第13話 硝子の色は?
風が吹いている
物凄い風だ 豪風としか言いようが無い
俺は今アイザックのじい様と
アレを取りに篝火への階段を上がっている。
階段に居るのに風の音が凄い。
「じい様 凄い風の音だな」
「こんなにきつい風は久々だな
沖の方はかなり荒れとるな」
荒れてると言うより荒れ狂っている。
俺がそう言うと確かにと言ってじい様が笑う。
俺がバハラに居た時でもこんな荒れてるのは
記憶に無い、それぐらい荒れてる。
篝火がかなり揺れてる
「おいおい 窓天幕しててもこれか」
「そうじゃろ だから守長にガラス出して
もらわにゃあ思ってなぁ」
じい様が言うガラスとはガラスで作られた
半円形の風避けだ。
と言っても透明なガラスでは無い。
濁りがあるガラスだ、しかも割と気泡がある。
残念ながら
この世界のガラス製作技術が未熟なのか
前世のような完全に透明なガラスは無い、
しかも気泡が結構入っている。
濁り方も少し所か結構濁っているし、
そしてそれが望遠鏡を作れない理由なんだ。
いやまぁ水晶とか宝石を削ればレンズは出来る、
濁りの無い透明なレンズが出来るんだ。
ただなぁ‥‥
1つ2つ作るのなら問題無いが
大量に作るとなると流石に無理だ。
大体1つ作るのだってかなりコストが掛かるし
大変高価な品物なんだから。
しかも濁りがあり、気泡が大量に入ったガラスでさえ高価な品なんだ。
首から掛けたヒモを手繰る、えーと‥‥
このカギだな、幾つかあるカギの中から
ガラスの防御壁が置いてある部屋のカギを出す。
このガラス製の防御壁は使用に俺の立ち会いが要る
当然使用するには俺の許可が必要だ。
そして使用したなら
使用用途の報告書類も書かなければいけない。
うおっ! 風が。
「本当に酷い風だ吹き荒れてるじゃ無いか」
「堪らんなぁ今日はハズレ日だ」
アイザックのじい様がウンザリしている。
今日の夜番は確かにハズレ日だ。
それも大ハズレだな。
じい様と二人で出して置き位置を微調整する。
「こんなもんか?」
「もうちょい後ろに‥‥」
「じい様 ちょっと下げすぎだ
さっきの位置じゃ無いと風が篝火に入り混む」
「だがそれでは光が弱く無いかの?」
二人であーでも無い、こーでも無いと言いながら
何とか置き位置を決めて少し様子を見る。
篝火の灯りがガラスを通して光輝き
幻想的な光景だ見てて心地良いな。
しかしいかんな雨風がキツすぎる。
「じい様雨具を着ておいた方がいい」
「この時期は暑いんだが‥‥ 仕方ないか」
いくら大雨が降って風が吹いて居ようと
生ぬるい風だし湿気が結構ある。
とは言え着なきゃびしょ濡れになってしまう。
篝火のあるこの部屋には
雨風避ける為の小さい部屋のような一角がある。
部屋と言うよりは箱のようなものだ、
とは言え本当に小さい。
箱の前面は開いているので風は勿論、
雨も多少は入り込む。
当然その中にずっと居る訳では無い、
窓天幕のズレを直したり
篝火が途絶え無い様に薪等も投入しなきゃいけ
ない
やる事は何やかんや色々あるんだ。
そして色々作業をしている間に濡れる。
雨具を着ないとびしょびしょになって
低体温症になってしまう。
汗で身体が濡れるのと雨で身体が濡れるのは
全くの別物だ、時々勘違いしてる奴がいる‥‥
夏でも雨に打たれ涼しいから何てそのままにして
低体温症になって、エライ事になる奴がたまに居るんだ。
じい様達の中には、
階段に居て雨風を避けるのも居るが
階段は腰が痛くなるから箱に居るのがよっぽど楽だと言う派が多い。
箱だと椅子もあって結構楽だ。
じい様が雨具を着てきた、
雨具はケープのかなり長いものだ、
パッと見は若干小汚ないてるてる坊主みたいだ。
じい様は麦わら帽子も被っている、雨具には蝋が染み込ませてある。
ついでに油も軽く染み込ませてありかなり水を弾く、ただ気をつけ無いと篝火で蝋の成分が溶け出てしまうので注意が必要だ。
それに油が付着する。
雨天幕にも同じ様な防水加工が施されている。
だがこの雨風では水気を吸い込むんじゃ無いかと心配になるな。
じい様にクリーンを掛けて ついでに乾燥も掛けておく、じい様は気持ち良さそうな顔だ。
因みに灯台には石鹸が常備品に必ず加えられている
雨具や雨天幕の油分の付着を洗い落とす為である。
おっとそうだ
「じい様 箱の所に氷を置いとくから
ついでにこの部屋にも幾つか置いとく」
「おー! ありがたい、守長すまんなぁ」
箱の出入口に邪魔になら無い様に1つと、
それとは別に6つ 壁際に置いてと‥‥
うん、魔力が全然減った気がしない、
我ながら凄いな。
「守長、ありがたいんじゃがちと多過ぎんか?」
そうかな?
1m四方の大きさの氷七つ置いただけだけど?
