になると静かになるな。


しかしアンナの奴め、いちいち灯台まで筵を取りに行かせやがってからに、面倒で仕方ない。


本当にコイツは手間を掛けさせやがる。


「で? 何か言う事は?」


「・・・」


いらん事を言えば更にお仕置きが酷くなるのを分かってるからか無言を貫くか。


しかしコイツは、何故簀巻きにされてるか分かって無いんだろうな。


「お前なアンナ、この村では皆あまりと言うか、全く問題にして居ないが、普通はファーストネームを呼ぶ時は相手に了解を得るのが当たり前の事だし礼儀だ、特に下の奴が上の人間、年下の奴が年上に了解、了承を得ずに呼ぶのはとっても失礼な事だからな」


「でも守長は言ってるじゃない」


「俺は良いんだよ、実際偉い立場だし、それだけの地位もある、それに村の奴等は全く気にして無いだろ? てか家名‥‥ 名字で呼んだら壁があるみたいになるじゃないか」


「なら私も相手が良いって言ったら良いんでしよ? 守長、私も良いよね?」


「駄目に決まってるだろ、お前‥‥ 反省が足りん様だな‥‥」


この辺りは各家庭の教えが影響するからなぁ。


それに村では名前の呼び方に関しても緩い。


仕方ないとは言え、コイツが将来困らん様にしてやらんとな。


~~~


「分かったか?」


「分かった‥‥」


「てかお前、あの喋り方はアホに見えるから止めろ、付け焼き刃でやっても滑稽だし、本当にアホにしか見えないんだからな」


「あの人は良いの?」


「お前なぁ、あの人は本物のお嬢様だぞ、生まれつきあんな言葉遣いだし、ずーっと変わらず同じ喋り方なんだよ」


バハラのポートマン家と言えば名家だし、ポートマン商会も有名だ。


特に有名なのが、アマネを我が家のサリバン商会以外で取り扱ってる事だ。


ウチ‥‥


てか俺は我が家の人間以外ではマデリン嬢以外の奴に一切、直接販売許可も、名前の使用も許可して無いんだ。


基本的にアマネを手に入れようと思ったら、帝都のサリバン商会か、バハラのマデリン嬢の店で買うかしないといけない。


行商人ですらも仕入れは許可制にしてるし、許可も簡単には出さない。


裏技や抜け道もあり、個人客として店舗で買った物を転売と言う方法もあるが、販売価格は高額になる事があるし、偽物を掴まされる可能性も高い。


許可を出した者には多少割り引いて販売して居るので、高額になる事も無く。


更に、帝都やバハラ近郊であれば定価に大銅貨一枚乗っかった価格で販売される事が多い。


それでも多少割り引いて販売しているので、利益は大体であるが大銅貨二~三枚程度になる。


運び賃程度しか利益は出ないが、嵩張る物でも無いし、ちょっと運べば確実に利益が出る為、皆が許可を得ようとしている。


そんなマデリン嬢、そしてポートマン商会のお嬢様だ。


普通に考えて、お嬢様以外の何者でも無い。


とは言うもののアンナはまだ年齢的にその辺りがいまいち分かって無い。


アマネは結婚する時の贈り物位は分かって居ようが、ポートマン商会に関してはいまいち理解して居ないし、分からない様だ。


「ねえ、なら守長の家の人もあんな喋り方なの?」


「ん? ウチはわりかし緩かったな、とは言え姉も妹も上品な喋り方だったし、村で女衆が話してる様な言葉遣いでは無いな、と言っても家族の間では畏まった喋り方や話し方はしなかったがな」


「守長は何で何時も昨日みたいな喋り方じゃ無いの? 昨日は何時もと喋り方違ったよね?」


微妙に分かりづらい問い掛けだな。


てかコイツ、俺が普段は余りお上品じゃ無い喋り方って、遠回しに言ってんのか?


うん、そこまで考えてる訳では無いんだろうな。


単純に疑問に思っての事だろう。


「お前それアレか? 昨日は普段と喋り方が違う、何で普段は昨日みたいな喋り方じゃ無いのかって聞いてるんだよな? 相手によって喋り方を変えるのは当たり前の事だし、あの人には昔からあんな喋り方で話してたからだ、ついでに言うと、俺が村で普段使ってる言葉遣いと喋り方が俺の素だ」


「ねえ、どうしたらあの人みたいな喋り方になるの?」


「さっきも言ったが生まれつきの物だから諦めろ、てか村であんな喋り方してたら浮くから止めとけ」


「でも守長は昨日綺麗な言葉喋れてたよね?」


綺麗な言葉って‥‥


言いたい事は分かるが、普段汚い言葉遣いみたいじゃないかよ。


うん、普段はあまりお上品な言葉遣いじゃ無いもんな、確かに俺の喋り方を知ってる奴からしたら昨日は違和感あったわ。


「アンナ、俺は一応は上流階級の出だからな、それに官吏をしてるんだ、口の聞き方は注意してるし、場所や相手によっては変える事位出来る」


「私も官吏になったら出来る?」


「ああ、なれたらな、大事な事だからもう一回言うがなれたらな」


多分無理だろうがな、下級官吏ですら合格倍率が凄いし高い、それに優秀な奴が目指してるんだ。


狭き門どころかって話だからなぁ。


ましてやアンナはお勉強がいまいちだ。


官吏になるのは現状かなり難しいし、厳しい。


しかし‥‥


「なぁアンナ、俺がやっといて何だが‥‥ お前縛られて簀巻きにされて、吊るされた状態で良く普通に会話出来るな?」


「んー‥‥ 慣れ?」


やな慣れだなぁ‥‥


コイツこの状態で本当、普通に会話出来るよな?


てか余りにも自然過ぎて俺も普通に会話してたわ。


多分アンナ的には、水も飲まされてないし、周りを氷に囲まれてないから余裕だって思ってんだろうなぁ‥‥


それに今周りに誰も居ないし、寧ろ俺と二人っきりで話す事が出来てラッキー位に思ってるんだろう。


一応反省はしてるし、何よりお仕置き効果が薄い。


そろそろ降ろすか‥‥


しかし昨日はあんなにハードだったのに、今日の緩さよ。


とは言え今日みたいな何気無い一日が一番良い。


うん、七歳児を縛って簀巻きにして吊るすのが何気無いと言って良いのかどうかは分からん。


だがまぁこれも日常だ。


穏やかな一日って事にしておこう。



第2章これにて終わりです。


次回から第3章 来訪者達になります

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