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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第2章 バハラと追憶と彼方
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第107話 慣れと叡智


「うーん‥‥ 無いな」


「全然無いね、もう三つ目の場所なのに、ねえ守長本当に去年ここにあったの?」


「うん今まで行った三ヶ所は去年あったんだけどな、ここは去年採りきれない程生えてたんだが‥‥」


てか去年アホ程ここで採った、それこそ四回ここで採れた位だ、おかしいな?


「もう少し上に登るか、ジゼルもう少し上に行くが大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


ジゼルも文学少女であるが普段から歩いてるし、家の手伝いや何やかんやで身体を動かしてるんだ、体力が全く無いと言う訳では無い。


あくまで他の子供に比べれば体力が無いだけで、

都会の子に比べれば十分以上に体力はある。


比較対象が体力が異常にあるこの村の子だからな、

帝国の平均的な子供と比較した場合、

ジゼルもかなり体力はある子だ。


この村の子供達が体力があり過ぎるだけであって、それと比較されてもって話なんだよな。


うーん、まぁまぁ上に来たな景色が良い、

村が見渡せる、てかフィグ村まで見渡せる。


「守長、守長はバハラの大灯台でも働いていたんですよね、大灯台の上の篝火部屋とここではどっちが高いんですか?」


「あー‥‥ 今ここで百‥‥ 百二十メートル位か、ならまだ大灯台の篝火のとこが高いな、あそこは地上から百五十メートルの位置にあるからな」


「この位置よりまだ高いんですね‥‥ そこまで上がるの大変そう」


「確かにな、まぁ昇降機はあるが基本的に自分の足で上がらなきゃならないからな、

上部に上げる荷物が多い時は昇降機で上げるが、人は基本的に自分の足で上がらないといけないから大変だな、

それと荷物が少なかったりしたらそれも持って上がらないといけないし結構体力は使うな」


「確か荷物を上に運ぶ仕事のみをしてる人もいるんですよね?」


「居るな、俺達がポーターって言ってる奴等だ、あいつら何十キロもの荷物を毎日何往復もしてる荷物運び専業、専門職の職員だな」


「毎日ですよね? 凄いなぁ‥‥」


うん、確かにあいつらは凄い、体力お化けだ、

その分お給料も良いし福利厚生も充実してる、

一応は大灯台、行政府の職員扱いだからな。


とは言え非正規職員である、

だが福利厚生も給料も待遇を含め厚待遇だ。


これが正規職員なら給料、福利厚生も含めて更に厚待遇になる。


正規職員となるとやることは多い。


大灯台は昇り降りだけでも大変だからな、

正規、非正規共に厚待遇で好待遇になるのは当たり前だ。


手当ての一例として大灯台には昇降手当てと言うのもある。


文字通り昇り降りする職員に付く手当で、

これが割と馬鹿に出来ない額になる。


上級職員からしたら大した事無い額ではある、

しかし下級職員からしたら昇降手当は大きい。


手当は様々あるが、大灯台の手当と言えば昇降手当だろう。


とは言え上級職員は昇降機を使って昇り降りしてるんだがな、それでも手当は付く。


不公平かも知れないが帝国は階級社会だし、

上級と下級の間には埋められない差がある。


会社に例えるなら上級職員は役員、下級職員は平だ。


俺は赴任した時から上級職員であったが昇降機を使ったのは最初の一回と、後は数える位しか使って無い。


別に現場の人間と苦労を共に何て思ってた訳では無い、ただ単に身体を鍛える為に昇降機を使わなかっただけの話だ。


緊急時や必要と思われる時は躊躇い無く使った。


それでも数える位しか使わなかった。


大灯台の昇り降りは良い運動になったもんだ、

職員達は細身の奴でも下半身は筋肉でゴッイ足の奴も多かったが、まるで競輪選手の様な足をしてる奴ばかりだった。


「ジゼルは大灯台の上に行ってみたいのか?」


「あー そうですね、一回は行ってみたいですね」


「一般の人間でも行けるが抽選倍率はかなり高いからなぁ、一年に一回、それもバハラ在住の帝国民、もしくはバハラ近郊の住民、それも帝国民だけしか抽選に参加出来ないのにあの確率だ」


「抽選倍率が高いと言う事は当選確率が低いと言う事ですよね? でも行ってみたいな‥‥ 多分当選しないでしょうけど」


「バハラの住民でも毎年応募してるのに死ぬまでに一度も当選しない奴なんて珍しくも無いからな、大灯台の篝火から見る景色はバハラの、いや違うな、この帝国の民の憧れだ、死ぬまでに一度は見たいって誰もが夢見願う」


「そうですよね、バハラに魚を売りに行く時に手伝いで付いて行く事がありますが、大灯台は外からみても立派ですが、上から見る景色はどんなに素敵だろうって何時も想像して居ます」


素敵か、素晴らしいとは思うが素敵とは感じない、

そう思うのは感性の差なんだろう。


素敵か、良いな‥‥


大灯台で働いてる奴等は見慣れてそんな事思う奴なんて誰もいない。


最初は皆感動する、

だがその内に慣れて何も感じなくなる。


寧ろ悪態を吐く様になって行く。


篝火の所から見る景色は感動より寧ろ入り込む風の冷たさに忌々しさを感じる様になる。


大灯台に昇る階段にすら感動してたら奴等はその長さと段数の多さに忌々しさと、この世の無常さを嘆き悲しむ事となる。


帝国の全ての民が憧れその生涯に於いて一度訪れたいと思う大灯台は、行きたくない場所No.1となり。


バハラの、帝国の誇りである大灯台の崩壊を朝、起き抜けに女神に祈る様になって行く。


慣れとは斯くも恐ろしいものである。


前世に於いて朝、起き抜けに会社が潰れないかなと思うのに似ているのかも知れない。


学生であるならば学校が消えてくれてたらと、

妄想すると言えば良いのだろうか?


