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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
116/214

第116話 フィグ村


心地好い風が吹いた


陽射しと風のやや涼しさが絶妙な具合だ


秋と言う季節は行楽日和だと言うが正にその通りだ


「じい様、何か陽気が良いな気持ち良いよ」


「ああ、この季節はエエな、ほんの一時の幸せの時間の様だ、まぁちょっと間の幸せだがエエな」


微妙に詩的ではあるな、しかも分かりやすくもある


秋には届かず夏は遠くって感じの時期だからな、

冬は海沿いだからやや寒さがきついが帝都に比べればまだマシではある、だがそれでも冬は辛い。


帝都はここから北にあるが更に北にも、もしかして未知の大陸があるのかも知れない。


何となくで確証は無いのだがこの惑星は地球より大きいのかも知れないな、惑星規模? が多分であり、もしかしてって程度の考えでしか無いが大きな気がする。


「じい様、歩きだと微妙に遠いな」


「そうかな? まぁ近くは無いから微妙に遠いって言うのも間違いでは無いかな?」


「もう本当、馬買っちゃおうかな‥‥」


「又そんな事を‥‥ まぁ世話するのも、金出して買うのも守長だから口を出す権利は無いがの、しかし馬使って行く程の距離かな?」


「なぁじい様、俺は武官では無く文官なんだぞ、基本的に机に座って書類を処理するのが仕事なんだからな、ひ弱な文官なんだぞ」


「・・・」


何なんだよ? その物言いたげな顔は?


だが文官が書類仕事をってのは基本的に間違ってはいない、まぁ俺はフィールドワークもしてたがな、仕事でフィールドワークってのもちょっと違う気がするが、てか何でもありではあったな。


「まぁそれは置いといて、村までもう少しだな」


「・・・」


何で置いておくのだろうか? まぁ良いけど。



フィグ村はパッと見ハルータ村と変わらない、

違いは無花果(いちじく)がハルータ村よりも遥かに多く栽培されていると言う違いだけだ。


まぁそう考えれば全く同じでは無いし、

この時期は簡単に見分けがつく。


この世界のイチジクも前世と同じく年二回収穫され前世とほぼ変わらない、ただこの辺りは十一月位まで収穫されるが帝都周辺では十月位までしか収穫されない。


多分だが経度や緯度による差なのか収穫時期が一月程、帝都周辺は短い。


そしてフィグ村のイチジクは特別でもある。


この時期は秋果の収穫時期だが夏果に比べると小さいが甘味が強い。


それも前世と全く一緒だ、だがこの村のイチジクはこの時期でも大きく、そして甘い。


甘さと大きさを両立させている奇跡の様なイチジクだ。


ハルータ村のイチジクはこの時期収穫される物は夏果に比べ甘いが実は小さい。


村と村を隔てる境界線は二メートルちょいの小川なのだが何故かその川を境にイチジクの出来が変わる。


本当に不思議だがその小川を境にハルータ村のイチジクに比べフィグ村のイチジクは実が大きく、

甘さも比べ物にならない位に甘い。


美味さが明らかに違うんだよなぁ‥‥


前世ではイチジクは嫌いでは無いが好きとも言えなかった。


まぁ干しイチジクは大大大好きだったがな。


特にデパ地下のドライフルーツ専門店で買う干しイチジクは愛してると言って良い程好きだった。


大きさ、色、形の全てが最高で、味は極上だった。


まぁその分お値段もかなり高かったがその価値はあった、百グラム八九九円と言うぼったくりか?

