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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々
14/214

第14話 暗刻連絡器


雨音が室内に迄聞こえている


風が切り裂くような音を響かせている



ドアを開けるとアイザックのじい様が

申し訳無そうな顔で居た。


「守長すまんなぁ」


「いや良いんだ何があった?」


どうした? 何て下らない事は聞かない。


何かあったから起こしたんだろうしな。


「山の灯台から連絡が来てな、至急連絡をと」


山頂灯台からか、と言う事は俺待ちか。


「分かった着替えて直ぐに行く」


さっと着替えてじい様と上に上がる。


「じい様びしょ濡れだな」


「ああ、雨風が酷くてなぁ

窓天幕が何度もよじれてズレよるんだ」


ああ、そんで直してる時に濡れたか、

とは言え雨具を身につけているから

身体は濡れてないはずだ。


クリーンを掛けてもいいが綺麗になりすぎて

防水加工が剥がれ落ちたら大変だからな


寝起きで頭がイマイチ回らんから

失敗するかもしれない、ヤメとこう。



山の灯台、陸軍の山頂灯台からの連絡だ。


山頂灯台は見張り所の役割も担っており

そしてこのハルータ村の灯台とバハラの大灯台との連絡所の役割も担っている。



ついでに言うと

ハルータ=山頂灯台=バハラの大灯台間の連絡中継所でもある。


夜間の連絡方法は発光信号が主な連絡方法だ。


昼間だと狼煙もあるが極々簡単な事しか伝えられない。


例えばだが敵襲の合図等がそうだ。


とは言え敵襲等、最後に行われた事すら

もう何時か分からない位に昔の話である。


敵襲は他国からの攻撃だけでは無い。

海賊船の襲撃等も含まれる。

とは言えそれらは遥か昔の話でしか無い。

と言う訳で敵襲と言う可能性はまず無い。


そして山からの連絡がこの時間に来たと言う事と、

海の荒れ具合から考えたらまぁ普通に考えて

船舶事故か海難事故かのどちらかだと思う。


篝火の所まで上がり山灯台を見ると

[至急連絡を]と繰り返している。

バハラ側への連絡口も微かに光り点滅している。


夜番の灯台守は

山頂灯台を定期的に確認しなければならない。

緊急連絡の確認の為だ。


「守長、バハラからの連絡かいの?」


「山頂灯台からバハラ側に同時に連絡してるか

ら違うな」


「と言う事は‥‥」


「連絡してみる迄分からんさ」


まぁとは言えじい様の想像してる事が起きたと思って間違い無い。


山頂灯台側の連絡口の回光通信機‥‥

これは俺が勝手に言っているだけで

正式名称は暗刻連絡器と言うのが

コレの正式名称なんだよな‥‥


原理はどっちも同じなんだ、光源が違うだけで


レバーを操作してブラインドを開閉させて

光りを点滅させて、符号を送りあって通信‥‥

連絡を取り合う。


昔は闘牛士宜しく、

暗幕を自らの手で操作して符号を送りあっていた。


暗刻器が壊れた時の為に今でも灯台守は

自らの手で連絡が取り合えるように皆出来る。


バハラの大灯台の場合は最低9人で行われる、

これは連携が肝で端から見てると面白い。

集団芸? いや、前世のとある大学が行っていた集団行動に通じる物がある、正に芸術的な動きだ。


暗刻連絡器を操作して連絡を送る。


灯台守のじい様達も勿論出来る、だが権限が無い。


もしもの時はやるがそれは非常事態の時だ。


ハルータの灯台守長たる俺に何かあって

操作出来ない状況の時のみだ。


さてと‥‥

《ワレ ハルータ トウダイチョウ ネイサン

サリバン ナリ レンラク シタシ ✕ 》


《◯ オキアイ オオシケ コウコウセンパク

チンボツ ノ カノウセイダイナリ

アカリキユ クリカエス アカリキユ ✕ 》


《◯ リョウカイ ヨウ キュウジヨ アリヤ?

