第120話 恋愛指南と女心
チンピラが居る
紛う事無きチンピラが居る、まぁブライアン何だが
「おいチンピラ」
「守長‥‥ 俺はそんなチンピラか? 俺だって少しは傷付くんだ、勘弁してくれ」
「おうすまん、つい本音が‥‥ まぁ良いだろう、所でお前、バハラの魚市場には行くのに青空市場には行かないってもしかしてヘタレてんのか?」
「守長、魚市場は行くが青空市にはそんなしょっちゅう行かないんだ、あそこは加工した魚や何かを持って行く所で、生魚はそんな持っては行かないんだ」
本当か~ コイツ? 怪しいな?
「だが流石に余りにも行かな過ぎじゃないのか?」
「あー 対応5があったせいだよ、あれが無かったらもう少し早めに行ってたんだけどな、でもそろそろ行こうとは思ってる」
うーん、まぁ理由としては納得出来るが‥‥
「お前実はフラれるのが怖くて行って無いってオチじゃ無いんだろうな?」
「いや本当だって、もう腹は括った、今は逆に落ち着いて居る」
「なら良いが、そう言えばお前手紙は書いたのか?」
「ああ書いたよ、後は行くだけだ」
うん、嘘は無さそうだな、意外と落ち着いて居る、
時間を置けば気が萎えるかと思ったが寧ろ心の整理をする時間になった様だな。
「分かってると思うが言葉でも伝えろよ、それと身嗜みも整えろ、何時もと違う雰囲気を演出するのも結構大事だし、ありのままの自分って言っても多少は取り繕う事も必要だ」
「ああ、ちょっと良い服を着て行くよ、それと‥‥ 後は何したら良いんだ?」
「お前なぁ‥‥ 無精髭はきっちり剃って行け、それとセレサが私なんて、って言うと思うがちゃんと否定してやれよ」
「えっ? どう言う事なんだ?」
コイツ分からないか‥‥
説明してやらんといけないな。
「セレサは結構男勝り何だろ? 俺がお前から聞いた話しではセレサは自分で女らしく無いって思ってるっぽいからな、間違いなくお前が想いを伝えるとこう言うだろう『私なんて』とか『私は女らしく無いし』とか、まぁその他にも自分自身を否定する様な事を言うだろうな、その時は絶対、絶対否定しろよ! 如何にセレサが素晴らしいか、セレサが女としての魅力が溢れた女か、美しいかを言え、大袈裟でも何でも無く帝国で、いや、大陸一の良い女だと言え」
「何かあんま大袈裟だと逆にダメ何じゃ無いのか?」
「セレサは間違いなく女として褒められ慣れて居ない、てか女扱いされて無い、そして女として自分自身に自信が無い、自分が男に口説かれる何て欠片も思って居ない、
言い方は悪いがその様な女は結構チョロいぞ、てかお前の中ではセレサは大陸一の女って思ってるんだろ?
ならお前の想いをセレサにぶつけるだけで良いじゃないか、お前を不安にさせるつもりも無いし、
こんな事を言うのは余り気持ちの良い事では無いかも知れないがな、セレサはちょっと女慣れしてる奴ならコロっと簡単に落とせるぞ、男慣れして居ない自分に自信の無い女、まぁ男もだがビックリする位簡単に落ちるからな」
「そんな簡単に落ちるもんか?」
「女慣れしてない奴がやっても簡単には落ちんな、ある程度の慣れが必要だ、だがセレサは女として自分に自信が無いと言うのは当たってると思うぞ」
「そうなのかな?」
そうなんだよ、男勝りなのもある意味セレサ自身のコンプレックスの裏返しでもあるんだ、
てか女らしく無いのも分かってるが反面女扱いを、
それこそお姫様扱いして欲しいと願う気持ちもあるはずだ、まぁだからと言って女扱いされたら戸惑いもするだろうがな。
だがそこはセレサを徹底的に女の子扱いし、
壊れ物を触るように、深窓の令嬢扱いしてやれば、
うん、簡単に落ちるな、多分意外な程にチョロい、
それこそチャラ男なんかに簡単にいただきますされるタイプだ。
てか時間を掛けて女の子扱いしていればとっくの昔にブライアンの女になってただろうな。
どうもコイツはセレサと男友達みたいに接して居たっぽいんだよなぁ‥‥
ちょっとした時に、そして細やかな気遣いをして居れば寧ろセレサがブライアンを意識してただろうに
その辺の機敏がコイツは分からないと言うか理解出来ないんだろうな。
まぁ俺が話を聞く限りセレサはコイツに対して結構好印象ではあるんだよな。
憎からず思ってると言うのか、案外セレサもブライアンの事を待って居るのかも知れない。
早く口に出して言って来て、と‥‥
ちゃんと女扱いしろよ、間違っても男友達みたいに接するなよ、
女の扱いは要注意なんだ、取扱注意とも言う。
気安い関係ってのは心地良いし楽でもある、
だがコイツは自分自身の気持ちに気が付く事が出来た、それも早い段階的でな、それだけでも大したもんだよ。
もし気が付く事も無く、分からないままであったならば、土壇場まで気が付かなかったならば、
悲劇的な結果になった可能性が大きいな。
そう考えればコイツは自分の手で縁を掴んだ、
劇的でも無ければ華やかさも無い平凡な物、
だがだからこそ、人はそれを運命と言いたがる。
そう、人は運命だと信じ込む。
だが悪い事では無い、その様な事が人生には必要だし、そう思える事も人生には必要で、そう思う事も人生には必要で大事な事なんだから。
「おいブライアン、俺がお前を呼んだ理由は何だと思う?」
「えっ? この話をする為じゃないのか?」
「間違っては無いが正解とは言い難いな、お前がセレサに想いを伝える時に蜂蜜を持たしてやるって言っただろ、もしかして忘れたのか?」
「あっ、そう言えば‥‥ 守長、手をワキワキさせるのは本当に、本当に頼むから止めてくれ‥‥」
「お前‥‥ やっぱり忘れてやがったな? てか本当に大丈夫かお前? 当日言う事とかやる事を忘れて頭が真っ白になったりするなよ、もしくはあぅあぅあぅって言いながら右往左往するんじゃ無いぞ」
「多分大丈夫だと思う‥‥」
怪しいな、コイツはチンピラのくせ小心なとこがあるからな、緊張で全て忘れて全てを省略し、好きだとしか言わないよな?
