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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
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第113話 朝チュンから始まるとある一日


チュンチュンチュンチュン


雀が鳴いている 朝チュンである


(まご)う事無き朝チュンである


右手肘から上腕、二の腕と言われる部分に温もりを感じる。


季節替わりの境目、夏がまだまだ色濃く残るこの時期は温もりよりも暑さを感じる。


「・・・」


おいおいおい‥‥ マジかよ‥‥


何でだ? どうしてこうなった、

いや、どうしてこうなってる?


多分だが何時もより起床が遅れて居る。


あくまで感覚的なものだが、お日様は何時もより高い位置にあると思う。


俺の腕の中にコイツが居なければもう少し惰眠を貪って居た事だろう。


てか何でコイツはここに居るんだ?


何時の間に? どうやって? 何故?


「おい、お前何でここに居るんだ? どうやって入って来たんだハンナ?」


「ニャァ」


ニャァじゃねーよ、軽返事してんじゃねーよ、

てかマジでどうやって入って来たんだコイツ?


つーか夏毛だからまだマシなのかも知れないが、

割と暑いし熱い、ハンナの体温でぬくぬくだよ。


てか一瞬間違いを犯してしまったかと思っただろ、

えっ? でもコイツどうやって部屋に入ってきたんだ?

俺ドア閉めてから寝たよな? ん?‥‥


そういや夜中にトイレで一回部屋から出たな‥‥


昨日の夜 何時もより飲んだからそれでか‥‥


普段なら朝までグッスリなんだがな、

酒を少し飲み過ぎたとは言え夜中に起きる事も無く、トイレに立つ事も無く今までは朝まで熟睡してたんだが俺も歳取ったって事か?


やだなぁ‥‥


こんなんで歳を感じる事になるなんて‥‥


「おいハンナ」「ニャ」 だからニャじゃねーよ、

さっきより更に軽返事してんじゃねーよ。


コイツあれか、トイレに行く時に部屋のドアを開けっ放しにしてて、その隙に部屋に入り込んだな。


「おいハンナ向こうに行くぞ」


「ニャア~」


取り敢えず着替えてコーヒーでも飲むか。



~~~


灯台の篝火の所に行くとクラインのじい様が後かたずけをして居た、夜番明けで今は酒の事でも考えて居るのかも知れない。


「じい様、特に変わり無かったか?」


「おお守長、変わらずだな、普段通りだったよ」


まぁしょっちゅう事が起きる訳無いし、起きたら困る。


しかし手際が良いな、しかも夜勤、夜番明けなのにキビキビ動いて居る。


「じい様、今日の晩なキッシュが食いたい、マリラ婆さんに作って貰いたいんだ、大丈夫か?」


「ああええよ、婆さんには言っとく」


ん、よしよし、今日の晩飯確保っと。


じい様の嫁のマリラ婆さんが作るキッシュは絶品だからな、晩が楽しみだ。


しかしキッシュはおフランス料理だがこの世界でもあったのは有難い、前世から大好きだったからな。


マリラ婆さんの作るキッシュは出来立ても美味いが冷めても美味い。


他人に言わせればキッシュ何てのは出来立てだろうが暫く置いて冷めてようがあんまり関係ない、そんなもんだって言うが俺に言わせれば冷めたらイマイチなのが多い。


だがなぁ、マリラ婆さんのは冷めても美味い、

本当に食い飽きない味だ。


出来立てはパイ生地がさっくりとして歯応えが大変素晴らしい。


冷めてもしっとり感と舌に絡み付く風味と、

噛む度に生地と具材の旨味が溢れてくる。


『ほら、キッシュ作って来たぞ、冷めても美味しいけど今はまだ温かいし、今は生地もパリっとしてるから歯応えが良いと思う、ありがたく食べるんだぞ』


「・・・」



「守長どうした?」


「ああ何でもない、そうだ金を先に払っとく、後は穴空きとベーコンと飴玉も渡すから下に降りてきたら声掛けてくれ」


「いやだから守長、何時も言っとるが多過ぎるんだ、なぁ銀貨一枚は多過ぎじゃて」


「良いんだよ、てか一つじゃ無く二つ作って貰うし、作るのも手間が掛かる、念じれば出来上がる訳じゃ無い、それに薪だってタダじゃ無いんだ」


「いや‥‥ 毎回言うとるがそれでも多過ぎじゃて、それに穴空きもベーコンも持たしてくれて作るんだから多過ぎじゃて‥‥」


うっせーな、クラインのじい様と毎回このやり取りしてるよな?


まぁ銀貨一枚あれば帝都でもバハラでもカツカツではあれ四人家族が一日暮らしていける金額だ、

言ってる意味は分かるが俺に言わせればたった銀貨一枚だ、てかもっと払っても良いと思える価値も美味さ、いや、旨さがある。


穴空き‥‥ チーズとベーコンも渡した上、銀貨一枚はかなり多いと言うのも分かるが具材はたっぷり入っているのが好きなんだ。


まぁ余る位渡して居るが、じい様の家で作る分に入れれば良いだけの話だからな。


飴玉は婆さんにや孫達に渡せば良い。


飴玉は皆好きだからな、だが値段も高いからしょっちゅう買える物では無いからお礼に渡せば喜ばれる。


その事をじい様に伝え、何とか納得させた。


これも毎度毎度のやり取りだ、てか遠慮し過ぎ何だよなぁ、俺が作って貰うんだから対価として当たり前に渡してるだけなのにな。


「分かったありがたく頂く、晩に持って来るから」


「いや、取りに行く、気分転換に村まで行くわ」


どうせヒマなんだ良い気分転換になる、仕事もどうせ一瞬で終わるし、後は畑と鶏、蜂の世話したら釣りする位だからな。


少し早めに行ってブラブラするか、

散歩がてらその辺を見て回れば良い。


本当に良いご身分だよな俺って。


とは言えだ、時々俺は永遠にとは言わんが、死ぬ迄この村に居る事になるんじゃ無いかと思う時がある。


俺はこの村が気に入っては居るが死ぬ迄となったら流石になぁ‥‥


時々だが、官吏を辞めて旅にでも出るか何てお馬鹿な事を考えてしまう。


薄っぺらい奴が自分探しの旅に出るみたいだな。


まぁそれは置いといて、折角異世界に転生したんだ

色々見て周りたいってのはある。


魔族の国チェリッシュに一度行ってみたいな‥‥


元々魔族の国には興味があった、だがクランツじいさんの話を聞いて更に興味が湧いた。


かなり広い国だから一回りするだけでも数年は掛かるだろうな、まぁそう考えれば難しいだろう。


俺も歳が歳だ、流石にそんなガキみたいな事は実際やるのは難しい。


この歳で結婚もせずそんな好き勝手にブラブラしてたらそれだけで異端扱いだ。


時代が進めばそんな事も無いのだろうが今の社会の空気では変わり者、それも飛びっきりの変わり者扱いだな。



