第137話 自首
何時もお読み頂きありがとうございます。
今日、ワクチンを打ちに行きますので、明後日以降の更新が出来るかまだ今の所分かりません。
明日分はほぼ書けてるので大丈夫と思います。
ですので明後日もし更新されて無かったら、あっ!
奴め書けない状態かと思って頂ければと‥‥
「‥‥ フッ」
もう笑っちゃうわ、又か‥‥
「ウニャニャニャニャ」
「ハンナ、猛るな落ち着け」
朝起き抜けに、灯台の敷地内に置いた捕獲箱に一羽掛かっていた、まぁ当然と言うべきかメスだった。
呪われて居るとしか思えない、てかハンナが捕獲器に入った渡りバトに大興奮して居る。
逃がすにしてもハンナを抑えなければいけない。
「ニャニャニャ」
「ニャニャニャじゃねーよ、マジで落ち着け、てかメスだから逃がさないといけないんだ、暴れるな」
朝イチ捕獲器を見に来たらこの有り様である。
ハンナの奴は捕獲器にじゃれつく様にまとわり付き、渡りバトを仕留め様として居た。
完全に獲物として狙って居る、ハンナの野生の、猫としての本能が目覚めたらしい。
「お前なぁ、捕獲器の中に入ってるんだから無理だよ」
「ニャ~~ア」
「駄目です、逃がさないといけないんだ諦めろ、可愛くおねだりしても駄目だ」
「ウニャ~」
どうやらハンナはお気に召さないらしい、
だがメスは逃がさないといけないから、
どれだけおねだりされても駄目な物は駄目だ。
てかこの渡りバトも捕獲器の中に入っていたエサを、全部かっ喰らってやがる‥‥
マジでふてぶてしいな‥‥
まぁハンナに獲物として狙われているのが分かっているのか、さっき迄かなり捕獲器の中で暴れて居た。
今は俺がハンナを抱っこしてるので落ち着きを取り戻し、捕獲器の中に少しだけ散らばっていたエサを啄んで居やがる。
「おいさっさと出て行け、ホレ、丁度幾つか群れが飛んでってるから合流しろ」
俺が捕獲器の入口を開けると、一瞬振り向いたが散らばった残りのエサを食い始めた。
コイツ‥‥ 欠片も残さず食うつもりか?
「ニャ~ア」
今なら簡単に捕まえられるけど?
ハンナがそう言ってる気がした。
「言うなハンナ、てか早く出て行け、じゃないとハンナを離すぞ、いいのか?」
うん、欠片一つ残さず食うつもりらしい、てか俺はコイツが食い終わるのを待たないといけないのか?
何様か知らないが、お偉い渡りバトは欠片一つ残さず食うと、やっと出て行った。
「ニャ~‥‥」
ハンナの名残惜しそうな鳴き声と、渡りバトを誘き寄せる為のエサが空っぽになった捕獲器だけがその場に残された‥‥
「・・・」
村に行ってみよう、他の奴等の状況を見て確認して見るか、その前に浜に寄ってあの変態が浜に居るか確認してから行かねば。
浜に奴が居るのを確認し、村の安全が確定した俺は散歩気分で向かって居た。
てかこんな朝っぱらから渡りバトが西に向かい飛んで行ってる、群れも数百程度のが幾つかと、千を越える群れが一つ飛んで行ってる。
あの渡りバト達は南方諸島に行くんだろうか?
それとも魔族の国に行くのかな?