と一瞬思ってしまう額ではあったがその額に見合う、いや、それ以上の値打ちがあった。


色も美しい乳白色で傷も無く染み一つ無い貴婦人の様な綺麗さだった。


多分だが傷や染みのある物や歪な物はハネていたからだと思う。


まぁ専門店だからな、しかもデパ地下に出店して居るんだからその辺りは徹底して気を付けてたんだろうな。


フィグ村の干しいちじくは多少の傷や染みがあり、

そして色が綺麗とは言い難いが味は勝るとも劣らない、本当に絶品、極上の味だ。


そして生のイチジクも本当に美味く、前世ではそうでも無かったがフィグ村のイチジクは初めて食べた時から大好きになってしまった。


当然帰りには採れたてイチジクと干しイチジク、

そしてイチジクのジャムを買って帰るつもりだ。


その為に背負子とバスケットも持って来た、

だからフィグ村の人間が俺を見たら又買い物に来たと思うだろう。


まぁとは言えイチジクは食べ過ぎには注意しないとな、食い過ぎたら腹が緩くなるから食う量を抑えないといけない。


非常に残念だが自制は必要な食い物だ。



「なぁじい様、橋まで行くの面倒だから飛び越えようか?」


「守長勘弁してくれ、橋まで行って渡ればいいじゃ無いか、本当に勘弁してくれ‥‥」


そんな泣きそうな顔するなよ、てかこの位の幅ならじい様ならいけると思うんだがじい様は俺の案がお気に召さ無かったらしい。


俺達は早めに昼飯食って到着が昼飯時が終わる位に到着する様に調整して出発した。


灯台から海岸沿いの道を歩いて来たが、

ここから橋までは十分程歩かなければならない。


だが飛び越えたらその十分は短縮される訳だ。


だがじい様は、

「結局そこから村長の家まで歩かねばならんし、橋を渡れば一直線じゃないか」


と言い再度拒否された。


まぁじい様が言ってる事は納得出来る理由だったので素直に従う事にした。


でもあれだよね、小さい川とかあったら何故か飛び越えたくなるよね、男の子ってそう言うの何故か好きだよね。


で、失敗して川に落ちる迄がセットだ、

いや、様式美と言っても良い。


「じい様一応聞くがだな、俺は魔法で即乾燥させる事が出来るから万が一川に落ちても大丈夫だが?」


「守長‥‥ 頼むから‥‥ 本当に頼むから橋を渡って行こう‥‥ 本当に勘弁してくれ‥‥」


「分かったよ、てかその顔は止めてくれ、何か俺が極悪人みたいに思われるじゃないか」


泣きそうな顔して懇願されたら端から見た場合、

俺が年寄りをいじめてるみたいに見えるだろ。


ちょっとした幼心が疼いただけなのに‥‥



橋を渡りフィグ村に入ると畑の世話をしている奴等が居た。


だが数は少ない、飯を食い終わり一休みして居る奴が多いんだろうな。


「じい様、到着が少し早かったかな? 畑の世話してる人数を見る限りまだ飯を食ってるかも知れないな、それか一休み中かな?」


「いや、ちょうどエエ時間と思う、一休み中なら問題無いと思うが」


まぁ問題は無いなら良いだろう、てか俺とじい様を見てくる奴が多いな、まぁ村の奴等は皆顔見知りだ、見知らぬ奴が村に居たら目立つ。


とは言え視線に険しさは無い、俺は何度か来てるし、じい様も何度もこの村には来てるからな、

隣村の者なら顔位は見た事がある奴も居るだろう。


見られてはいるがどちらかと言うと興味津々って視線だなこれは。


村長の家に着くと村長は家の前の椅子に座り雑談をして居た、俺を見ると少し驚いていたが直ぐに立ち上がり挨拶をしてきた。


「これはこれはハルータ灯台の守長さん、その格好を見るに買い出しですかな?」


「あー それはついで、買い物は帰りにする、ちょっと村長に話があって来たんだ」


「? そうですか、さぁさぁなら中で伺いましょう」



フィグ村の村長宅は綺麗だった、二年前に新しく建て直したから新築と言っても良い。


まだ新築の家の匂いが残っている。


「どうぞお掛け下さい、マリアお二人にお茶をお出ししてくれ、それでお話があるとの事ですが?」


「ああ実はな・・・・・・・・」


~~~


「なる程 なる程、お話は分かりました、皆に話をして希望者を募りましょう」


「ああ頼むよ、助かる」


よしよし、こんで人手確保っと。


