はじまり
全ての始まりは、通り雨だった。
突然雨が降って来た。
夏ならよくあることだが、誰も傘を持っていなかった。近くにコンビニもなく、急にすごい勢いで降り出した雨を避けるため駆け込んだのは、たまたま近くにあった古くて小さい古本屋。
前からあるのはなんとなく知っていたが、入ったのはその日が初めてだった。
店の中はしんと静まり返っていた。音がするといえば外から雨の音が聞こえるくらい。電気はついていたが人の気配はなく、客の姿はもちろん、普通ならカウンターにいるはずの店主の姿も見当たらなかった。
『誰もいない』
『こんにちはー』
呼んでみたが、返事はない。3人はしばらく雨宿りさせてもらうことにした。
と、しんとした店内に着信音が鳴り響いた。御井豆のご当地アイドル、アイミンのデビュー曲。
『どうしよう、多分ここ電話したらダメだよな』
『一応外出て話してこいよ』
アドバイスの通り、ふたりを残して外に出て電話してくることにした。
電話は同じ講義を取っている友達からのものだった。来週の授業、学生証を預けておくから出席を取っておいて欲しいとのことだ。もちろんご飯を奢ってもらう約束で、二つ返事でOKした。
時間にして5分程度のものだったと思う。しかし店に戻ると、ふたりとも何やら様子がおかしい。焦っているような、興奮したような…
『え?どうかした?なんかあった?』
その問いに、ふたりは目を見合わせて。
『なんかあったどころじゃないよ、大ニュース!開いたら一瞬で場所移動できる本を見つけた!!』