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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
135/214

第135話 青空市場の勇者の蛮勇はバハラに轟く


コーヒーが美味い、午後のこの一時は最高だな。


日が落ちる迄もう暫くある。


優雅なお茶の時間だ、俺にとって貴重でささやかな幸せの時間、本当この素晴らしい時間を邪魔する奴はモヒカン頭の刑に処さなければならない。


朝方ブライアンがバハラの魚市場に行った。


奴にとっては人生における忘れられない日になるだろう、成功しても失敗してもだ。


まぁ話を聞いた限りでは成功する可能性が高い。


よっぽどおかしな真似さえしなければ、誠実に想いを伝えれば吉報を持って帰って来ると思う。


帰りはそろそろの筈だ、帰りは暗くなる少し前かな? 日が落ちきる前には帰って来るだろうし、遅れても日が落ちてから少し立ってから位だ。


帰りはやや沖側に出て、万が一遅れて日が落ちてしまっても、この灯台の灯りを目印に帰って来る。


そう言やもし突然海が荒れて帰れなくなったら、バハラの魚市場の中に雑魚寝出来る簡易宿泊所があるって話だが、海の荒れが数日になった場合はどうすんだろう?


まぁそうなったら簡易宿泊所で待たなきゃならないよな、天候の読みが大切だって漁師達は言ってるが単純に漁に影響するだけで無く、バハラへの行き来に影響するってものあるんだろうな。


トンネルでも出来ればもっと気軽に行き来出来るんだがなぁ、遥か未来には出来るかも知れない、もしトンネルが出来ればハルータ村から少し離れた東辺りに出来るかな?


そうなればこの村もかなり発展するだろう。


うん、フィグ村やその周辺も発展するだろうし、この辺り一帯はベッドタウンになるかも知れない。


どの位先の未来だろうな? バハラから北側はまぁまぁ発展してるし、町や村も多いが南側はあの山々に遮られてるからかイマイチ発展して無い、牧歌的と言えば聞こえは良いが一言で言えばただの田舎だ、まぁ俺は好きだがな、この村も周辺も結構居心地が良い。


完全にここの生活に慣れてしまったな、これ帝都に帰ったら逆に戸惑いそうだ、まぁとは言え帝都にはおそらく帰る事は無いな、官吏を辞めなければ帝都には二度と足を踏み入れる事は無いだろう。


移動が無かったら後数年この村で過ごして、それから考えよう、官吏を辞めて帝都に帰るか、それとも地方回りで一生終えるか、可能性は低いがこの村に骨を埋めるか。


まぁ数年はこの暮らしだな、淡々と時間が流れて行き、刺激もなければ、只々時が流れて行くだけの生活か‥‥


正に灯台守の暮らしだ、前世で読んだ小説にあった様な人生だよ、それも悪くは無いって最近思い始めてる。


人生何て淡々と、特に何かが起きる事も無く、時折小さな変化が起きて、そして老いて行くってのが普通だからな。


まぁ人生の小さな変化が今日のブライアンだ。


生涯を共にするパートナーを得るか、得ないのか、結婚は人生の大きな転機なんて言っても所詮は人の一生からしたら小さな変化でしかない。


何故なら生ある限り人生は続いて行くんだから、劇的な恋であってもその後は淡々とした暮らしが待って居るんだ、その淡々とした暮らしを守る為に人は一生懸命働き、そして生きて行くんだから。


まぁ新しい家族が出来れば、小さな変化でも刺激になるし、日々の中でも笑い、怒り、悲しみ、喜びとかがあるからな。


淡々と時間が流れ、暮らして行くのも悪くは無い、寧ろそんな生活が幸せだったりするからなぁ‥‥


まぁ前世ではそれが出来なかった俺からしたら、十分幸せだし、良い人生だと思うよ。


「守長」


「おおブライアンか、で? どうだった?」


「ああ‥‥ 成功したよ、来年‥‥ 春に結婚する事になった」


「マジか、良かったじゃないか、てかお前いきなり結婚かよ? 暫く付き合ってとかじゃ無くもう結婚まで決まったのか?」


「ああ、了解を貰った」


「で? お前なんて言ったんだ? セレサはどう了解したんだ? おい、俺に教えろ、てか聞かせろ」


「うん、そのな‥‥‥‥‥‥」


ブライアンの話によると、魚市場で魚を降ろし、緊張しつつ青空市場へと向かったそうだ。


そして何時もの場所に行くと隣が何時もの様にセレサ一家だった。


店を広げ少し雑談したり、客に売ったりして居たらしいがこのままでは言うタイミングを逃しそうだと思ったらしい。


うん、正しい判断だな、多分そのままだったらタイミングを逃していただろう。


特にコイツは変にタイミングを図って何て事してたら絶対、今日は言えずに帰って来ただろうな。


で、ブライアンは丁度客も居らず、お互い一瞬沈黙した時に言ったらしい。


『セレサ好きだ、俺はお前が好きだ! 俺と一緒になってくれ、俺はセレサと一生一緒に居たい、誰にもお前を渡したくは無い! お お お 俺の嫁になってくれ、お互いじいさん ばあさんになるまで 居て 居て てくれ』と‥‥



うん、コイツ大事なとこで思いっきり噛みやがったみたいだ、やると思ったがマジでやりやがった、お笑い芸人のお約束じゃ無いんだぞ、何か締まらないなぁ‥‥


まぁ勇気を出して言っただけエライな、しかしコイツ青空市の中で絶叫に近い位の声量で言ったんだよな? そう思い聞いたら。


「ん? あー‥‥ そうだな、でもあそこで、あの場所じゃ無きゃ言えないだろ?」


「いやお前、声量の問題だよ、そんなデカイ声で言ったら目立つだろうが、てかお前勇者かよ、そんなデカイ声で結婚申し込む何てマジでお前凄いな、ある意味尊敬するわ、お前絶対青空市で伝説作ったぞ、てか絶対青空市で語り継がれるわ、本当スゲーなお前‥‥」


