第1話 ある特級官吏の日々
短編の連載版です
1話は短編とほぼ同じ内容です
スマホで書いているので
違和感があるかと思いますが御容赦下さい
R-15は念の為です
カモメが鳴いている
穏やかな波に乗り潮風が肌を撫でる
何とも言えない磯の香りだ
夏の磯風は無性に鼻に付く、嫌いでは無いが好きでもない、だが冬の磯風は好きだ、とは言え風の冷たさは好きではない。
クラインのじい様が目の前で顎髭をボリボリ掻いている、湿疹が出来たと言っていたから痒いのだろう。
上ではジョージのじい様が鏡を磨いてるはずだ。
元来は白い建物だったこの灯台は今はくすんで若干灰色に見えなくも無い。
俺が居るこの漁村、ハルータ村は人だけは多い寒村である。
漁業以外これと言った産業等無いありふれた漁村である。
とは言え歴史だけはある灯台、名物とは言い難いが古くからあるこの灯台がある。
俺はこの灯台の灯台守長だ
俺を含め6人が灯台守として、
灯台の維持、管理、補修をしている。
俺以外5人共じいさん達である。
ついでに言うならば俺以外正規の職員ですらない。
所謂非正規職員と言うやつだ。
帝都サザビーから海路で約20日、陸路で約二ヶ月半掛かる。
俺は帝都サザビー生まれのサザビー育ちであった。
15の時に特級官吏試験に合格して
官吏としてサザビーで働いていたのだ。
官吏試験は 特級 上級 下級とあり、
下級官吏試験に合格すればノンキャリア
上級官吏試験に合格すればキャリア
特級官吏試験であればキャリアより上の
スーパーキャリア もしくは超キャリアとでも言えば良いのだろうか?
イヤイヤ流石にキャリアは頭悪い言い回しだな。
特級は将来の大臣候補生と世間では言われている。
特級官吏試験の合格者で無ければ大臣に成れない訳では無い、上級官吏試験の合格者でも就任は可能だ。
そして下級官吏試験の合格者でも大臣になる事は出来る。
あくまで可能と言うだけで狭き門ではある。
上級は兎も角、下級官吏試験の合格者で大臣にまで上り詰めたのはただ1人しか居ない。
おおよそ200年位前に1人だけ居た。
上級官吏試験の合格者でも大臣に迄上り詰める者ですら珍しいと言われているのだ。
しかも平民がだ、今でも伝説として語り継がれている。
ただ、この国は実力主義である。
それも徹底した実力主義の信奉者達の国でもある。
ならなんで特級官吏試験に合格し、
帝都で働いて居た俺が今ここにいるのか。
答えは簡単だ、派閥争いに負けたからである。
とは言え俺はどこかの派閥に属していた訳では無い。
なら何故? 人はそう問うであろう。
これも又、答えは簡単
今回負けた派閥に属していると思われたのだ。
なので派閥争いに負けたと言うより
派閥争いに巻き込まれたと言うべきであろう。
派閥争いに負けた側は徹底的に排除され、
冷飯を食わされるのは洋の東西を問わず、
世界が変わろうが時代が変わろうが行われる
ある種の真理なのかもしれない。
とは言うものの15才で合格して13年間、
真面目に働き仕事で結果を出し上司にも認められ、
結婚もせず働き通しでこの扱いである。
この地に来て一年。
なんと言うか、まぁ仕方がないと諦めの境地だ。
それに灯台務めは二回目でもあるし多少の慣れもある。
最初の一年間は帝城勤め、二年目から三年間
バハラの大灯台勤めを経験している。
港町バハラ、帝国で二番目に大きな都市と言われている帝国1の港町でもあり、大都市でもある。
このハルータからバハラまで海路で三時間程、
もしくは多少まごついても四時間位で着く。
陸路であれば馬で八時間位、馬車であれば半日位掛かる。
俺がバハラに居た頃、馬でも半日がかりであったのだが街道の整備が行われ馬で半日がかり、馬車だと1日半掛かっていたから大分便利になったものである。
直線距離であればそうでもないのだが、
ハルータから北に山脈と言うにはおこがましいが
山々が少しばかり連なっている。
その為 一旦東に大きく迂回しなければならず
遠回りになってしまうのだ。
とは言え街道が整備、新設された為、
昔に比べれば遥かに早く行けるようになったし、