~~~


何時も通りヒマ潰しをして夕方まで時間を潰し、

そろそろキッシュを取りに行くかと思って居たそんな時だった、ジゼルが訪ねて来たのは。


「どうしたジゼル?」


「あの~ 本を返しに来ました、それと新しい本を貸して欲しいんですけど‥‥」


「えっ? もう読んだのか?」


「はい、面白くてつい夢中で読んじゃいました」


マジか? バラス高原会戦記始末の中刊もう読んだのか?


はえーな‥‥

アレ結構分厚く、当然ページ数も多いんだがな。


ちゃんと寝てんのか?


ジゼルに聞くと毎日早く寝ろと怒られながら読んだらしい、本は逃げないんだから、そう思ったがジゼルからしたら面白過ぎてつい読み過ぎたって事なんだろう。


ついでだからジゼルと村まで一緒に行く事にした。


村までの道中ジゼルは楽しそうに本の内容を語っていた、心から楽しそうに、嬉しそうに。


普段は控えめで口数が多いとは言い難いが、

本の話をする時はアンナより饒舌になる。


しかも話が結構面白い、まるで講談師みたいだ。


これで食っていけるのではないかと思える程だ、

まぁ性格的にジゼルには難しいかな?


控えめで大人しいし、照れ屋だからな。


しかし毎度思うが自転車が欲しいな、

微妙に村まで遠いんだよなぁ‥‥


てか馬買うか?


とは言え馬で村まで行くのは、それはそれで大袈裟なんだよなぁ。


俺は馬に乗れるし、居たら便利ではあるけど村に行く為だけに買うのもちょっと違うと思う。


まぁ隣村のフィグ村に行くのはかなり便利にはなるが、うーん‥‥ 要検討だな。


馬自体は前世で乗れてた、まぁ理由としては武人たる者、馬に乗れずどうするって言う意味の分からない理由からだ。


この世界では馬に乗ると言うのは上流階級の嗜みと言う理由から乗馬は子供の頃に教えられた。


商人等はそれに加えて乗馬は商売人に必要なスキルであると言う現実的な理由からだ。


まぁ今は馬に乗って商売に出掛ける事は都心部等では特に必要な能力では無い為、習慣として残っているだけの話で、必要スキルから嗜みに変わったらしい。


それはあくまで商人の場合であって、貴族は領内の見廻り、移動の為に必要だからと言う現実的な理由からだ。


まぁ貴族にとっても現実的な理由とは別に、

昔から当然の嗜みと言う意識があるらしい。


学園でも乗馬の授業があり、乗馬出来るかどうかは上流階級とそれ以外の階級を分ける一つの目安になっている。


「あれ?」


「どうしたジゼル?」


うーん、いつの間にか村の中心部に到着してたな。


「何かあっちの方に皆が集まって騒いで居るみたいです」


「あー 子供達が集まってるな、遊んで居るのとはちょっと違うな、ケンカでもして居るのか?」


周りの大人達は余り気にして居ない。


村では子供のケンカに大人は口を出さないというのが不文律となっている。


余程酷い場合は別だが基本的には口も手も出さない、子供とはその様な事を経験して成長して行く物だと皆思って居るからだ。


「凄い怒ってますね、何があったんだろう?」


「怒ってるのは女の子達だな、アンナが又暴れてるのかと思ったが違うな」


「・・・」


うん、ジゼルが凄い困った様な何とも言えない微妙な顔してる。


心の中で妹がすいませんとでも思って居るのかも知れないな。


「まぁ何だ、取り敢えず行ってみるか」


「はい‥‥」


ジゼルよ、アンナが暴れ回って居るのは奴のせいであって姉であるジゼルには罪は無いからな。


だからそんな申し訳無さそうな顔するなよ。


さてさて、何があったのかな?





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