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●第六話 罠を作る

(視点がシンに戻ります)


 驚いた。

 さきほど小さな祭壇の上にお供えしたはずのチーズが、確かに光って消えのだ。


「ほっほっ、吉兆だねぇ。捧げ物が神に召されたようだ」


 おババ様はなんでもないように笑って言うが。


「ええ……? おババ様、この世界ではこういうのは普通にあるんですか?」


 目の前でお供え物が消えるなんて神秘の世界だ。


「あぁ、たまにだけどね。そういえば、シン、お前さんは『供物の昇天』を見るのは初めてだったね」


「はい」


「毎年、収穫祭のときには供物を捧げているが、昇天が起きたのは、ええと、ああ、もう二十年以上も前になるかね。ありがたいことだよ」


「そうですか」


 貴重な食料を神に捧げる。ご加護の見返りがあってこそなのかもしれないが、それをありがたいと表現する気持ち。無神論者の俺にはそんな発想自体がなかったが……そうだな、今度、たくさん食べ物が手に入ったときは、捧げ物をしてみるとしよう。


 そのとき、口笛が聞こえた。


「大変だ! 森の獣たちが騒いでいる。何か良くないことが起きそうだぞ!」


 オルガの父親が森から戻ってきて、村の人達に大声で伝えている。

 やはり、魔物か。

 こうしちゃいられない。


「父さん、森から魔物が来るよ! チーズの匂いに釣られて!」


「チーズ? そんなもので魔物は動かんぞ。だが、ダミアンも獣が騒いでいると言っているな……」


 父さんが屈み込み、僕の目を覗き込むようにして言う。


「シン、お前は母さんと家の中にいなさい。何があっても外に出てくるんじゃないぞ。いざというときは、その首にかけたお守りを持って、母さんと一緒に隣町へ行くんだ」


 俺は生まれたときから首にペンダントをぶら下げている。

 この村の風習かとも思ったが、他の子がしているような木の珠ではなく、青水晶の宝石をぶらさげているのは俺だけだ。台座は銀色の金属で複雑な装飾が施され、小さなユニコーンの意匠デザインが真ん中にある。本物の銀とは思えないが、夜に青みがかってうっすらと輝いたりする。高価なものには違いないだろう。

 だから、いざとなれば金に換えろということだろう。


 ――でも。


「父さん、僕も戦うよ」


「馬鹿を言うな。お前には剣だって教えてないんだぞ」


「でも、炎の魔法は使えるし」


「無理だ。着火の魔法は戦闘には使えん。いいから家にいるんだ」


「……わかったよ、父さん」


 父さんはどうあっても許可してくれそうにない。

 仕方ないので、いったんわかったフリをして、うなずいておく。


「よし、いい子だ。大丈夫、この辺の魔物なら束になって襲ってきたって負けたりするもんか」


 父さんが微笑んで俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。それならいいんだけどね。


 家に入り、母さんが戸口につっかえ棒をしようとするので俺は言う。


「母さん、ちょっとだけ、外の様子を見てていい? どのモンスターがやってきたのか、知っておくべきだと思うんだ」


「ええ? うーん、じゃあ、すぐ家の中に入れる場所にいるのよ」


「わかってる」


 俺はクワを持ち出すと、村のはずれまで出て行く。

 ここからなら森が見える。

 斧や鉈を持った村の男衆が、森の奥を確かめに行く後ろ姿がチラリと見えた。

 付いていきたいところだが、父さんに追い返されるだけだろうしな。

 だが、ここで見張るだけというのも能がない。


「ついでに、ここでスキルを取得しておくか」


 今まで何年も農作業の手伝いで鍛えに鍛えまくった土いじりの熟練度。

 【怪力】のスキルもあるので、もっと他のことに使おうと、農作業のスキルはなるべく取らないようにしていたのだが。


 念じて、スキルツリー画面を呼び出す。ずらずらと出て来た。


<農民>

 【穴掘り】【うね作り】【土よせ】【マルチ】【中耕】【草取り】【防草シート】【すき込み】

 【一揆】【しん操鍬そうしゅう戦闘術】【血判状】【紅衛兵】【天草四郎】【ギロチン】

 【コンポスト化】【ミミズテイマー】【耕起】【ペットボトル風車】【モグラテイマー】

 【石灰】【追肥】【混合堆肥】


<狩人>

【草罠】【落とし穴】【エサ釣り】


<剣士>

【型取り】



 おや、一度も鍛えていない<剣士>のスキルが一つ増えているが、オルガ達とチャンバラごっこをやったり、父さんの素振りを見ていたせいかな。一応取っておこう。


 それから、<狩人>の【草罠】と【落とし穴】と【エサ釣り】も使えそうだ。これも取ろう。


 あとは――見えないスキルもたくさんあるが……

 ちなみに【マルチ】というのは畑にかぶせる黒いビニールシートのことだ。

 【解説】によると、雑草を生やさないためのもの、だそうだ。俺も初めて知った。

 【畝作り】は畑に溝と山を交互に作り、作物の根を深く広げやすくするためのもの。

 まあ、今、戦闘に使わないようなスキルはどうだっていいな。


 戦闘に使えそうなのは――


【神操鍬戦闘術】 5000P


 これだ。

【解説】

 クワを操る農民の戦闘術。

 我流で会得するか、密かに一子相伝で伝えられている。


 ……凄そうだ。ちょうど農作業ポイントも5052あるのでギリギリ足りる。二年間ほぼ毎日農作業を手伝ってきたおかげだな。俺の熟練度は1200倍の倍率だから、普通の人間なら2400年働いても集められないポイント数だ。まず無理。


【穴掘り】 New!

【草罠】 New!

【落とし穴】 New!

【エサ釣り】 New!

【型取り】 New!


【神操鍬戦闘術】 New!


「シン!」


 オルガがやってきた。状況はわかっているようで、弓矢を持ってきている。


「オルガ、ここで魔物を待ち伏せるぞ」


「おう。だけど、森の木の上のほうが弓矢は使いやすいぞ?」


「そうだな。足場を作ってやるから、ちょっと待っててくれ」


「待つって……うおっ?」

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

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