第130話 千客万来
カモメが鳴いている
普段より煩い、カモメも祭りを楽しんで居るのかも知れない。
まぁ単純に祭りでテンションの上がった奴がエサでもやって居るんだろう。
朝方、村まで諸々の用事を済ませに行ったがアンナがやはり付いて来た。
てかアイツは背後霊かよ?
仕方無いので、本当に仕方無かったので、おめかしを褒めてあげた。
前世で言うところの、胡散臭いファッション評論家気取りで褒めてやると、満足したのかやっと離れて行ったが本当にアイツはチョロいな。
余りのチョロさに寧ろアンナの将来が心配になってしまった。
アイツ将来チャラ男に騙されるのではないかと一瞬思った。
だがアンナは野生の勘と言うべきモノを持って居るので、俺の心配は杞憂で、恐らく大丈夫な気もする。
因みにアンナが離れて行った後、ジゼルにもバッタリ会ったが、ジゼルはちゃんと心から褒めておいた。
ジゼルは、本当に可愛らしかったので褒める事に苦労はなかった。
うん、この辺りが自称村一番の美人と、他称村一番の美少女の違いであろう。
てかカモメがうるせーな‥‥
うみねこも居るな、寒くなってきたのに元気なやつらだ、たまにカモメが異常に煩い時あるよな?
「にゃぁ~ ニャァ~」
「何だハンナか、一瞬うみねこが入り込んだと思っただ‥‥ て、おい! お前なんでそんな汚れてるんだよ?」
ん? しかも何故ハンナの奴、誇らしげな顔してんだ?
あっ! コイツもしかして喧嘩して来やがったな?
で、勝ったと、そんで誇らしげな顔してんだ‥‥
「ハンナこっち来い、清浄魔法掛けてやるから」
本当に、コイツ泥の中で喧嘩したのか?
無茶苦茶汚れてるじゃ無いかよ。
クリーンを掛けてやると綺麗になった、うん、流石は俺の飼い猫だ、帝国一の美猫だ。
「ニャァ」
「何だ、お前もしかして礼のつもりか? てか最近本当に軽返事する様になったな?」
うん、今度は返事もせずに出て行った。
自由な奴だよ、そう言や前世で猫になりたいって言ってた奴が居たな?
出来れば金持ちに飼われたいって‥‥
アイツ元気かな? ヒモか猫かどっちかになりたいって言ってたが、奴の願いは叶ったんだろうか?
まぁ良い、コーヒーを飲むか。
う~ん、素晴らしい香りだ、淹れ方も良いんだな、
本当に心地好い一時だよ、俺が権力を握ったらコーヒータイムを邪魔する奴は髪型モヒカンの刑にしてやろう。
「守長、ちょっと良いかな?」
「何だモリソン弟、どうした?」
「あー‥‥ ちょっと村長から言付けが‥‥」
「ん? カレンでは無く村長からか?」
「うん、その‥‥」
ん? 何でコイツは言い淀んでんだ?
モリソン弟の話しによると、
何でも、俺が祭りに参加しないのがお気に召さないらしい。
そしてあのアホは、村の一員として俺が参加しないのはおかしい、村長としてその様な事は認められ無い、そしてこの俺を呼んで来る様に言ったそうだ。
うん、あのアホは何を勘違いしてやがるんだ?
あれか? 祭りでテンションが上がって調子コイてんのかな?
「あー‥‥ 一応聞くが、あのバカはまさかと思うが葉っぱでもやってんのか?」
「いや、流石にそれは無いと思う」
「うん、なら既に酒飲んでやがんのかな?」
「それも無い、まだシラフだよ」
「あー そうかそうか、祭りの雰囲気に酔ってるんだな、祭りで浮かれてるのか、あの愚か者は」
「・・・」
「因みにカレンは? あのラリパッパの側に居るのかな?」
「いや‥‥ 居ない、居なかった、だからここに来る前にカレンおばちゃんにはちゃんとこの件は伝えてから来た、おばちゃん急いで家に帰ってたよ‥‥」
「・・・」
あのバカは又か? 暴走か? 又やらかすつもりか?
