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●第七話 卑しき繁殖の魔物

 クワ一閃。

 それだけで土がゼリーのように軟らかく削れる。


 ザク、ザク、ザク、ザク。


 ちょうど十回ほど土を掘ると、そこに階段付きの見事な土櫓ができあがった。


「なんじゃそりゃあ!」

 あんぐりと口を開けたオルガがわなわなしている。


「いいから、オルガ、敵が来る前に、登ってくれ」


「お、おう、そうだな」


 オルガが櫓の上に登ったところで、階段を削り取り、敵が登れないようにしておく。

 クワでペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタっと、連打で土を押し固めてあるので、ちょっとやそっとの体当たりでは壊れないはずだ。土の隙間が一切無く、プラスチックか鉄のように光っている。凄いな、これ。


 次だ。

 俺は、芝生のような草をさささっと結び、草罠を作る。ここに敵が足を引っかければ儲けものだ。

 それを交互に一列になるようにずらりと配置してみた。もちろん、草をかぶせて罠を隠蔽することも忘れない。


 さらに、その後ろに落とし穴を掘る。

 その掘った土を積み上げて、土の壁も作った。

 地面には一カ所、矢印を掘り、人間にはここを迂回してもらい、すぐ避けられるように示しておく。


 最後に土壁の前に、干し肉を置き、着火の魔法で炙って良い匂いを出した。


 ここまでの作業、約五分。


「こんなものかな」


「スゲーな、シン。これなら何が襲ってきたってへっちゃらだぜ!」


「だといいけど。森の様子はどうだ?」


「ああ。何も――おっ、誰か来たぞ。ああっ、あれは!」


「何だ?」


「魔物だ! 豚の頭をした変な魔物がやってきたぞ」


「ええ? 豚の頭?」


 嫌な予感がして、俺もオルガが指さした方向を見る。

 森からブフォッブフォッと鼻を鳴らしながら、一人の人間――いや、一頭の魔物が姿を現した。


 オルガの言う通り、頭は完全に豚。

 だが、首から下は二本足の太った人間のようであり、手は爪が肉食獣のように尖っているものの、五本指になっている。彼らは鉄の鎧を身につけ、斧も持っていた。


「オ、オークだとッ!?」


 ゲームではおなじみだが、実物は初めて見た。

 聞いてないぞ、こんな魔物が村の近くにいるなんて。

 ゴブリンやスライムだけじゃなかったのか?


「オーク? 知っているのか、シン」


「ああ。だが、強さがわからない。ゴブリンよりはずっと強いはずだけど……」


 そのオークはこちらを見ると、興奮したようにプギーッと大きく何度も鳴いた。後ろに向かって。

 何をしているのか、理由はすぐにわかった。


「ああっ、また来たぞ。何頭いるんだ! 十、二十……、いや、まだまだいるぞ!」


 森から、次々と鉄の鎧を身につけたオークがやってきた。仲間を呼んだのだ。

 なんてことだ。オークが、それも群れでやってくるなんて。


 一頭や二頭なら父さん達でも倒せるかもしれない。

 だけど、あんな数が、しかも森から・・・やってきた・・・・・のだ。

 父さん達はどうなったんだ?


 カチカチと音がする。

 俺の歯が震えてかち合う音だった。

 ガタガタと全身が震えている。

 そんな、俺のせいで……燻製を作ったから。

 それでスキルが発動して、イベントの難易度が跳ね上がってしまったのだ。


「くそっ! シン、こっちにくるぞ!」


 それでもオルガは弓を引き、矢を射った。確かに命中した矢だが――カツンと相手の鉄の鎧に弾かれてその場に落ちる。


「フゴ?」

「「「ブゴッ、ブフォフォフォフォ」」」


 それを見て、オーク達が笑った。実に貧弱な木の矢だと思ったのだろう。

 事実、そうだ。


「くそっ、オルガ、もういい、そこから飛び降りて、逃げてくれ」


「冗談! 見てな! 矢さえあれば、まだやれるぜ!」


 もう一度オルガが矢を放つ。無駄だ、と思ったが――矢は吸い込まれるようにオークの喉に命中し、その一頭は動きを止めると、後ろに倒れた。


 やれる……のか?


「よっしゃあ! 見たか! もう一丁!」


 オルガが矢を放つ。さっきよりも鋭い音を立てた矢は、また一頭の喉を正確に貫き、倒した。


 やれる。

 ここさえ守り抜けば、オルガがヤツらを倒せる。


「よ、よし! オルガ、その感じだ」


「おう!」


「プギィイイイイー!」


 耳障りな鳴き声を上げたオークたちは、いきり立ったようにこちらに走ってきた。だが、重い鎧と、その丸々と太った体型ではあまりスピードが出ていない。

 また一頭、オルガがオークを倒す。だが、相手は五十頭以上。

 仲間が倒れようとも気にした様子もなく、こちらに突っ込んでくる。


 頼む、草罠。


 俺は祈った。心の底から祈った。


『仕方ないねぇ、じゃ、アタシが力を貸してやろう』


「ん?」


 威勢の良いハスキーな女性の声が聞こえたかと思うと、草むらに仕掛けた罠が一瞬、黄金に光った。

 まずい、オーク達にバレる。


 そう思ったが、オーク達は足を止める様子はない。


 そして、先頭のオークが、すぐそこ、五メートル手前にやってきたとき――

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