第102話 異世界とマヨネーズ
白く純潔の象徴の様な 処女の守護神がの如く
見る角度によりうっすらと桃色にも見えなくも無い
天上の輝きが俺の手の上にある。
真珠を人魚の涙に例えるが、正に言い得て妙だ。
本当に美しいな‥‥
照り 輝き 巻き厚 全てが素晴らしい、
そしてこの大きさである。
形の美しさも、その奇跡の様な真円
まぁほぼ真円なのだが、ため息しか出ない美しさだ
とは言え何時までも見て居られないな‥‥
厳重に保管しておかねばならない、
うん、触れたからもう一度拭くか。
慎重に、細心の注意を持ってクリーンを掛ける。
本当にコレの取り扱いは注意しなければならない。
そう、如何なる意味でもだ。
取り敢えず実家には手紙を書いた、ついでにアコヤ貝、真珠貝の貝殻も一枚送らなければ。
もう一枚はポートマン家、いや、マデリン嬢個人に贈るか?
誤解されるかな?
あれだけの大きさの貝殻だ、かなりの価値がある。
何せ貝殻の内側も真珠層により、
至高と言って良い程美しいのだから。
当然値段もどれだけの値が付くか分からない、
一体幾らになる事やら‥‥
しかしこれ等の元のアコヤ貝の貝柱も又巨大だった、かなり食いでがあったな。
白ワインで蒸して、バターで炒めてと実に旨かった、夜番のじい様にも夜食の差し入れをしたが旨かったと言って居たな。
とは言え二人で食いきれるはずも無く、他のじい様達にも生の貝柱を切り分けお裾分けしたが皆美味かったと言って居た。
あの日獲った獲物もかなりお裾分けしたがそれでも手元には膨大と言って良い程残った。
アワビは干しアワビにしたし、岩がきも燻製にし、オイル漬けにした。
タコも燻製にしたし酢漬けして燻製にしたりした。
岩がきは本当に美味かった、いや、旨かった。
生で五つ立て続けに食ってしまった。
レモンを絞り一気に口に含み一噛みした瞬間に旨味の圧倒的暴力が口の中を蹂躙し、
思わず呆然とした程だった。
旨味、それも濃厚で濃密な只ただ純粋な旨味により脳汁が止まらなかった。
そして気が付いた時には五つ食べ終わって居た。
焼いても旨かったなぁ‥‥
特別に作らせた七輪に金網を敷いて、その上に4つ置いて焼いたが、あの長方形角形で横長の七輪の上に四つしか置けなかった。
丸型の普通サイズなら一つ置いてもはみ出る程だ、
あそこで獲れた岩がきがどれ程大きいか分かろうと言う物だよ。
焼けていく岩がきの香り‥‥
醤油を少し掛けた時のあの至高の香りは堪らなかった、気が狂いそうな位に高貴な香りだったな‥‥
今思い出してもため息しか出ない。
岩がき本来の香りもそうだが何と言うか、
海の香りがしたんだよなぁ‥‥
母なる海の香りが‥‥
酒が進んだ事 進んだ事、まぁちと飲み過ぎたな。
いかんな、起き抜けに何を考えてるんだ。
うん、それほどの美味さだった訳だが‥‥
又食いたいな、てか伊勢海老もロブスターも美味かった、非常~に美味かった。
伊勢海老だけでも色々調理したが、伊勢海老を一匹丸々海老フライにしたやつは絶品だったな。
伊勢海老を海老フライにするなんて前世じゃ考えられない贅沢だよ。
本当にけしからん、誠にけしからん食い物だ、
贅沢極まりない話だが、今はそれが出来るんだよなぁ。
伊勢海老フライにはソース、そしてマヨネーズと
タルタルソースを付けて食べたが歯応えが堪らなかった、衣のザクザク感も良かったが、伊勢海老自体の歯応えが又‥‥
旨味が一噛みで、一瞬で口の中に広がったもんなぁ、刺身も良いがやはり火を通すと旨味の広がり方が違うな、まず香りが違う、鼻から抜ける香りが段違いだ。
エールが進む事、進む事、白ワインも飲んだが白ワインと伊勢海老フライの香り混じって大変な事になった、何が大変かと言うと香りが脳を突き刺してその刺激で昇天しかけた事だ。
一瞬俺は又転生するんじゃないかと思った。
自画自賛だがタルタルソースも良かった。
決めては刻んだピクルスだな、アマンダから貰ったピクルスだったがそのまま食べても美味かったが、俺の作るタルタルソースに抜群に合った。
タルタルソースにはピクルスだが、アマンダの作ったピクルスは何であんなに美味いんだろうな?
しかしタルタルソースの元となるマヨネーズがこの世界にあったのは誤算だったな。
道場の中学生達が異世界に行ったらマヨネーズで大儲けだ何て言ってたが、あるじゃないかよ!