途中にある島や小島で少し翼を休める群れもあるんだろうな。
この光景を見ると季節は完全に秋になったと実感する。
そしてコイツらが春になると帰って来る、秋は東から告げられ、春は西から告げられるか‥‥
この世界ならではの表現だな、いや、この地域と言うべきか? 帝都ではその様な表現はしない、地域によって季節の変化の表現は違うもんな。
村に到着すると賑やかな声が辺りから聞こえて来た、朝もはよから皆元気、うん、老いも若きも皆既に起きてとっくに活動して居る。
この世界の人間は皆早起きだ、まぁ電気も無ければ娯楽も無いからそりゃそうなるのも当然だ。
「守長おはよう、どうしたんだこんな時間に?」
「おはようさんじい様、散歩がてら村じゃどの位渡りバトが獲れてるのか見に来たんだ」
「あー なるほど、今年は群れがちと小さいがどの家も結構獲れとるな」
「そうなのか? で、じい様ん家はどの位獲れた?」
「家は昨日が二匹だったが、今朝見たら捕獲器に七匹入っとったな、でもその内四匹はメスじゃったから逃がしたけどな」
「えっ? そんなにか? てか夜の内に七羽もか?」
「ああそうじゃな、まさか夜の内にそんなに入っとるとは思わんかったから儲けた気分じゃわい」
「・・・」
マジかよ? てかそんなに獲れたのか? 俺は一羽だけだったんだぞ、しかもメスだったし‥‥
アレクサンドルのじい様はとても嬉しそうだ、まぁ夜の内にそんなに獲れたのなら当然だな、てか儲けた気分ってより棚からぼた餅ってとこかな?
アレクサンドルのじい様と別れ、歩いて居るとアンナに声を掛けられた。
「守長おっはよー、こんな時間にどうしたの?」
「ああ、村はどんなもんかと思ってな、アンナの家の捕獲器はどうだ? 獲れたか?」
「うん、夜の内にね、二匹入ってたよ」
「もしかして二羽ともオスか?」
「うん、そうなんだ、守長はどうだったの?」
「一羽入ってたな、メスが‥‥」
「・・・」
珍しくアンナが困ってやがる、てかコイツは昨日の事を知ってるし、どう答えて良いのか分からんってとこか?
「なぁもしかして村では結構獲れてたりするのか?」
「そ そうだね、でもメスも結構獲れたから逃がしてたよ、オスは‥‥ まぁまぁかな‥‥」
コイツ気ぃ使ってやがる‥‥
てか確かにアンナが言う様に村では結構獲れたみたいだ、村の中に置いてある捕獲器の中ですら渡りバトが入っている。
えっ、マジで何でなんだ?
村と灯台で極端に距離がある訳じゃ無いんだぞ、
灯台の敷地内には捕獲器が四十位あったのに、一羽だけって‥‥
しかもメスだし、てか今の所メスしか獲れてないんだが?
マジで呪われてんのか?
「その‥‥ そんな時もあるよ守長、わ 私今から朝ご飯だから帰るね、じ じゃあ又ね」
「・・・」
アンナの奴、逃げやがったな‥‥
何なんだかなぁ‥‥
しかし村の中は何時もより気持ち活気がある様な気がする、まぁ理由は渡りバトだろう。
どの家も夜の内に獲れてたからか、皆の顔に笑顔があるのは気のせいでは無いだろう。
まぁ臨時ボーナスみたいなもんだからな、そりゃ嬉しいに決まっている。
「守長こんな朝からどうしたの?」
「アマンダか、おはよ」
「うん、おはよう守長、何かあったの?」
「いや、村では渡りバトがどの位獲れてるのか見に来たんだ」
「あー そうなんだ、皆ね、夜の間に結構獲れてるみたいよ、こんなの珍しいわね~ 私もね、結構獲れたのよ」
うん、アマンダのニコニコとした顔を見たら分かる、もしかしてかなり獲れたのかな?
「アマンダはどの位獲れたんだ?」
「私はね、九匹も獲れたの、でもその内三匹はメスだったけど、昨日は二匹獲れたし、初めてよこんなに獲れたのは」
「アマンダは捕獲器をどれ位置いたんだ?」
「私? 私は今年は二十ね、少し増やしたの」
二十の内、九か? 無茶苦茶効率良いじゃないかよ!
