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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
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第115話 揚げ芋


執務室の中は現在平均年齢の高い場所となって居る


執務室には六人の男達が居る


俺を除く五人は年寄りだ


まぁ灯台守のじい様達なんだがな。


「と言う訳で今年の祭りの灯台分の提供物は揚げ芋と揚げ甘芋にする」


「いやそれはエエけど皮剥くのがしんどいぞ守長、ワシら以外の他の奴等も準備があるからワシらだけでとなるとなぁ‥‥」


「守長、ザッカリーの言う通りちと大変過ぎんかな? 慣れとらんから余計手間暇掛かる」


まぁ分かってんだよそんなのは、てか俺達だけでやるから大変なんだ、なら人手があれば良い。


とは言えじい様達が言う様にハルータの村民は皆、

祭りの準備に忙しい。


前日どころか当日もだ、なら外部から呼べば良い。


「うん、ハルータの村民は忙しいな、なら他所から呼べば良いだろ?」


「何処から呼ぶんじゃな守長?」


ザッカリーのじい様が不思議そうな顔をして居る、

てかハルータ村は辺境の奥の奥にあるわけじゃ無いし、絶海の孤島にある訳じゃ無いのに‥‥


「じい様、フィグ村から呼べば良いだろ? 日当を出せば幾らでも来るさ、まぁ本来はハルータの村民に日当を出してやって貰うのが良いんだがそのハルータ村の祭りで人手が割けないからな、なら隣村のフィグ村から呼ぶ、日当に銀貨一枚も出せば喜んで来るだろうさ」


「守長、何時も言ってるが出し過ぎじゃて」


「良いんだよ、てか俺は一応は特級官吏だぞ、確かに帝都に居た時に比べたら給金は大分減ったがそれでもじい様達が聞いたらビックリして心臓が止まる位は貰ってるんだ、

大体だな、こんな時はケチってると俺の評判に関わる、官吏ってのはな多少なりとも、いや、思いっきり面子商売なんだ、

特級官吏がケチ何て言われてみろ、恥掻くだけで無く今後俺がやりにくくなるんだ、だから良いんだよ」


「まぁそうかも知れんがなぁ‥‥」


そうかもじゃ無くてそうなんだよ、

それに持ってる奴は周りに還元する、

そうやって金を回して行くもんなんだ、

金は天下の回りものってのは良く言ったもんだよ。


締まり屋って言われたとして、無駄に金を使わないって言われるのは良いがケチって言われたら駄目だ。


同じ様に金に汚いでも、集めた金を周りに上手い事回すのは良い、だが独占し、人から(たか)る事しか考えない奴なんてもっての他だしな。


「俺にも立場ってのがある、前にも何度か皆に言ったが、形式を整えるってのは大事だし、

それ以上に体裁を整えるのはとても大事なんだ、

時にはそれが無駄だと分かって居てもやらなければならない、体裁ってのはなある意味鎧みたいなもんだし、自分の身を守る為の防具だ、

戦場に丸腰で行かないだろ?

大体だな、高給取りの特級官吏がケチだなんて夢が無いじゃ無いか、そんなんじゃ誰も官吏に何てなりたがら無いだろ?

それに俺は帝国全土で二百人も居ない内の一人だ、

そんな奴がしぶちん(・・・・)何て言われてみろ、他の官吏に笑われてしまうじゃないか」


「まぁ言いたい事は分かるがの、守長の金じゃ、ワシらがどうこう言うべきでは無い、ただのう‥‥ 多過ぎるのも事実ではあるから一応は心に留めておいてくれ」


じい様達は心配して言ってくれてるのが分かるから俺に含む所は無い、確かに金払いが良く、持ってると思われたらアホが寄って来る。


まぁその辺りは俺が自分で対処するから問題無い、

しかし銀貨一枚がこの辺りであれば大金って感覚なのは経済力の違いによる認識の差なんだろうな。


帝都やバハラならデカイ金額ではあるが大金と迄は言わない、だがこの村や隣村であれば大金と認識されてる。


バハラに近いこの村でその様な認識と言うのも面白い物だ、バハラから南はあの山々で遮られて居るから、バハラに近いはずなのに微妙に移動距離と言うか到着するまで移動時間が掛かる。


この村や隣のフィグ村にとってバハラは近くて遠い都って認識なんだよな。


「分かったよ、心に留めておこう」


「そんで守長どの位の人数を手助けに呼ぶつもりかな?」


「十人呼ぶ予定だ」


「結構多いな‥‥」


まぁ下拵えする量もかなりの物になるし、

芋を揚げるのにも人手は取られるからな。


下手しなくても祭りの最中、皮剥きする奴と揚げる奴と別れて、一日中やらなきゃならないかも知れないんだ、その位はいるだろう。


揚げ芋は皆好きだからな、前もって下準備してても供給が追い付かない可能性も高い。


何事も余裕をもってやらなきゃな。


「量がかなりの物になるんだ、全部剥くとなったらその位の人数はいるよ」


「ん? ちょっと待ってくれ守長、まさかと思うが芋の皮は全部剥いて揚げるつもりか?」


アレクサンドルのじい様が目をひん剥いて驚いて居るが何でだ?


「どうした? そんな驚く事か?」


「いやいやいや、守長それはおかしい、芋の皮は付いたまま揚げにゃ美味く無いじゃろ、皮なんか旨味の塊じゃぞ、皮剥いたら旨味を捨てる様なもんじゃ無いか」


「あんなじい様、皮付きはちょっと食べる分には良いがな、基本的に皮付きは食感が悪くなる、皮無しの方が絶対美味い、皮付きを否定はしないが噛みごたえと舌触り、食感てのはとても大事だぞ」


「何を何を、皮無しは物足りんよ、それに皮の部分や近くに旨味が詰まっとるのにそこを捨てるなんてとんでもない! 芋に対する冒涜っちゅーやつじゃな」


「皮は家畜に食わせるし、肥料にもするから無駄に捨てる事はしないさ」


てかアレクサンドルのじい様、言葉遣いが普段と違うな地の言葉が出てるぞ、何がこのじい様をそこまで駆り立てる?