てかモリソン弟は流石だな、ちゃんとカレンに伝えてからここに来たか、あの自称村長のバカが何を抜かして居るか理解して火消し役を送り込んでから来た。
うん、このモリソン弟に村長をやらせた方が遥かに良いな。
「おい、あのバカに手紙を書くから少し待っててくれるか? コーヒーを淹れるから、飲んで待っててくれ」
「ああ、分かった、いただくよ、それと灯台に入る時に股間を触れたんだけど‥‥」
「おう、気にするな、てかデカデカと張り紙してあっただろ?」
「いやまぁそうだけど‥‥」
門番達はきっちり仕事してるみたいだな。
さてと‥‥
―――――――――――――――――――――――
バカへ
おい お前舐めてんのか?
まず 何で俺がお前の所に行かなくてはならない?
お前が来るのが筋だろうが
お前は何様だ? そんな偉いのか?
俺は今まで居た下級官吏と違って
只の木っ端官吏では無いのだが?
てか下級官吏であってもお前に呼び出される様な
謂われは無いぞ 勘違いするなよ
祭りでテンション上がってるのかも知れないが
相手見て物抜かせよコラ?
お前は自称村長でしかないが 俺は官吏なんだぞ
俺は国から任命された官吏で
お前は公的な意味での村長では無い
てか公的にも 私的ですらも村長では無いんだ
只の慣習として村長を名乗る事を許されてるだけだ
お前 色んな意味で自称村長だって分かってるか?
俺は国から任命され 権限も与えられてここに居る
お前には 公的には権限が無いんだ
只の慣習として任せられてるだけだからな
それと俺は特級官吏だと言う事を忘れて無いか?
そして 巡察使でもあるのだが?
ついでに御免状も持って居るんだが?
俺に命令出来る権限のある者等
この帝国でも数える位しか居ないんだが
お前はそんなに偉いのか?
幾ら飛ばされたとは言え
お前如きアホの首をすげ替える事等
片手間に出来る権限は未だあるぞ
てかカレンが居ない時に勝手な事すんなや
お前は又カレンにケツ拭いて貰うつもりか?
俺は一応 お前の立場を慮って
気を使ってやってるんだが?
てか俺が行っても良いのか?
今日は一切考慮も配慮も無く
村の皆が居る前で立場を完全に無くしてやるが
本当に良いんだな? 俺はやると言ったらやるぞ
おいバカ 俺は一応は気を使ってやってんのに
お前はちょっと舐め過ぎじゃ無いか?
どうせ何も考えず 思い付きでやってるんだろうがな
さてバカよ 祭りだから白ける様な事はしたくないが
お前がその気なら今日はとことんやってやるが?
てかちっとは考えてから言葉を発しろや
せめてカレンが居る時に カレンに聞いてからやれや
お前マジで履き違えるなよ
カレンが居るから村長出来てるんだからな
カレンが居ない時に勝手な判断でいらん事すんなや
どうせ村長?として一発エエ格好しようって
とこだろうが 逆効果だからな てかスベってるから
お前には道化としての才能すらも無いから諦めろ
相手が笑えなきゃ道化は無理だからな
道化ってモンを舐めんなやバカが
てかお前 本当 一回泣かすぞ
なぁ泣かしてやろうか?
お前 村長って名称を剥奪して
明日から村人その一にして欲しいのか?
村人 その他大勢にしても良いが どうする?
それと俺が祭りに参加しないのは理由があってだが
灯台守のじい様達を祭りに参加させてあげたいから
俺は留守番して居るんだがな
つーかお前 この灯台の差配は俺の権限であって
お前には一切無いんだが?
俺は国の仕事で灯台に居残り お留守番してんだ
謂わば公務なんだが で?
お前にどんな権限があってそれに嘴を挟む?
お前にも分かりやすく言ってやろう
お前が灯台の事に口を挟む何ざ百年はえーんだよ
七回位 生まれ変わってからモノ抜かせやボケ!
てかガタガタ抜かしてると貸しを使って
アンナにカンチョーさせるぞコラ!
又 カルン! カルン! って言わしてやろうか?
