表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々
15/214

第15話 対応5


風が切り裂かれる様な音と共に雨音が聞こえている


灯台の中は静寂に包まれ


篝火の中の薪が弾ける音が微かに聞こえた


乾燥がきっちりと出来ていなかったのだろう。


先程の謎の発光の件を山頂灯台に連絡、説明が終わり 二人の間に妙な沈黙が起きていた。



「あー…… 何と言うか」


「まぁ守長、こんな事もあるわな」


男二人顔を見合わせ笑い合った。


何故か妙におかしかったのだ。


「所でじい様、さっき山との連絡が最後辺り

分かりにくかったが霧が出始めたかな?」


「じゃろうな、それだけで無く湿気で(もや)が掛かってるのもあると思うが……」



じい様に篝火の灯りを何時もより輝かせてくれと

頼み村長の家に向かう、

途中で灯台守のじい様の家に寄って行きたいが

一刻も早く村長に伝えて準備をしなければならないから村長に連絡してからになるなぁ。



しかし‥‥


交信の最後の辺りが少し分かりにくかった、

当然だが暗刻連絡器は万能では無い。


自然状況の変化、周辺環境の変化によっては

交信が出来ない場合もある。


それに根本的な問題として距離の問題もある。


篝火では光源の問題で限度があるんだ。


魔道具何て便利で都合の良い物はこの世界には無い。



その為、暗刻連絡器は結構大きい。

俺はこのハルータの灯台は小さいと思うが

この村の村民達からしたら巨大な建築物だ。


その認識のズレの原因として考えられるのは、

バハラの大灯台だと思う。


俺の基準はバハラの大灯台になっている為

だ。


その為この村の灯台が小さく見えてしまう、

それに帝都ではハルータの灯台より大きな建物もそこら中にあるのも原因の一つだ。


そして前世ではさらに大きな建物、それこそ巨大な建築物があった。


それでもバハラの大灯台は巨大と心から思える。


この村の灯台の暗刻連絡器は結構精巧で技術の粋を集めた逸品であり、帝国の科学技術の高さを物語っている。


篝火の所にある連絡窓に操作レバーがあり、

そのレバーを使い、暗刻連絡器のブラインドを開閉させる。


レバーも軽く、操作もスムーズに行える、

帝国は本当に科学技術も含めて発展してるんだ。


その割にガラスの製造技術はあんまり発達していないんだよなぁ‥‥


科学技術も含めて発展の仕方が歪なんだ、

チグハグとでも言うか。


多分魔法が原因だと思ったがそうでも無いみたいだ


多少は影響はあるんだろうけどそれだけでは無い。

元々学者でも何でも無い俺に分かる訳が無い。


山を見ると(かすみ)が掛かってる気がする。


ここいらの海は(きり)が出る事はほぼ無いのだが

山頂灯台の辺りは出る。


今日みたいな天候だと寧ろ強風で見えやすい位だ、

たまにだがあの山は霞む、山頂灯台の兵の中には

見張り専門の技兵がいて、その技兵は特技兵と言われある特別技術を持っている。


まぁ簡単に言うと目が物凄く良い、

視力が凄く良いのだ。


見張りであるのだから遠くまで見えなければ意味が無い。


そして暗刻連絡器でのやり取りでは

見えなければやり取りが出来ず意味が無い。


そして山頂灯台はバハラとハルータの中継所としての重要な役割を担っている、


大灯台の暗刻連絡器も巨大だ。


山頂灯台の暗刻連絡器もバハラ程では無いが

巨大と言って良い位大きい。


だがこのハルータの暗刻連絡器は山頂のより小さい

その為、此方からは山からの連絡は確認出来るが

山側からは普通の人間の視力では見辛い、

そこで特技兵だ。


見張り台の役割も持っている山頂灯台は

監視の為の兵が多い、望遠鏡が無いこの世界は

望遠鏡代わりに視力の良い人間が遠く迄監視する。