「守長‥‥ それはいかん、家畜に食わしてやるなんて勿体なさ過ぎる‥‥」


「俺は皮無しが好きなんだよ、てか皮無しと皮付きを半分づつにしたら良いだろ?」


「しかし守長、皮が勿体ないじゃ無いか」


うっせーな、何でそんなに皮が好きなんだよ‥‥


てか皮付きはマジで食感が悪いからあんま好きじゃ無いんだよ、ちょこっと食う分には良いが大量に食うのには向かない、この辺りは好みの問題があるから仕方無いがな。


「なら皮を綺麗に洗った上で、まぁ俺が清浄魔法で綺麗にした上でだが、芋の皮も揚げたら良いだろ?」


「まぁそれなら良いと思う」


いや、良いんかい! マジかよ‥‥


どんだけじゃがいもの皮が好きなんだよ、

ここまで来たらいっそ見事ではあるな。


まぁ良いだろう、皮付きは半分だ、取り敢えず皮、いや、じゃがいもにはクリーンを掛け倒そう。


「あー 守長?」


「ん、何だねアイザック君」


「君て‥‥ まぁええけど、いやな、祭りで揚げ芋を出すにしても村から買うとは思うがこの村の分だけで足りんのでは?」


「あー それは大丈夫、人手を借りにフィグ村に行く時についでに買い付けるから、そんでも足りなきゃ行商人にも注文するから大丈夫だ、ついでに行商人には揚げ油も注文しなきゃな」


「あー なる程な、まぁ隣村から買い付ければいけるか、だが油は間に合うかな?」


「それなら知り合いの商家に頼むから大丈夫だ、村の奴がバハラの魚市場に行くだろ? 誰かしらは行くし、毎日誰かは行くんだ、ついでに手紙を持って行って貰って届けて貰うから大丈夫だな、てか知り合いの商家に頼むのが一番早いし確実だな、若い衆に手紙だけ届けさすのもありだな」


「又金掛かるぞ守長‥‥ 油だけでも大量になるからえげつない金額になりそうじゃな‥‥」


まぁ確かにそうだな食用油は良い値段するからな、

村の祭りで村民に振る舞うとなれば油も大量に使用する事になるし、芋類も大量に必要だ、

だが年一回の祭りなんだ、その位の贅沢は許される、それに特級官吏がどの様な者か皆にわからせる、再確認させる場でもあるんだ、

今まで居た下級官吏との違いを知らしめると言う意味もあるし、先程の話では無いが体裁ってのもあるからな、特級官吏ともあろう者がショボい事は出来ない。


それに祭りには灯台の清掃も含まれているんだ、

村の皆にお礼の意味も込めて食い物を提供、

まぁ振る舞うって意味もある。


揚げ芋は油の価格の問題からこの辺ではそんなにしょっちゅう食える物では無いし、ちょっとした贅沢品扱いだからな、皆も喜んでくれるだろう。


しかし揚げ芋ねえ、帝都やバハラならちょっと高いかなって程度なんだがこの村では贅沢品、まぁ晴れの日のご馳走とは言わんが、ちょっとしたご馳走扱いなんだよなぁ。


前世では安く、何時でも何処にでもあるし食える物だったから感覚的には変ではあるな。


フライドポテトってファーストフードの代表の一つだったから尚更だな。


「守長、何時フィグ村に行くつもりだね?」


「明日行くつもりだよ、何だ、じい様も行きたいのか?」


俺の軽口にクラインのじい様が笑う、

仕方無い奴だと思って居るのかも知れないな。


「いやな、一人で行っても話がすんなり行かんかも知れないから誰か付いて行った方が良いかと思うてな」


「そうか? 一応隣村の村長とも去年顔合わせはしてるから大丈夫だろ?」


「まぁそうだが守長はフィグ村の事は詳しくは無いじゃろ? 知っとるモンが付いて行った方がエエ思ってな、何かあった時便利だし」


そうか? まぁ一人で行くより退屈はしないだろうがそんなもんかな? フィグ村の村長は俺が去年顔合わせした時は普通の、まともそうに見えたしそれからも何回か対応したが特に問題は無さそうだったんだが、フィグ村の奴等もおかしな奴は居なかったんだがな?


それにフィグ村にも買い出しで何回か行ってるし道も分からない事は無い、まぁ行き帰りで話し相手が居るのは退屈しなくても良いがな、だが‥‥


「とは言えじい様達は仕事だろ? まぁ一応は俺もそうだが俺は仕事を終わらせて行くから問題は無いが‥‥」


「ああ、ならワシが付いて行く、明日は休みだしな」


「えっ? いやいやじい様は明日一日丸々休みの日だろ? 夜番明けの明け休みじゃ無く、完全休暇の日じゃないか」


「ええよ、気晴らしがてら付いて行く、まぁ一人で行くより二人で行った方がエエ、守長が知らん事も教えれるからの」


クラインのじい様休みの日なのに‥‥


これ遠慮しても付いて来るって言うんだろうな、

まぁ俺は退屈しなくて良いが‥‥


「休みの日なのに‥‥ 良いのか?」


「エエよエエよ 気晴らしがてら付いて行くだけじゃて、気にせんでエエ」


「・・・」


まあ本人が良いと言うなら良いか、

明日はフィグ村にクラインのじい様とお出かけだ、

何か保護者同伴みたいだな、まぁ良いんだけどな。


てかそんなに心配なのかな俺の事?


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