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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
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第142話 乗馬服


お茶にお茶菓子良し


室内も綺麗だ、何の問題も無い。


クラインのじい様に確認して、マリラばあさんにも伝わってるのも確認済みだ。


昼はマリラばあさんが作ったキッシュを出せば良い、昼食も手配済みっと‥‥


とうとうこの日が来たな、マデリン嬢が今日ここに来る。


朝まだ夜も明けきらない内にバハラを出発するとの事だ、とは言え実際は日が登り始めてからの出発だろう。


ポートマン商会が所有する高速船で来るから、大体だが二時間半を切る位で到着するだろう。


だが大型船なら逆にもう少し時間が掛かるか?


動き出しに時間が掛かるし、風を掴み損ねたら案外時間が掛かるからな、外洋では速いが近海では案外時間が掛かる事もあるし、いや、そんな事も無いか、何かどうでも良い事を考えてしまう、本当、俺の悪い癖だよ。


「守長、配置の確認に来たんだが、今大丈夫かな?」


「おう、どうした勇者? 何か問題があったか?」


「なぁ守長、その勇者は止めてくれよ‥‥」


「何でだ? 勇者としてお前の名はバハラ近隣に轟いてるだろ? なぁ勇者ブライアン」


「・・・」


うん、ブライアンはこの前の魚市場の青空市の件でその名をバハラ近隣に知らしめた。


だから勇者って二つ名をコイツに贈ってやったんだが、コイツはお気に召さ無いらしい。


てかあんな所でプロポーズして、デカイ声で叫んでたらそら有名になるわ。


あの時は必死だったんだろうが、もう少し考えてやるべきだったな、とは言え今更もう遅いってやつだ。


「で? どうしたブライアン?」


「あっああ、配置の確認と段取りの確認だよ」


「ん、繰り返しになるが本当頼むぞ、誰も入れるなよ、特に俺が名指しで言った奴はマジで入れるな、排除しろ、その為にお前達を雇ったんだからな」


「分かってるよ、銀貨一枚貰える上に酒と穴空きも出るんだ、ちゃんとやる」


「おう、で? 俺が名指しで絶対入れるなって言った奴は誰か覚えてるな?」


「勿論だ、アンナとジルと村長だろ? 覚えてるよ」


「ん、それ以外の奴の扱いは?」


「基本女は灯台に入れるな、例外はマリラばあさんだけ、但しマリラばあさんも入れるのは一回のみ、そんで出入り自由なのは灯台守のじい様だけ、男もよっぽどの理由が無ければ入れるな、それと村長は絶対入れるなだろ?」


「おう、そんで村長がゴネたら?」


「縛って猿轡噛まして転がしておく、責任も守長が取るから遠慮無くやれだろ」


「おう、アンナにもきつく言い聞かせてるが、そんでも入って来ようとしたら命懸けで阻止しろよ」


「わ 分かってるよ、何度も聞いたし、アンナを抑えてケガするより守長のがこえーんだ、ちゃんとやるよ」


「ん、なら良し」


村の若い男衆十二人を雇い警護として灯台に配置する事にした、アンナや変態(ジル)対策だ。


アイツらに邪魔された堪らんからな、マジで洒落にならない。


正直もう少し人手を集めても良かったかなと思わないでもない、しかし余り多すぎると言うのもどうなのかと思いこの人数で抑えた。


門の所に八人、灯台内に三人、ブライアンはソイツらを纏めさせ指揮を執らせる。


門番は決してその場を動かず、陽動等に引っ掛からない様にきつく注意した、そして灯台内を守る奴らは執務室の窓辺の周辺を守らせ、侵入者に備えさせた。


もう既に若い衆は配置に就いており、灯台内も侵入者が居ないかチェック済みだ。


問題児‥‥ 要注意人物三人は村に居るのも確認済みだし、マーラやむっつり娘その二と三にも話を通してあるのでジル対策はバッチリだ。


村長のアホタレに関してはカレンに話を通しており、いらん事をさせない様に話も通して居る。


そして村一番の問題児アンナには俺が直接話をした。


皆に共通して言ったのは、今日の件に関しては冗談とか、何時ものおふざけは一切通用しないし、マジで洒落にならないし、洒落にも冗談にもしないから本気で止めておけと言ってある。