「あー そう言えば皆に見られてたな」


「いや見るだろ普通は、てかデカイ声で叫んでる奴が居たら普通は無意識に見るし、ましてや結婚申し込む奴が居たら普通は見るだろ? 無茶苦茶目立っただろうに‥‥ セレサはそんな状況で良く了解したな? 只でさえ告白されて恥ずかしかっただろうに、んーなデカイ声で周りに見られて‥‥ お前、勇気と蛮勇は違うからな、そう言う意味でも勇者だなお前、しかも噛みまくってお前‥‥」


「仕方無いだろ、気付いたらデカイ声で言っちまってたんだ、噛んだのは‥‥ 緊張?」


いや知らねーよ、緊張? じゃねーよ、コイツそこまで考えられ無かったんだろうな‥‥


気が付いたらデカイ声で言ってたってとこか?


しかし‥‥


「お前、ハルータ村の奴も青空市場には居たんだろ? お前が結婚決まったって村の皆にバレてんじゃないのか?」


「そうなんだ、近くにも村の奴が居たから帰りにおめでとうって言われたよ、今頃は村で噂になってるんじゃないかな?」


「・・・」


まぁなってるだろうな、田舎あるあるだ、ましてやそんな面白い話が広がらない訳が無い。


明日どころかもう既に村中に広がってるだろうな、そしてセレサの居るガルム村でも広がってるだろう、五百円賭けても良い、間違いなく広まって居る、コイツが噛んだ事も含めてな。


「しかしセレサはすんなり了解したのか?」


「いや、守長が前に言った通りアタシ何てとか色々言ってた、だけど守長に前以て言われてたからちゃんと否定してセレサの事を褒めた」


「おう、やっぱりか、てか俺のアドバイスは無駄にはならなかったんだな、てかお前その時も噛んだりしてないだろうな?」


「いや、噛んだよ、てかつっかえながら言ったと思う、何か頭が途中で真っ白になったりしたんだ」


噛んだよじゃねーよ、お互い一生一回の、一世一代の事なのに‥‥ まぁコイツらしいと言えばらしいか。


案外それが良かったのかも知れないな、コイツのセレサに対する想いが、誠実さが伝わったんだろう。


まぁ、ブライアンの名も下手すりゃバハラ中に伝わってる、いや、広まってるだろうがな。


うん、買い物に来た奥様連中が井戸端会議で絶対議題に挙げるだろう、間違いなく話題にするな、勇者ブライアンの名がバハラ中に轟く訳か‥‥


バハラだけで無く、その近郊にも轟くだろう。


暫くコイツは噂になるな、まぁ、めでたい事で名が知られるんだ、悪い事では無いさ。


「てかお前春に結婚って言ってたが少し間があるな?」


「あー それなぁ、家建てようかと思ってんだ、それに冬だと海が荒れる事もあるからそれで春にって思って」


「そっか冬だと海が荒れる問題があるか、しかしお前家建てるのか?」


「うん、家もボロくなって来たし、結婚するんなら折角だからって親父がな、てか前以て言えって親父に言われてたよ、久々に怒られちまったわ」


「ん? お前まさか言って無かったのか?」


「そうなんだ、言って無かったんだよ、だから俺が結婚申し込んだ時、親父の奴スッゲー驚いてたよ」


「そら驚くわ、てか俺がビックリだよお前」


「そうか? 言っといた方が良かったかな?」


「お前天然かよ、普通は前以て言うわ、てか結婚決まったらお互いの親同士でも話し合いしなきゃならないだろ?」


「あー そう言えば親父と向こうの親父さんで話してたな?」


コイツ常識無し()かよ? それかそこまで頭が回らなかった可能性もあるな、ありうる‥‥ コイツにとってはセレサに告白する事でいっぱいいっぱいだったんだろう、何故なら脳筋ヤカラのチンピラだからな、と言う事はコイツと結婚するセレサは姐さんって事になるのか?


まぁめでたい事だし良かったよ、対応5の時のあの夜が切っ掛けだからな、人の人生の転換点に居合わせ、その切っ掛けを作った訳だからな。


うん、ブライアンのブライアンを掴んで気合い入れてやった甲斐があったな。


「なぁ守長、何で手をワキワキさせてんだ? なぁ何で? えっ、何で?」


「祝福の為だよ」


「えっ‥‥」


「何だ、俺の祝福はいらないのか?」


「いや、だけどソレはいい、要らない、本当に勘弁して下さい守長‥‥」


「何だよ祝福してやろうと思ったのに‥‥ まぁ良いだろう、てかお前結婚する時は祝儀はずんでやると俺は言ったな? 結婚式の時は期待しとけ」


「えっマジで? ありがとう守長」


「おう、まぁおめでとうブライアン」


喜ぶブライアンを見て思った、コイツで遊ぶのは程々にしておこうと前に思ったが、やっぱコイツは面白い、まぁあんまやり過ぎたら又おかしくなるからな、控えなければならん。


それにコイツは暫く時の人になる。


バハラやその周辺で暫くは、今回の一部始終が面白おかしく語られる事になるだろう。


本人は全く気が付いて居ないみたいだが‥‥



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[一言] ブラ公おめでとう ほんとうにおめでとう 結婚は墓場だ 幸せに棺桶に入るがよい
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