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パーティーと僕。

 おもてなし。

 それは、たくさんの料理と、たくさんの人。

 そして僕にとっての、孤独な時間。




 ~パーティーと僕。~




 勇者御一行。

 大抵そう聞いた都では、こうやって派手で豪華な料理が出る。そして可愛いおねぃちゃん(魔法使いがそう言ってた)がいっぱいいる。

 そのおねぃちゃんたちの中心には魔法使いで、料理を豪快に食べているのは武闘家で、いつもみたいに隅っこにいるのは僧侶。勇者はいつも、偉い人と話している。


 僕?

 僕はいつも1人さ。だって、ほら、こんなに人がいたら勇者を倒すどころじゃないし。むしろ僕の存在忘れてるんじゃないかなってくらい、そう、僕は1人だ。


「ゆうちゃ……」


 淋しくて、いやいや、隙をついてやろうと近くに行こうとしたけど、鎧を着たごっつい奴にひょいと持ち上げられてしまった。


「ややや、勇者殿のペットではないですか。あちらにご飯がありましたぞ?(それがし)が連れて行ってあげましょう」

「え?ゆうちゃは……」

「勇者殿は今大切なお話中でしてな。後で会えますとも」


 跳ねて脱出しようにも、このごつい手からは簡単に逃れられそうにもない。別に僕は豪華な料理とか、綺麗なおねぃちゃんたちとか、そういうのに興味があるわけじゃないのに。


「いや……、ゆうちゃ、ゆうちゃ……」


 思わず泣いてしまって、ごっつい奴がオロオロしだした。このまま泣けば離してくれるかな。


「困りましたな、王様からはなんびと足りとも入らせるなと言われていましてな」


 ポリポリと頭を掻いて、でもすぐに笑うと、ごつ男は「まぁペット殿ならいいでしょう」ともと来た道を戻りだした。僕は嬉しくて、同じようにニコリと笑ってやった。


「王様、王様!勇者殿のペット殿が入りたいとのことです。失礼しますよ!」


 ごつ男が開けてくれた扉の先。

 血溜まりの中、倒れている勇者の姿が目に映る。


「ゆう、ちゃ?」

「勇者殿……?王様、これは一体……」


 薄暗い部屋の奥から舌打ちが聞こえた。それは、都に着いた時に歓迎してくれた王様だった。

 僕はよくわからず、とにかく勇者に近づこうと手から降りて、ぴょこぴょこと勇者まで跳ねていく。


「ゆうちゃ。ゆうちゃ?」


 勇者の顔にすり寄ってみる。微かに動いた口元が僕の名前を呼んだ。


「フロ、イ……駄目だ、皆を連れて逃げ、て……」

「いや!ゆうちゃ、いや!」


 勇者死ぬ?いやいや、有り得ないでしょ。僕が倒すんだってあれ程息巻いてたのに、こんな結末は何より僕自身が望んでない。


「あやつ、王様ではないな!本性を現せ!」


 ごつ男が勇ましく叫んだ。でも入口から1歩も来てない。

 王様が狂ったように笑いだして、そして背中から翼を生やした。やだ、あいつ人間卒業してるじゃん。


「ワタシは、ユウシャを、タオシに、キタ。ユウシャを、タオセバ、ワタシは、マオウサマに、キニイラレル。ダカラ、タオス」


 片言でわかりづらいなぁ、もう。僕みたいにさらさらと話せないわけ?これだから人語が苦手な魔物は……。


「そうか、勇者殿を。ならば某は……逃げる!」


 一目散に逃げていったごつ男、改め逃げ男。なんだあいつは。あの鎧はフィギュアか何かですか。

 僕は他人なんて信じられないと、元王様から勇者を守るようにぴょこぴょこ跳ねた。倒されたら困るんだ、だから僕が守るんだ。


「フロイ、も、逃げて……」


 何言ってるんだこの馬鹿勇者は。

 逃げるわけない、逃げるわけなんか、ないんだ。


「ゆうちゃ、まもる……。まもる!」

「駄目だ、フロイ……」


 体当たりだ!

 でも元王様のふくよかな身体には、僕の体当たりなんか効いちゃいない。それでも諦めず、僕はまた体当たりをする。

 元王様がため息をついて、僕を面倒だとばかりに払いのける。僕は小さく悲鳴を上げて、床をゴロゴロと転がっていった。


 さすがに今回ばかりは、駄目なんじゃないかなと、この時の僕は思ってしまったのを、今でもよく覚えている。

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