ナシヤ? ✕ 》


《◯ ヨウキュウジヨ ホッス ヨウキュウジヨ

ホッス タイオウ ゴ クリカエス タイオウ ゴ

ゲンザイ カクニン アカリ ニ キユ

タイオウ ゴ タイオウ ゴ ✕ 》


《◯ タイオウ ゴ リョウカイ クリカエス

タイオウ ゴ リョウカイ ✕ 》


《◯ リョウカイ カンシャス ✕✕✕ 》


「守長やっぱりそうかね?」


「残念ながらそうだな、最低2隻沈んだ可能性大だな」


俺の言葉にじい様がため息を吐く 、


「ちゅー事は‥‥」


「ああ、もっと沈んでる可能性が高いな」



「・・・」

「・・・」


二人で暫く見つめあった。


「しかも対応5だ」


「相当に酷いと判断したんかな?」


じい様の言葉に頷く。


灯り消ゆ

つまり山頂の見張りが、航行中の船の灯りが、

航行灯が消えたと判断したと言う事だ。


勿論酷い雨風で灯りが消えた可能性もある、

しかし‥‥


対応5は村全体で対応しろと言っている。


対応には1~5迄あり、

それぞれが対応レベルを表している。


1 ならば

通常の状態


2 であるならば

もしかして誰か船から落ちたかも知れないから

注意しといてね、だ、

まぁ注意勧告だな


3 なら

誰か船から落ちたから助けてあげてもしくは、

船が座礁しちゃったみたい、助けてあげて、

救助要請である


4 だと

船沈んじゃったよ、出れる船全部で助けてあげて、

それと村の奥さん達も助けた人に温かいもん

食べさせてあげて

救助要請 強だ


5

やっべー マジやべーわ マジでマジで

何か何隻も沈んだわ マジありえねーわ

ちょっ、マジヤバくね?

村全体で助けてあげて、キッズ達も

じいちゃん ばあちゃんも 動ける奴とりあ

全員で全力で助けてあげてね、だ

救助要請極大になる


うん、アホ丸出しの考え方だな、

夜中で寝起きに睡眠不足で テンションがおかしくなってる、気を付けよう。


しかしこの大時化で果たして‥‥


いかんな、やれる事を全力でやる。

1人でも多く助ける、ただそれだけだ。


その前に‥‥


「じい様こんな状況だ、部屋の反射板と鏡に

清浄魔法掛けるぞ」


「ああ、分かっとるよ」


普段なら清掃はじい様達の仕事で、俺はクリーンを掛けれない、しかしこんな状況だ。


少しでも明るく照らさねば。


反射板と鏡に意識して強めにクリーンを掛ける。

窓天幕に気を付けてと、

うんピカピカになった、これで光りも増すだろう。


山頂灯台もこちらが少しは見やすくなったはずだ。


後はもう一つ、

少しでも遭難者の生存確率が高まるように。


「じい様ちょっとの間、目をつぶって手で目を隠してくれ」


「分かった」


うん、俺が何するか分かったみたいだ、



窓際に行き窓天幕をくぐり海を見渡す、

窓天幕の揺れが凄い。


さてと、思いっきり力を込めて、

魔力を解放するイメージで明かりを、

前世のサーチライトのイメージで照明を、

南方諸島に迄 届かすイメージで、

サーチライトであり、拡散させるイメージで、

この世の全てを照らすように。


左手でハンカチを持ち、一回分開き目に当てて、

目をつぶって、左手でやや強めに押さえて。


いけ!


おそらく端から見れば俺は身体全体から光り輝き、

直接見れば目が潰れる程光り輝いている事だろう。


サーチライトのイメージで右手を海に向けて、

左右にゆっくり振り三分位は照らし続けた。

バハラの大灯台に居た時にコレをやって

大事になった事があった。


あん時はえらい怒られたもんだ。


さてと、


「じい様、終わったぞ」


「目閉じて手で押さえてても光が見えたぞ」


「うん、まぁ結構魔力込めたから」


「本当にえげっないなぁ‥‥」


まぁ、これで遭難者の助かる確率が上がるならと思ってやったからな。


おっとっと。


「じい様、村長のトコに行ってくる、

救助要請の事伝え無きゃあいけないから」


ん? じい様聞いてないな。


「じい様、俺は村長んトコ行ってくるから

救助要請の事伝えに行くからな」


「ああ、聞いとるよただ‥‥」


じい様が山頂灯台の方を指差している。

んー? どうした?


あっ!


山頂灯台から今の光は何事だと、至急連絡をって


そりゃそうだよな、あんな光り輝いて訳の分からん光が思いっきり海を照らしていたんだ、

そりゃそうなるか。




早く説明を終わらせて村長に救助要請の件を伝えにいかないといかん。


先に伝えておけば良かったな‥‥



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