世界が変わろうとある意味変わらぬ、

これは一つの真理なのかも知れないな。


「バハラかぁ‥‥ 私は魚市場と青空市の魚を直売する所にしか行った事が無いから‥‥ こんなに近くに住んで居るのに変ですよね」


「俺は帝都生まれの帝都育ちだが帝都でも行った事が無い場所なんて幾らでもあるぞ、そこに住んでるからと言っても案外そんなもんだよ、てかジゼルはバハラで大灯台以外で行きたい場所があるのか?」


「その‥‥ バハラの図書館に行きたいです‥‥」


あー ジゼルらしいな、バハラの図書館は帝国一と言われている、だがそれはバハラの人間が言っているだけだ。


帝都の人間は帝都の図書館が帝国一だと言っている。


俺に言わせればどちらも甲乙付け難い、

両方見た俺に言わせると帝都の図書館が僅差で上に思えるが、それは俺が帝都生まれだからだろう。


地元愛とまで言わないが地元贔屓になって居るのかも知れない。


第三者の公平な判断に依るとどちらも同じ位で、

同率一位らしい。


だが帝都の住人もバハラの住人もそれでは納得しないだろう。


何せ帝国一 と言う事は大陸一と言う事だからだ。


帝都とバハラは何かしら張り合って居る。


どちらも面子に掛けて譲らないだろう。


それに帝都は誰もが認める帝国一の都だ、

それに関してはバハラの住民も渋々ながら認めて居る。


であればこそ図書館に関しては決して認めないだろう、帝都の図書館が一番とは決してバハラの住人は認め無い。


間違い無くバハラの図書館が一番だと必ず言う。


金貨百枚賭けても良いと即決出来る。


バハラの図書館なぁ、確かにあそこはこの世界では規模の大きな図書館だ、だが前世の大きな図書館に比べると一回りは小さい。


比べる事自体おかしいんだが、それでもバハラの図書館は大きい、蔵書の数も膨大だ。


この世界のありとあらゆる叡智が収まっている、

古今東西あらゆる本がある。


今は無き滅びた国の本も多数あり、帝都とバハラの図書館自体がある意味この世界の人類の歴史そのものだ、人類の歩みと言っても良い。


本好きのジゼルが行ってみたいと思うのも当然だな。


だがなぁ‥‥


「ジゼル、あそこは入館するのに銀貨一枚を保証金として預けなければならない、知ってると思うがな、それと入館するには審査がある、正確に言うなら入館許可証を発行して貰わなければならないし、審査はかなり厳しいぞ、帝国の民であれば外国人に比べまだ緩いがあくまで外国人に比べればだ」


「はい、保証金は何事も無ければ返して貰えるんですよね? それと審査は‥‥ 私じゃ時間が掛かりますね」


「そうだな‥‥ 時間は掛かるな、一般人は時間が掛かるし 審査も厳しい、学園の生徒であれば学園で審査されるし普通に学生生活を送って居れば直ぐに入館許可証は手に入るが‥‥

後は俺みたいに官吏になるかだな、下級官吏ですら官吏であるそれ自体が入館許可証となる」


「そうですよね‥‥ 学園に入学して学園生になるのが手っ取り早いですよね」


「ジゼル位の歳ならそうだな、手続きも審査も時間掛かるし何度もバハラの行政府に行かないといけないからな、それなら学園に入学出来るのであればそっちの方が早かったりするな」


「守長は官吏だし、それも特級官吏だから入館もそうですけど一般の人が入れない場所にも入れるんですよね? それに閲覧にも一切制限が無いので禁書や何かも閲覧出来るんですよね?」


「まぁそうだな、特級官吏は色々特権があるが、今ジゼルが言った事もその特権の一つだ」


本当、特級官吏は特権や権限が山盛りだよ、

制限がほとんど無いからな、出来無い事の方が少ない。


まぁとは言え簡単になれるもんじゃ無いがな。


ジゼルがこんな話をしているのは学園に行きたいからだろう。


学園に行きたい理由の一つがバハラの図書館に行きたいと言うのもあるんだろうな。


学園生であれば素行不良で無い限り、普通に学園生として学生生活をしていたら簡単に許可証は手に入る、しかも保証金も大銅貨一枚だし、

特待生ならば保証金は0だ、ある意味学園生の特権と言える。


ん?


「もう‥‥ お姉ちゃんとばっかり喋って‥‥」


「何言ってんだよアンナとも喋ってるだろ」


「・・・」


「アンナ最初に言った事を忘れたのか?」


「さあ次行ってみよう! 次はあるとイイね」


コイツ変わり身早いな‥‥ まぁ良いけどな。


次こそはあると良いな・・・


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