マジかよ‥‥
「スゲーな、そんなにか? てか結構良い臨時収入になるな」
「そうなの、今日ね、バハラの青空市に行って売るつもりよ、イカの完干しと一夜干し、それに魚の干物も丁度売りに行こうと思ってたから、ついでに渡りバトも売ってくるわ、まだはしりの時期だから普段より大銅貨一枚分高く売れるから‥‥ 太らせてから売ろうかとも思ったけど、この分なら今年は結構獲れそうな気もするし、全部売ってくるわ、どうせ直ぐに全部売れるしね」
あー 確かに出たて、はしりの時期だからな、大銅貨一枚分は高く売れるか、それも後二、三日だけだ。
そして太らせてから売るのも有効的な手だ、エサ代が掛かるが掛けたエサ代、それ以上の金額で売る事が出来る。
まぁ時期を見誤ってしまって売る事が出来なくなる事もあるから注意が必要だ。
売る事が出来る時期が決まってるのは密猟対策でもある。
資源保護とは少し違うのだが、それらの事が結果的にではあるが、渡りバトの保護に繋がっている。
やっぱ転生者の影があるよなぁ‥‥
「なぁアマンダ、何で村ではこんなに獲れてるんだ? 灯台に捕獲器を四十も置いたのにメスが一羽しか獲れて無いんだけど? てか俺、まだメスしか獲れて無いんだ」
「んー‥‥ 運もあると思うんだけど‥‥ ねえ守長、猫飼ってたわよね? ホラ、三毛猫飼ってるでしよ、確かハンナって名前の?」
「うん、飼ってるな、でもそれを言い始めたら村には猫が無茶苦茶居るじゃないか」
「うん、だからね、この時期は猫に魚を食べきれない位あげてるの、浜に行ったら普段はあげない様な魚まであげてると思うわよ」
「えっ‥‥ 初めて聞いたんだが?」
「あー やっぱりかぁ‥‥ だって当たり前の事だから、いちいち言わなくても皆分かってるもの、確かにそれなら‥‥ 猫もお腹一杯になったら動きが鈍くなるでしょ? それに満腹なら獲物を追い掛けたりしないし、後はそうね‥‥ 夜に抜け出して捕獲器、うううん、渡りバトを追い掛け回してるかも知れないわね」
「あっ‥‥ そんで捕獲器に掛からず、てかハンナから渡りバトが逃げ回ってそれでか?」
「可能性があるわね‥‥」
そう言えばハンナの奴、捕獲器に掛かった渡りバトに大興奮してたな?
ハンナは夜も好きに出入り出来る様にしてるし、
まさか‥‥
いや、ありうるな‥‥
「アマンダ、ちょっと灯台に帰るわ、ありがとな教えてくれて」
「うん、どういたしまして」
アマンダと別れ、灯台に帰る時ふと思った。
ハンナには普通にしか飯を食わせてない、てか多くも少なくも無い量だ、普段なら全く問題無い。
しかし、アマンダの話しではこの辺りの猫は満腹になる以上に与えて居ると‥‥
そして夜、ハンナは寝たり起きたり、遊んだり好きに行動して居る。
正に自由な奴だ、そしてハンナは出入り自由‥‥
更に、さっき捕獲器に掛かった渡りバトに大興奮して居た‥‥
と言う事は‥‥
点と線が繋がった、ハンナが、奴が犯人か‥‥
灯台に帰ると捕獲器に一羽入って居た。
しかし良く見ると渡りバトでは無い。
猫‥‥ ハンナが捕獲器に何故か入って居た。
「お前何で捕獲器の中に入ってんだよ?」
「ニャ」
「ニャじゃねーよ、軽返事したら良いって思ってるだろ? てかお前まさか渡りバトを誘き寄せる為のエサを‥‥」
「ニャ~ン」
「コ コイツ‥‥ 可愛く言っても駄目だ、てかお前罪を認めて自ら中に入ったのか? 自首か? なぁ、自首か?」
「ニャー‥‥」
とりあえずハンナにたらふく飯を食わせようと思った。
そして暫くは、夜の間は外に出さない様にしようとそう思った。
捕獲器に捕まった猫って、世界が変わっても一緒なんだな。
ハンナが何だか情け無さそうに鳴いてる姿を見てそう思った‥‥
「ニャ~‥‥」