ちょっと興味が湧いてマヨネーズやタルタルソースの作り方を調べて、前世でも作ったりしてたが、まぁ役には立ったんだがな。
そしてマヨネーズは元からあるが一つ問題もある。
うん、元となる卵の品質だ、新鮮な卵は手に入る、卵自体は高価ではあるがこの世界の我が家は金に困っては居ない、なので買うのが困難と言う訳では無い。
前世でもそうだが日本の卵は生で食べれる程に新鮮だ、だが外国では生で食べた場合大変な事になる。
そしてこの世界の卵も生で食べたら大変な、いや、下手すりゃ命に関わる。
命に関わらずとも腹を壊し、暫くうなされて寝込む事になる。
多分原因はサルモネラ菌だと思うんだが、
勿論その様な菌が付着していない、生で食べられる卵も存在する。
だが只でさえお高い卵の値段が馬鹿みたいに跳ね上がる、うん、正に王候貴族の食べ物だ。
当然その卵を使うマヨネーズはお高いし、庶民が食える物では無い。
我が家でもマヨネーズは滅多に食べなかったらしい、金に困って居ない、寧ろ金持ちであった我が家でもそうなのだ。
どれだけ高価な物か分かろうと言う物だ。
そしてどの様な卵、と言っても新鮮なと言う但し書きが付くが、衛生状態の宜しく無い、それこそ気にしない所で作った卵でも生食出来る卵に変える事が出来る方法もある。
うん、生活魔法なんだがな。
クリーン、この世界で言う清浄魔法を使えばあら不思議、生食可能な卵に変身させる事が出来る。
そして俺は生活魔法が使える上に魔力量は莫大だ。
クリーンなら一日中掛けて居ても魔力が減ったとすら感じはしないだろう。
卵の生産環境によって汚れ、菌の量が変わるのだろうが俺には関係ない、どれだけ汚れて居ようが、菌が有ろうが関係無く除菌する事が出来る。
正確に言えば只のクリーンでは無く除菌を使って居るからだ。
クリーンに除菌を、それもサルモネラ菌に狙いを定めて使用すれば簡単に生食可能な卵に変える事が出来る。
と言うか俺の場合は普通にクリーンを掛けるだけで生食出来る卵に変える事が出来るんだよなぁ‥‥
当然使わないと言う手は無い、
マヨネーズの販売も行ったが莫大な利益を俺にもたらしてくれた、何が良いかと言うと競合他社が無かった事だろう。
マヨネーズは生食可能な卵を買い自分で作るのが主流だ、料理店でも提供されるがマヨネーズ単体の販売は基本的にはしない。
頼まれたらするだろうがマヨネーズだけの販売は基本的にはしていない。
繰り返しになるが各家庭で作る物であるし、
王候貴族も自家の料理人に作らせる。
まぁ富裕層であれば料理人を雇って居るし、
マヨネーズのレシピ自体は広く知れ渡って居るので存在自体は知られてる物だ。
だがマヨネーズの根本足る卵が、生食可能な卵の価格が高価過ぎて庶民では食べる事が出来ないし、機会自体も無い。
平均所得の人間でも金さえあれば料理店に行けば食べる事は可能な物だが、だからと言って金は天から降っては来ない。
マヨネーズは存在は知って居ても食べた事が無い人間と言うのは大勢居る、寧ろ食べた事がある人間の方が少ないのは当然の事だろう。
時折だが度胸試しにマヨネーズを作り、食べて死にかける奴が居るがこの世界では結構あるあるの話だ。
俺がアマンダと駆け落ちするなら魔族の国チェリッシュにあるドワーフ族が多く住むアイスブルーで酒を提供する店、酒のツマミを提供する店を出しても繁盛させる自信があると言ったが理由の一つがそれだ。
マヨネーズを比較的安価で作れて提供する事が出来ればそれだけでも繁盛させる事が出来る。
マヨネーズは旨いもんな、何にでも合うし、
それは料理だけで無く、酒とも相性が良い。
それ以外でも前世の知識があるからそれが酒のツマミを、それこそこの世界に今まで無い物を作る事が出来るからだが。
マヨネーズは前世から好きだったし、
この世界でも気軽に使いやすいし、
気軽に食べる事が出来るのは有難い。
この世界の我が家ではマヨネーズは合って当たり前の物になっている。
特に甥や姪達はマヨネーズが大好きで、
姪の一人は我が家一番のマヨラーでもある。
曰く、
『マヨネーズがあればそれだけで生きて行ける』
『私はマヨネーズと結婚する』と言って居る位だ。
俺がこのハルータに赴任してからは大変だろう。
今迄あって当たり前の、気軽に食べれて居た物が中々食べる事が出来ない物になったんだ。
まともで安全な、しかも美味いマヨネーズは高いからな、うん、超高級食材なんだからそりゃ今までみたいには口にする事が出来ないよ。
しかし姪のマヨネーズと結婚するは名言であった。
久々に大笑いしたなぁ‥‥
マヨネーズは美味さが中毒性があるからなぁ、
本当色んな意味で中毒性があるよ。
但しそれは美味さだけで無く、
本当に食中毒にもなる訳だが‥‥
しかしマヨネーズは良い、とても良い、
岩がきにもマヨネーズを掛けて焼いたのは美味かったなぁ。
伊勢海老も半分に切ったやつにマヨネーズをたっぷり塗って焼いたがあれも美味かった。
食いたいな‥‥ どうする?
夜明け前に漁に出た船はもう帰って来てるはずだ、
買いに行くか? だが岩がきはまだ獲りに行って無いよな? うーん、見に行くだけ行ってみよう、とりあえずコーヒーを飲んでから行こう、その後で朝のストレッチと走り込みをしたら良いか。
仕事前に浜に行こう。