今日来る客は本当に大事な客だから、いらん事をしたら俺は一切の躊躇無しにきっちり報復するからと伝えた。


マーラやむっつり娘その二と三には大銅貨一枚渡してジルの抑えを頼んだし、むっつり娘達は最近完全に俺の味方となって居る為、快く協力してくれてる。


やはりフィグ村の男を優先して世話すると言うのが効いてる様だ。


リドリー始め、フィグ村の若い男衆が最近灯台に来て居るのをアイツらも知っており、それが俺の話に信憑性をもたらして居るみたいである。


アンナに関しては、いらん事したら漏らすまで吊るすと真顔で言っておいた。


この件に関しては洒落も冗談も一切通じないし本気だと伝え、きっちりと言い聞かせた。


カレンにもその辺りはくどい位に伝えたから、アホタレ村長をきっちり抑えてくれるだろう。


てか抑えなかったらもう知らん。


マジで村長を交替させる。


今日は本当におふざけ無しだ、今日はマジで笑えないからな。


「守長、客はそろそろだろ? 俺と門番の内三人は付き添いだよな?」


「ああ、野次馬を蹴散らせ、それと門番は絶対誰も入れさせるなよ」


「分かってるよ、皆に言い聞かせてるし、守長がマジだってのも皆に言ってあるから」


「おう、今日はおふざけは無しだ、今日いらん事しやがった奴は本気で潰す」


「守長、目が‥‥」


「目がどうしたブライアン?」


「いや、何でも無い」


馬鹿め今日はマジもマジだ、後でもう一度コイツも含めて言い聞かせておかねばならないな。


「なぁ、客は船で来るんだよな? 船着き場に停まるかまだ分かんないんだよな?」


「ん? ああ、船着き場の使用許可が出るか際どいみたいだ、だから船着き場が使えない場合は浜側に停める、そうなりゃかなり目立つからな、と言ってもバハラの商会が所有する船だ、外海も航行する様な船だからどっち道 目立つ、絶対野次馬がワラワラと来やがるから、お前達にガードと野次馬を散らすのをやって欲しいんだ」