なのでこの距離でもやり取りが出来る。


本当に人間の潜在能力と言うのは不思議だ。


まぁとは言え特技兵は数がそんなに居ない、

結構貴重な存在だ。


因みに特技兵はお給料が良い、

それに加えて特別手当ても出る、

その為懐が暖かい奴が多い。


山頂灯台に詰めてる特技兵はバハラの歓楽街ではモテモテだ、何せ気前が良い奴が多い。


まぁあんな山の上の隔離されたような場所で

むさ苦しい男共に囲まれて毎日毎日、監視業務をこなしていればたまの休みくらいはハメをはずしたくなるのも分かる。


それに山頂灯台に居たら金なんて使う機会も無い。


1週間に1回程度来る、行商人からちょっとした物を買うぐらいしか金なんて使わないし貯まる一方だ。


その特技兵が最低でも二隻の灯りが消えたと判断した訳だ、それ以上の船の灯りが消えた可能性もある、嵐によって航行灯が消えただけならまだいい、それなら後で笑い話で済む。


座礁は…… 希望的観測だな、

それなら山頂灯台の特技兵達も分かるはずだ、

特技兵になったばかりのひよっ子ならまだしも

あそこは軍隊生活の長いベテランが多い、

特に夜番はベテランの熟練兵を揃えてる。


中にはひよっ子の新兵もいるが、必ずベテランと組まされて厳しく教え込まれる


山頂灯台で鍛えられた特技兵は帝国各地に赴任する


バハラの山頂灯台は 監視特技兵の、

言わば現場研修の場の役割もあるからだ。


熟練の監視特技兵が見たのならば間違いと言う可能性は非常に低いな‥‥


確信があったからこそ、

こっちに態々連絡してきたんだろうし。


ならば‥‥



何とか1人でも多く助かって欲しいものだ、

なればこそ俺も出来る事をやるだけだ。


しかし突然の嵐だったな、

急速に発達したってとこだろう、

でなければ途中の港に避難してるはずだし

嵐を避ける為に普通は何処かの港に引き返す、

そしてそんな暇も無く嵐が急速に発達して運悪くぶち当たった。


そんな所だろうな。




チッ‥‥

雨が激しくなってきたな、風は少しだけましになったかな?


雨具が非常に鬱陶しい、

とは言えだ着なきゃびしょ濡れになる。

フードの部分に当たる雨が不快な音をしてあまり気分はよろしくない。



村は闇に包まれている、

ランプ無しでは足元も見えない、

しかし俺は手にランプを持っていない手ぶらだ、

だが周りが良く見えている。


村は真っ暗闇だが俺には関係無い、

何故なら生活魔法で明かりを照らしているからだ、

その為俺の周りだけ明るい、

端から見たらさぞ不思議な光景だろうと思う。


いや、気持ち悪い光景かな。

実際ハルータに赴任してきた当初幽霊騒ぎが起きた、原因は言うまでも無い。


山頂灯台に居る特技兵からは小さい光点が移動して見えてんだろうな、怪しさ満開だな、うわ気持ち悪りー とか言われるかもしれん。



雨の中悪態吐きながら歩きやっとこさ村長の家にたどり着いた。

途中何度自転車が欲しいと思った事か。


「村長、俺だ、灯台守のサリバンだ開けてくれ」


ドアをやや強めにノックし大声で呼ぶ、

こんな夜中だ大声で呼ばなければ起きない。


「村長すまんが起きてくれ! 問題が起きた」


時間が時間だから中々出て来ないな、

寝室の窓を叩いてみるか?


そんな事を思い始めた時だった。


「あー 守長どうしたね? 何かあったかい?」


うん、何かあったからこんな夜中に訪ねて来たんだ

と言うか完全に寝ぼけてんな‥‥


「村長 楽しく寝てた所悪いが問題が起きた、

山頂灯台から連絡があって村に要請が入ってな、対応5だ」


「はぁ対応5だって? 大事じゃないか!」


やっと目が覚めたか



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