人の往来も活発になったと村の人間も大喜びである。
ジョージのじい様の娘がバハラに住んでおり
昔に比べれば会うのが楽になったと喜んでいる。
海路はなぁ・・・
天候によっては危険でもあるし転覆もある、
そう考えれば 陸路が安心だ 時間は掛かるがな。
ちなみに盗賊のような奴らは居ないとは言えないが滅多に現れない、
何故なら兵や見廻りの武装官吏達が常に巡回しているからだ。
街道が新しく整備されたからでは無く、
昔から見廻りはあったし 街道警備は厳しく行われていた。
俺がバハラの大灯台に居た時もその話は良く聞いたものである。
バハラの大灯台は帝国で一番の灯台と言われている、帝国一と言う事は大陸一だ。
帝都での官吏として最初の一年間は研修のようなものだ。
帝都、それも帝城では様々な部署を回った。
そして地方研修として
俺はバハラの大灯台に赴任し三年間地方行政を学んだのだ。
俺はバハラの地方行政府に所属しつつ、
大灯台の業務を行いつつ行政府の仕事も行っていた。
と言うよりも行政府の仕事もしつつ、
大灯台の仕事もしていたと言うべきか、
まぁ簡単に言うと二足のわらじを履いてたと言った所だろう。
とは言え大灯台は行政府所属下であるので
二足のわらじと言うのも少し違う気がする。
バハラの大灯台に比べれば、いや、比べるのもおこがましい程この灯台は小さい。
俺の前任者は下級官吏で俺と入れ替わりに帝都に帰還している。
前任者の所属派閥は今回の勝利者である。
つまり派閥争いに負けた俺の入れ替わりで帝都へ栄転と言う形で帰還、と言うより凱旋したのだ。
と言うか俺は巻き込まれただけなんだけどなぁ‥‥
ちなみにジョージのじい様曰く、前任者は人柄は悪くは無かったがどうもイマイチやる気が無い人であったらしい。
そしてジョージのじい様は今度の人は、
まぁ俺の事だがやる気があって宜しいらしい。
イヤイヤ!
俺もそこ迄やる気が有る訳では無いんだがなぁ‥‥
俺がここに飛ばされる時父や母等は、辞めて帰ってこいと言われた。
実家は商会を営んでおり一部任せると言っていた。
現在実家の商会は姉夫婦が父から継ぐべく、日々奮闘している最中である。
その為姉も帰ってこいと言っていたが俺が帰って来た場合跡継ぎは、俺になるのではと不安になって居た様だ。
まぁ辞めて実家に帰る積もりも無かったので断り、
結局この地に赴任した。
姉も俺の事を心配しつつホッともしてるようだ。
まぁ今更後継者問題で骨肉の争いはごめんだ。
大体実家の商会の跡継ぎは姉と決めたんだ、
又跡継ぎ問題を蒸し返すとロクな事にならない。
両親もそれだけ心配しての事ではあるのだろうが、
だからと言って一度決定した事を今更変更なんてしたら絶対にややこしくなる。
まぁもし特級官吏を辞めたら自分で商売するのもアリだな。
まぁ仕事には困らないだろう。
何故なら特級官吏試験の合格者は引く手あまただ、
なんせ特級の合格者は年平均五人位しか居ない。
前世の科挙並みか少ない位なのだから。
まぁとは言えだここの暮らしは悪くは無い。
今迄ずっと働き通しだったからか自分では気づかぬ内に疲れていたらしい。
ハルータ村の生活は魂が癒されるような心地よさだ。
何と言うかワーカホリックであったと言う事に今更ながら気が付くとは・・・
太陽が地平線に沈みゆく。
この場合は夕日が沈みゆくと言うべきか?
まぁどっちでも良い、そんな下らない事を考えるのも、どうでもいい事を想像するのも、それも又楽しいものだ。
気づかぬ内にクラインのじい様が居ない、
灯台の中に入ったのだろう。
俺に声を掛けなかったのは気を使ってくれたようだ。
あのじい様は雑に見えて細やかな気遣いが出来る。
まぁとは言えだ、何時までもここで景色を見ていても仕方ない。
灯台の中に入ろう、現在の我が家兼職場に。
そろそろ火を灯す時間だ。
船の安全の為に、我ここにありと示す為に。
我ここにありは格好付けすぎだな。
灯台に火灯す、そして船の安全の為に、
それだけで良い 其が俺の今の仕事なのだから
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