●第八話 ブランデン神殿の新女神
透明な石『ラピス・スペキュラリス』は遠い帝都に運ばれてしまった。
だが、ここの神殿に像を造っていけない、なんてことはない。
さっそく、俺とカプチーノ司祭は材料探しから始めた。
例の洞窟にはもうめぼしい鉱石は残っていないということだったので、そこから運び出した小さい石を組み合わせてはどうか、とも提案した。つぎはぎが見えるのはちょっとのぅ……とカプチーノ司祭が難色を示したので、もう透明は忘れることにして、普通の材質にすることにする。
この世界では石の像の他に、石膏も使うという。
「あ、固まるんだ。へぇ」
しかも、その石膏を焼くと粉になり、水を加えると固まるのだ。
そういえば小学校の頃、転んで腕を骨折した時にギプスを病院で作ってもらったことがあるが、あれも石膏だった。
焼いた石膏は現代の小麦粉のような粒子の細かい粉となり、純白で色も良い。
これを接着剤のように使えば、さらに造形の幅が広がる。
「よし、できた!」
等身大より少し大きめの女神像。
白く柔らかな造形が神々しさを際立たせている。
「よくぞ、よくぞ作ってくれたのぅ……」
「素晴らしい……」
司祭や神官達が、完成した像を見て、涙ぐんだり、祈りを捧げている。
「まだですよ」
俺は言う。
「うん? ワシにはもう完成しているように見えるがの」
「ええ、像は完成しました。でも、見て下さい。この周りはどうですか?」
そう言って両手を広げてみせる。
「ううむ、確かに、この像となると、かえって壁の汚さが気になるのぅ」
「でしょう? せっかくだから、内装もリフォームしてしまいましょう。石膏はまだまだあるので」
「うむ!」
それに、現代知識には塗りたくる以外の方法があった。
紙の上に石膏を流し込み、板状にする方法だ。
燃えない建築材として壁に使われる。
紙はこの世界では高価なので代わりに麻布を使用した。
ピンポイントでビロードの刺繍布をあしらい、高級感も出す。
宗教画を貼り付けても良い。
「ほう、石膏が板になるとはワシも知らなんだ」
「天井にもボードを貼り付けて、豪華絢爛にしてやりましょう。それで田舎司祭などとバカにされたりはしませんよ!」
「うむ! 天井を見上げれば、太陽と空が見える。神と天使も見える。実に良い感じじゃのう。このようなもの、太陽神殿にすらないぞ」
現代工法だからね。
「できた!」
「うむ、見事じゃ」
ピロリン♪
『スキル【廃ゲーマー☆】が発動。石膏ボード(発明1902年)のエクストラ・ルートが解放されました』
『天啓――神が宿りし白き石、其は炎の精霊によって粉となり、水の精霊によって石に戻らん。神の苦みは白き柔らかき食べ物とならん。白銀に神の苦みが宿るとき、鉄の鳥が空を飛ぶであろう』
「あれー?」
そういえば忘れていた。
俺はこのヘンテコスキルを持っていたのだった。
だが、今回は危ないものではないようだ。
鉄の鳥は飛行機だろうな。
となると、白銀はアルミニウムかな?
アルミニウムをどうにかできれば、面白い事になりそうだ。