分かったら 大人しくしとけボケ!
つーか定期的におんなじ様な事しやがってからに
お前はアンナ以上の問題児だよ
てかハゲろやボケ!
加齢臭を消してから物抜かせや 口もクセーんだよ
アホが お前マジで一回泣かせてやるからな
追伸
てかお前マジでキャン言わせてやるからな
精々 今日の祭りを楽しめや 村長様
おいカレン この手紙ちゃんとそこのバカに見せろよ
てかそのアホから目を離すな 常に気にしとけ
ある意味二歳児より危なっかしいからな
マジで毎回 毎回おんなじ様な事を
そこのバカは定期的にやり過ぎだ
付き合わされるこっちの身にもなってくれ
本当に俺の権限を使って
そこのバカの首をすげ替えるぞ
そこのアホタレが自称村長で居たいなら
分かってるなカレン?
俺はやると言ったらやるぞカルン
―――――――――――――――――――――――
よし、こんな物か。
あのアホ、定期的に毎回毎回、同じ様な事をやり腐ってからに‥‥
てか祭りの時位大人しくしとけや‥‥
「おい、モリソン弟、一応お前もこの手紙に目を通しておいてくれ」
「えっ? 良いのか守長?」
「良いんだよ、てか見られて困る事は無い」
本当にもう‥‥
マジでアンナより問題児だな、てか余りにもアホタレ過ぎて怒る気にもならんわ。
手紙を読んで居るモリソン弟が時折ため息を吐いて居る、コイツも災難だよなぁ。
折角の祭りの日にアホな事に巻き込まれて‥‥
おめかししてんのに一々こんな所まで行かされて、
災難だな、コイツも恋人と過ごしたいだろうにな。
「守長、コレを渡したら良いんだよな?」
「ん、てか見たから分かるだろうがカレンに先に渡して読ませてくれ、あの自称村長とやらがゴネてもほっとけ、カレンに、カレンにまず渡してくれ」
「分かったよ守長、コーヒーごちそうさま、じゃあ行くよ」
「おう、あっ! ちょっと待て、コレ持ってけ、お駄賃だ」
「ん? お駄賃?」
「ん、飴玉やる、恋人と一緒に食え」
「良いの? ありがとう守長」
「ん、まぁお前は、いや、お前らは祭りを楽しめ」
「分かった、行くよ守長」
行ったか、本当にもう‥‥
とりあえずコーヒー飲も。
それからちょっとしての事だった、入れ替わりかの様に又、客が来た。
「なぁ守長」
「何だよ、今度は兄か、聞きたく無いがどうした?」
「なぁ、入る時に股間触られたんだけど、しかも無茶苦茶嫌そうに‥‥」
「はぁ? お前は男の股間を喜んで触るのか?」
「いや、そんな訳無いだろ」
「なら嫌そうに触るのは当たり前だ、てか入り口にデカデカと張り紙したし、説明もあっただろ?」
「いやまぁそうだけど‥‥」
うーん‥‥
大銅貨一枚では何か悪い気がしてきたな‥‥
後で特別ボーナスを追加で渡そう。
「で? どうした? アンナが暴れて手が付けられ無いとかか?」
「いや、今日は違う、何かジルが灯台に入れないのはおかしいって言ってるんだ」
「知らんわ、つーか理由も前以て説明したが?」
「何か当日言われても困るとか、知らないとか、何かゴネまくってるんだよ」
「いや、知らんわほっとけ、てか何でお前が来てるんだ? お前、なんかアイツに弱味でも握られてんのか?」
「何でだよ、弱味なんか握られて無いよ、てかジルの奴が荒れ狂ってて目がイッちゃってるんだよ、そんで俺に言いに行けって言って‥‥ 俺、怖くって逆らえ無くって、そんで言いに行かされたんだよ‥‥」
「・・・」
何やってんだよあの変態は?
てかやっぱ来るつもりだったのかよ?
あっぶねー フィグ村の若い衆に門番頼んどいて良かった~
「で? 聞きたくないが、何があった?」
「ああ、ジルの奴が‥‥‥‥‥‥」