「いやまぁ ありがたいんじゃが‥‥」
じい様が困った顔してる、ガッチガチに固めたとは言えこの気温なら直ぐに溶けるだろうし必要だろう。
「じゃあじい様、俺は下に降りるから後は宜しく」
「あっああ、お疲れさんありがとうな」
さて、降りたらガラスの使用書類書いて寝るか。
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■■■ちゃん 今のは踏み出しが一歩遅かったわね
実戦ならば
左足のふくらはぎから脛まで切り裂かれてたわよ
幾ら具足を着けて居ても
あの角度からなら出来るのよ 足をやられちゃったら
殺られるのを待つだけになっちゃうから
次からはもっと踏み込みを早くね
無理じゃ無いわよ
アナタなら出来るから言っているの
無茶でも無いわね
どうすれば良いのか?
石突きをもっと上手く活用しなきゃ
そう 下から掬い上げるのも一つの手ね
柄の活用も大事よ
えっ私なら?
柄で受けて受けた力を利用して飛び避けるかな
うーん‥‥
おばあちゃんだってアナタ位の歳には
出来なかったわよ でもアナタなら出来るわ
薙刀はね最強の武術なのよ
~
おい■■■今のは掴む動作が遅れたな
なら腕で無くそのまま袖を掴めば良かったんだ
必ず腕を掴まねばならぬ訳では無い
無理では無い
なればこそ手首で無く袖を掴むのだ
なら指で引っ掛ければ良い
そうすれば■■■の力でも相手の体勢を崩せる
腕を掴むだけでは無い そのまま押し上げるか
相手の手や腕 それこそ袖等の軌道をズラせ
固定観念に囚われるな あくまで基本は基本
もっと応用を効かせろ
何度言ったら分かる
力を使うのはあくまでもやり口の一つでしか無い
無理では無い 不可能でも無い
相手の体勢を崩せ なれば指一本でも倒せる
足捌きが疎かだからそうなる
■■■のような幼子でも大人を倒す事が出来る
それがコレの良いところだ
■■■よ 今日1日で何度死んだ?
~
そうそう それで良いの 柄頭を使うのもアリよ
大丈夫だよだって■■■君は私の子供だもの
十手はね順手だけじゃなく 逆手で持ってもいいの
鉤の部分をもっと使わなきゃ
今のは無理に鉤で絡めるよりもむしろ
棒身で絡み取るべきね
そこはね遊びを持たせるの それでここに通して
遊びを持たせた所に通して引っ張ったら
キュッと絞まるの
遊びって言うのは余裕を持たせるって意味だよ
力任せに振ったらダメだよ
大丈夫 大丈夫 無理じゃ無い 出来るよ
だって■■■君はお母さんの子供だもん
振った反動も利用するんだよ
捕縛術はエッチでも変態でも無いよ
そんな事言う子が エッチで変態さんなんだよ
だから今度言われたら 相手の子に
お母さんが今 言った事言えば良いと思う
あっ! むっつりスケベも忘れず言うんだよ
十手は最悪投げても良いの
固定観念に囚われたらダメだよ■■■君
やーん流石は私の子ねー 凄いわ末恐ろしいわー
両手持ちも出来るんだよ
やーん二刀流カッコいい♪
うーん‥‥ 今のは突くべきだったね
そうそう順手と逆手で持っても良いんだよ
卍の形って言うんだよ
両手共 順手でも良いし 逆手でも良いの
■■■君 持ち手を変える時は 気を付け無いと
■■■君 順手から逆手 逆手から順手に切り替える時も気を付け無いと それも隙なんだよ
無理じゃ無い 大丈夫 大丈夫
無理って言う方が無理なんだよ
~
寸鉄は最後に自らの身を守る最後の盾にして
剣でもあるんだ
今のを受け止めたのは失敗だったな
無理 無理言うと何にも出来ないぞ
その場合は下から顎を平手でカチあげるんだ
そんなやり方してたら中指を骨折してしまうぞ
なら指通しの部分で殴ればいい 柔軟に考えろ
はっはは
俺もねーちゃんには昔から勝てなかったよ
無理無理言うな
おじさんだって昔から出来てた訳じゃ無い
そんな動きしてたら寸鉄を持っているのがバレるぞ
あのなぁ 俺はうちの流派じゃ弱い方だぞ
情けないが未熟者も良いとこだよ
受けるな 弾き相手の放つ軌道をずらし 反らせ
そうだそれで良い やれば出来るんだ■■■は
~
サリバンよ本当に遠見器は出来んのか?
余はそちを買っているのだぞ
サリバンよ そちはほんに面白いのう
サリバンよ次はどんな事をして
余の心を昂らせてくれるのじゃ?
えーい遠い サリバンよもっと近う寄れ
乞食鳥とな?
サリバンよ 宮廷料理は飽いた
何と! 庶民とは何と旨い物を食しておるのだ
サリバンよ
サリバンよ
サリバンよ・・・
ーーーーー
ーー
ー
ん? 何の音だ?
雨音? 風?
建物に何か当たってんのか?
違うな‥‥
ドアか?
「守長、守長すまん起きてくれ」
コンコンと音がしてたのは
ドアをノックしてる音か?
アイザックのじい様も詰まらん事で起こしたりはしない。
何があった?