それは余りにもはしょり過ぎだ、なるべく冷静になってやらないと上手い事行くモンも行かなくなるからな。
「まぁ失敗したら失うだけだ頑張れとしか俺は言えないな、そうだついでに髪留めもやる、セレサに贈ってやれ」
「それってこの前行商人から巻き上げてた物だよな? 良いのか?」
「ブライアン、巻き上げたとは失礼だな、コレはあの行商人がこれからの俺との事を考えて将来への投資として献上してきただけの事だ、てかお前が言うって事は村の奴等は俺が巻き上げたと思ってるのか? これは交渉の結果得た物だぞ、失礼な奴等だな」
「そ そうなのか? 別に俺も村の奴等も悪口を言ってる訳じゃ無いんだ、ただあの行商人は結構口が回るからあの行商人からまけさせたのがスゲーって言ってるだけなんだ」
うん、なら何でそんなに焦ってるんだコイツは?
まぁ良いだろう、余り追及しても仕方無い、
だが俺は阿漕な事をして手に入れた訳では無いんだから何を言われても知ったこっちゃ無いがな。
ちゃんとした交渉の末に手に入れたんだ、
それを巻き上げたって、せめて脅し取ったって言って欲しいもんだよ。
「なぁ守長、良いのかコレ?」
「良いんだよ、何だいらないのか?」
「いやそんな事無いけど、貰えるなら欲しいけど、守長は渡す女は居ないのかと思って‥‥」
「お前なぁ、俺が結婚申し込むなら髪留めじゃ無く宝石を渡すわ、てか今は渡す相手は誰も居ないし、そもそも結婚もする予定は無い」
「・・・」
なーんか言いたげだな、何なんだよ。
「おい、俺に何か言いたい事があるなら言え、」
「いや、その、宝石ってスゲーなぁ、って思って」
「それだけか? なーんかお前もそうだが村の奴等はどうも俺に対して含む処があるよな? まぁ悪意は感じ無いがどうもなぁ‥‥」
「守長、宝石もそうだけど本当あの行商人からまけさせたのはスゲーと思ってんだ、あの行商人は逆に俺達にまけさせる事で有名だったんだ、それを結構まけさせたんだろ?」
「たかが髪留め三つと贈り物用の包み紙三つだろ、それと大銅貨二枚分まけさせただけだ」
「いや、大銅貨二枚って‥‥ それより守長、髪留め三つもオマケに付けさせてたのか?」
「ああそうだが、何でだ?」
何を唖然としてんだコイツは?
コイツはあの場に居なかった、そのコイツが知ってるって事は村で噂になってんじゃ無いのか?
「いや‥‥ 一つだけだと思ってた、皆もそう言ってたしそうなのかと、そんであの行商人は泣きそうな顔してたって皆言ってたんだな、守長がどうやってあの行商人からまけさせたか俺も見たかったな」
まぁまけさせただけじゃ無いと思うが、
仕入れ値の事は黙っておくと約束したからな、
皆まで言わなくても良いだろう。
「そんな事よりセレサに想いを伝えに行く日は前以て俺に教えろよ、その日は特別に清浄魔法を掛けてやる、やるからには必ず成功させろ」
「マジかよ! 良いのか守長」
「良いんだよ、少しでも成功率を上げる為だ」
「分かった、日が決まったら守長に言いに来るよ」
「おう、分かった、忘れずに来いよ」
うん、ブライアンは今日マジで臭かったからな、
まさかと思うが当日も魚醤場に行ったりするかも知れないからな、まさかと思うが一応は気にしておかないとコイツ臭いまま行きかねないからな。
本当に困った奴だよ。
「祭りが近いから少しズレ込むかも知れないが必ず成功させる、守長色々ありがとう」
「おう、吉報を待ってるぞ、それと蜂蜜はツボごとやるからそのままセレサに渡してやれ、お前つまみ食いすんなよ」
「流石にしねーよ、俺は子供じゃ無いよ」
本当かぁ~ まぁ良いだろう、てか祭りが近いな、
もう夏が終わり秋になるんだな。
祭りが終わるとマデリン嬢がここに来る事になる、
秋になったら俺も決断しなければならないな。
久々にマデリン嬢と会う事になるか・・・