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●第三話 洗濯板の評価とオルガの誘い

 やってきた幼なじみ、はな垂れ小僧のオルガと、気弱な少女ルル。


「ああ、見てくれ。洗濯板を作ったんだ」


 俺は二人に『洗えるくん一号機』を見せてやった。



「洗濯板? なんだそりゃ」

「またシンちゃん、不思議なものを作ったんだね……。見てもいい?」


「ああ、いいよ。安全なものだし、こうして、洗濯をするときに使うんだ」


 俺は持ってきていた自分の予備の服をジャブジャブと石けんで泡立ててみせた。


「おお! なんだそれ、面白そうだな! ちょっとやらせろ」


「いいけど、オルガ、あんまり乱暴にこすりつけて、俺の服をボロボロにしないでくれよ?」


 俺の心配をよそに、オルガはゴシゴシゴシゴシ!と力いっぱいにこすってくれた。

 それでも服――おババ様がこの材料は亜麻あま(リネン)だと言っていたが――かなり丈夫なようで、破れたりはしなかった。


「もういいだろ。ルルと交代だ」


「おう」


「あ、これ洗いやすい!」


 ルルは普段から洗濯をよく手伝っているからか、この板の効果はすぐにわかったようだ。

 エメラルドグリーンの瞳を見開いてキラキラさせた。将来は美人さんになるんだろうなぁ。

 そんでもって将来はモテモテになって、フェミニストとかの意識高い系になり、ゲームオタクを蔑んだ豚でも見るような目になっていくのだ。やれやれ。


「んなもん、わざわざ板を作らなくたって、その辺の石の上でいいだろ」


 などとのたまうオルガは衛生面をわかってない。


「いいかい、オルガ、地べたには目に見えない細菌というのが無数にいて――」


「サイキン? ムスー? 目に見えないんならどうだっていいだろ。それより腹減ったな。森になんか取りに行こうぜ」


「ええ? 森はヤバくないか?」


 俺は耳を疑った。

 この世界にはゴブリンをはじめとした魔物――実物大のモンスターがたくさんいるのだ。

 だから森の奥には絶対に入るな、と父さんと母さんからきつく言われている。

 大人になったらヒャッハー言いながら狩ってやるけど、今はまだ五歳児、しかも武器もないし、俺の筋力はまだオルガよりも弱い。


「そ、そうだよ、オルガ、森はモンスターがいるから、入っちゃいけないってお父さんとお母さんが」


 ルルもさっと顔色を変えて、心配そうに言う。


「大丈夫だって。オレはおっとうと一緒に森に入ってるし、モンスターがいない場所だよ」


 セーフティーゾーンか。

 安全なエリアとわかっているなら、大丈夫かな。

 オルガの親父さんは狩人なのだし、その辺はよく知っているはずだ。


「わかった。じゃ、モンスターがいない、森の手前まで行こう」


「手前じゃなくて、森の中まで大丈夫だって。ほれ、置いて行くぞ、ルル」


「ま、待ってぇ」


 大事な洗濯板を家に持って帰ってしまい込んだあと、俺達は森へ向かった。


「お、クルミがあったぜ!」


 オルガが地面に落ちている実を拾うが、いや、それクルミではないよね……?

 青梅を少しおっきくした感じの実だ。

 クルミって胡桃色――茶色をちょっと白くした感じの硬い殻に入ってるモサモサッとした木の実だったはず。


 オルガはさっそくそれにかじりつき、顔をしかめた。


「うえ、苦ぇ!」


「それ、クルミじゃないぞ、オルガ。毒があるかもしれないから、やめとけ」


「いや、ちゃんとクルミだって! ぺっぺっ! でも、やっぱ、この種の中しか食えねえなぁ」


 緑色の果肉をかじって捨てると、内側に見覚えのある硬い殻が。丸いでこぼこの種だ。

 それをガジガジと噛むオルガ。


 バキッ!

 と大きな音がして、歯でも折れたのかと焦ったが、割れたのは殻だったようだ。


「うーん、あんまりおいしくない。ほれ」


 オルガが半分くれたので種の中の柔らかい部分を食べてみる。


「ああ、これクルミだな。でも、干した方がいいぞ」


 俺は言う。

 種――何か正式名称があったはずだが、覚えていない。胚だったかな? クルミの味はするが、まだみずみずしく、苦みと青臭さが残っている。


「ああ、それでか。なんか青臭いと思ったんだ。じゃ、持って帰ろうぜ」


「ああ」「うん!」


 クルミの落ちている実をみんなで拾い集めて、懐――服の腹の内側部分に入れる。紐で服を縛ってベルト代わりにしているので、その上が大きな第二のポケットとして使えるのだ。


 これで明日はお腹いっぱいになるな。

 ホクホク顔の俺達が夢中になって拾い集めていると――オルガが急に叫んだ。


「おわっ!」


「ど、どうした、オルガ」


 モンスターか?!

 俺は素早く周りを確認した。

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