「分かってるよ、てかそろそろ来るんだよな? 」


「海を見張らせてる奴からそれらしい船が来たら知らせる様に言ってるからお前達はこのまま警備をしといてくれたら良い」


「分かった任せてくれ、来たら俺達も付いて行く」


「おう、くどい様だがそれまで誰も入れるな、俺が許可した奴以外はな、本当頼むぞ」


「分かってるよ、じゃあ一旦俺は戻るよ」


さて、いよいよか‥‥


直接会うのは四年ぶりだな、背も伸びて居るだろう、何か緊張するな‥‥ 俺らしくも無い。


十七歳なら前世で言う高二か、女子高生なら前世で天音と散々絡んだんだ、緊張する程では無い。


奴とマデリン嬢は違う、だがあの年代とはこの世界でも関わりはある、そうだ同じ人間では無いが人間相手だ落ち着け。


とは言え奴とマデリン嬢は違う、間違っても奴と同じ様な接し方はしてはならない。


天音は黒ギャルだがマデリン嬢はレディだ、同じ様な接し方をしたりしたら色々不味いからな。


しかし俺はこんな時にもどうでも良い事を考える、自分でも悪い癖だと思うが治らんなぁ‥‥


「守長、それらしい船が来た」


「おう、分かった行くわ」


とうとうか‥‥


気合いを入れないと、ちゃんとマデリン嬢の気持ちに答えた上で俺の気持ちも伝える。


例えそれが残酷な事に、結果になったとしてもだ。


~~~


門の所でブライアン達四人と合流し船着き場側に向かうと、船が見えた。


だが船は船着き場で無く沖側を進んでいた。


やはり使用許可が出なかったか‥‥


バハラはどんだけ混乱してんだよ、あれから結構な時間が経ってるのに‥‥


まぁ良い、今はそんな事はどうでも良い。


途中ですれ違った村民が俺の格好を見て声を掛けて来た、「何でその格好何だ」と。


なので「客人が来る」と短く答えておいた。


今俺は作業服では無く、正式な官吏服を着て居る。


髪も撫で付けて居るし、香水も軽く振っており、この前の対応5の時の格好だ。


帝城であるならば今の姿は正装と言われるだろう。


こちらに向かって来ている船を見た、船は高速船か、わざわざここに来る為にアレを出すとは流石ポートマン商会だ、当たり前だがマデリン嬢が大事なんだろう。


しかし暇人が多い、大型船がこんな所まで入り込んでるのが珍しいとは言えコイツら邪魔だな。


遠目にアンナが見えた、何時もなら俺に寄って来るんだが今日は寄って来ない。


釘を刺しといて正解だった、ジルは居ないがアイツはむっつり娘達が今頃足止めしてるはずだ、その為にアイツらには話を通しておいたし、足止め用に菓子と茶を渡したから今頃は優雅にテイタイムモドキでもしてるのだろうな。


「守長デカイなあの船」


「そうか? やや小さい位だと思うぞ」


おかしな話だが大型船とは言えあの高速船はややサイズが小さい、積載量より速さをより重視した船だ、貴重な商品を運ぶ為の船だからな、とは言えポートマン商会が所有する高速船の中でも一番小さな船だ。


商品では無く人を、マデリン嬢を送る足としては確かにこれでも大きい。


前に食用油を運んで来た船は近海用の小さな船だったからな、そう考えれば確かに大きく感じるのも間違いではない。


船は碇を降ろし、現在船上では船員が忙しそうに動き回って居る。


上陸用の小舟を船から降ろしながら、船から小舟に乗り移る為の縄梯子も降ろして居るが船員達の動きが良い、キビキビと無駄の無い動きだ。


下船準備が終わると船内から乗馬服を着た者が出てきた。


周りに居る船員が頭を下げて居る、マデリン嬢だな、側にはガタイの良い中年女も居る、あれはジョディか、老けたな‥‥


四十にもなればそりゃそうか、しかしアイツも護衛として長いな、ある意味乳母みたいなもんだからな。


護衛兼乳母、ジョディは鋭い目付きで周りを警戒して居る、それも変わらずだ、本当真面目だよアイツは。


俺の目が良いと言うのもあるが遠目からでもジョディが警戒して居るのが分かる。


相変わらずだな懐かしさすらあるよ、しかし四年で大分老けたな、丁度老ける速度が急激に早くなる年代だもんな、本人も気にしてるだろう。


縄梯子から上陸用の小舟に船員が四人乗り込み、続いてマデリン嬢とジョディが一緒に降り始めた。


マデリン嬢もジョディも危なげ無く降りて行ってる、うん、ドレスでは無く乗馬服なのはこの為だな。


ドレスなら下から下着が見えるし、風等でスカートが捲れ上がる、それに縄梯子から降り難い。


小舟に乗り込んだマデリン嬢が近付いて来たが、どうやら俺に気が付いたみたいだ、微笑み俺を見て頭を下げた。


いよいよか‥‥


近付くマデリン嬢の微笑みが深くなって、笑みに変わったのは気のせいでは無いな、実際嬉しいんだろう。


マデリン嬢は俺から目を逸らさず笑みを(たた)えたままだ、俺も目を逸らさず見詰める。


まるで世界に俺とマデリン嬢の二人しか居ないのではと、一瞬錯覚した。


それはマデリン嬢が浜に上がる迄続く、小舟に乗った船員が降りる為の足場代わりの箱の様な階段状の物を置き、そしてジョディが先に降りマデリン嬢の手を取り降りる迄続いた。


足元を見る為に目を逸らした時少しホッとしてしまった。


俺は何を気圧されてる、しっかりしろ!


官吏になり修羅場は何度も潜った、この程度で動揺する等、俺はどうやらこの村に来てから腑抜けたらしい。


分からぬ様に深呼吸し心を落ち着かせた。


「マデリン嬢、お久しぶりです、ようこそいらっしゃいました」


「お久しぶりですネイサン様、お逢いしとうございました、やっと楽園へと参る事が出来ましたわ」


マデリン嬢の想いが声に形を変えて伝わって来た


声にその想いが乗って‥‥


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