「それと守長さん、一人銀貨一枚を手間賃として払う、十人なら銀貨が計十枚になりますね?」


「ん? そうだな、足りないかな?」


「いえいえいえとんでもない、十分、いえ、十分過ぎます、実は今伺った件で私からもお話があります」


ん? どう言う事だ? 仕事内容と日当に納得が行ったのなら話は終わりじゃ無いのか?


「と言うと?」


「ええ、村から十人の女衆を出す、と言う事はフィグ村に銀貨十枚出すとも言えます、ならば村から二十人出しますので一人につき大銅貨五枚払っても守長さんは銀貨十枚出すのは変わらないですよね?」


「いやまぁそりゃそうだが貰える手間賃も半分になるって事だが? 俺としては払う額は変わらんが、手伝いに来る女衆の実入りがその分減るって事になるが?」


「あー、それは問題ありません、確かに銀貨一枚は大金ですが大銅貨五枚でも十分大金です」


「まぁそうかも知れないがな、俺としてはちゃんとやってくれるのならそれこそ猫が来ても大丈夫だと思ってるから良いんだが」


「残念ながら流石に手伝い出来る猫は村に居ませんので希望に沿えません、なので村から若い娘を十人を手伝いに送る事にします、勿論もう十人はある程度歳を重ねて手慣れてる女衆を送ります」


若い娘? 何でだ? いやまぁきっちりやってくれるならババアだろうがガキだろうが良いが何で若い娘なんだ?


「あー 守長」


「どうしたじい様?」


何でクラインのじい様が少し困った様な顔してんだ?


「その何だ、差し出がましいがな良いかな?」


「ああ良いぞ、どうした改まって」


「うん、その~ 村長はなうちの村に顔見せで若い娘を送りたいって言ってるんだと思うんじゃな」


フィグ村の村長が頷いている。


顔見せで? どう言う事だ?


「おいじい様、変な気い使うな、今更だろ?

てか分からん、分かるなら教えてくれ」


「うん、見合いと言ったら大袈裟じゃがな、うちの村にはこんな若い娘が、嫁入り前の娘がおるとなハルータ村の若い男衆とその家族、それに村のモンに顔見せをしたいって事じゃな」


「あー その顔見せか、なる程な適齢期の女の御披露目って事か、で、良い娘が居たら婚姻をと言う訳か」


俺の言葉に二人が頷いて居る、じい様が差し出がましい何てわざわざ言ったのは俺に気を使ったか。


てかそんな事でプライドを傷つけられた何て思わないんだがなぁ‥‥


まぁフィグ村の村長が居るから体裁を気にしたのかな?


確かにじい様とは気安い関係だがじい様はその辺りの線引きはきっちりしてるからなぁ。


思慮深いとも言うな。


「ついでと言っては何ですが、そろそろ顔見せをと思っておりましたので私にとっても渡りに船ではありました」


「なる程なぁ、顔見せか、確かにハルータ村にもフィグ村から嫁いで来た奴も居るし、逆にハルータからフィグ村に嫁いで行った奴も居るか、血の流動って意味もあるか」


「血の流動ですか?」


フィグ村の村長が不思議そうな顔をして居る、

血の流動ってより遺伝子の流動が正しいんだが言っても通じないと思って血のと言い換えたんだが‥‥


「同じ村の中だけで婚姻を重ねると血が濃くなるからな、他所からの血を入れて薄めるって事だよ、言い方が悪いかな? まぁ村に新しい血を入れると言う事だな」


「なる程、確かにそうですね、新たな血を入れる為にも顔見せはしたいのですが宜しいでしょうか?」


「構わんよ、俺はさっきも言ったがきっちり仕事をこなしてくれるなら猫でも良いんだ、なら若い娘が来ても良いさ、但し仕事はきっちりしてってのが大前提だがな」


「勿論です、顔見せに行くのにそんな娘を送ったらフィグ村の評判にも関わります、それに今後のハルータ村との事を、関係を考えると躾の悪い娘は出せません」


まぁそりゃそうか、来る娘達も出来の悪いのは居ないだろう、希望者の中でも厳選と言えば大袈裟だがある程度は基準を設けて基準に達しない娘はハネられるだろうな。


なら仕事はきっちり出来る人間が来るだろう、

それなら俺は何も文句は無いな。


もう少し話を詰めておいた方が良いかな?




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