第九十話 明くる朝-後編-
【前回のあらすじ】
如月大我の止まる事を知らない性欲にほとほと困り果てた我々は、年輪のくっきりと浮かび上がった壮年の女性たちに助けを求めた。若輩者の大田さんには面倒なので伝えないでくれと懇願しながら
「私に許可なくセッ〇スしたってどういう事っすか!?」
なんで来てんだよコイツ、許可なんか取る訳ねえだろクスリでもやってんのか。しかも今回に限っては誰が呼んだ訳でも無いらしいのが更に恐怖を加速させた。聞いてみれば何やら今日はいつもと違う空気がしたので朝陽さんの後を付けて来たと言うし、いつの間にかエスパー兼ストーカーとして仕上がっているじゃないか。なんか怖いので大田さんは見なかった事にして今回の件をカガリに相談してみる
「それで今日も体の動かないイズミに毎秒欲情してしまうんだがどうすれば良いと思う?」
「どうって…今まで欲情しなかったのが不思議だと思うしかないんじゃないのか?」
カガリはなんだかんだと言っても男と女なんだからやる事はやってると思っていたらしく、今更そんな相談をされても困ってしまうと首を傾げていた。自分が元々性欲が強い訳でもなく、男性経験も一人だけだが別に不自由を感じてないのは、普段から性欲なんてものは創作意欲の方に還元されているからだと。更には加齢も相まって完全に衰えてしまった今となっては何の参考にならないと嘆いている
「じゃあビッチな方のお母さんお願いします」
「ビッチな方の母さんも別に若い頃だけだからな」
晴香に聞いてみても最近は男を求めるどころか自家発電すらもご無沙汰だと言っており、これでは腰砕きの三沢と呼ばれていた当時の自分が泣いていると語るが、そもそも俺が泣きたいわ。俺の母ちゃん腰砕きとか言えないもん。参考になるかは分からないけどアブノーマルなプレイをしてる最中のアクシデントは正気に戻るから試してみると良いらしい。自分の母親がアブノーマルなプレイをしていたなんて知ったら皆さんはどうしますか?僕はただただ涙が流れました
「朝陽さんはどう思いますか? ちゃんと愛しあっていた男女はアナタだけなので是非とも詳しく伺いたいんですけど」
「そ、そうね…その…お母さんは…」
なんだかハッキリしない態度で言い淀む朝陽さんを見て俺とイズミは訝しんだ。以前聞かされた話の中でも朝陽さんは自分から夫である神田慶二を襲い、両者ともに初体験を済ませていた事を思い出した。もしや朝陽さんも止まらない性欲に苦しんでいた民なのではないか?と根掘り葉掘り聞き出すため、我々は朝陽さんの懐に飛び込んだ。
「せめて週何回してたかだけ聞かせてください。もちろん回数は発射した分だけ」
「そうね、母さんが果てた回数も参考までに聞きたいわ。女の方の平均盛りポイントがどのくらいかは分からないんだもの」
「あ、あの/// お母さんはその…///」
頑として答えようとしない朝陽さんの態度に業を煮やしたのかカガリと晴香が体を担いで別室へと連れ込み事情聴取を始めた。顔を赤らめた朝陽さんに次いで出て来た二人は、頭を抱えて天を仰ぎ見ている。生々しい話は流石に聞くに堪えないだろうからなるべくマイルドに表現してくれないかと頼み感想を聞かせて貰うと、カガリはシンプルな表現で吐き捨てる様に言った
「猿ですぜ、こいつぁ…」
「な、なるほど…」
「やだわぁ…娘の前で///」
そんな朝陽さんが旦那の去ったこの世で我慢できているという事はやはりこの性欲も愛のなせる業か、と納得して『愛が有れば我慢も出来る。元気ですがー!』とボンバイエ…もといスローガンを掲げた俺達は週の回数に制約を設ける事にした。若さも考慮すると抑えすぎも良くないという事でなんとか週に三回を限度とする事で話がまとまりそうだったが…
「いやいや、勝手に話が進んでますけど週に三回も出来るんですか? 私一回もしてませんけど」
なんでお前が出来る前提で話が進むと思ってんだよ異常者が、こいつが居ると話も進まない。出て行って貰おうとするも恐ろしいほどの真顔で柱にしがみついて離れようとせず、その眼差しは完全にキメてる奴のそれで流石の俺も少し恐怖を感じてしまった。なんか美人芸能人の結婚報道で騒いでる冗談交じりの人の中に、ほんの一握りの本物を見つけてしまった際の気持ち悪さを目の前の女から感じる。こいつは邪悪だ、生きていちゃいけない人間なのだ
「申し訳ないけど大田さんが船から降りるタイミングはここらしいね。いままでありがとう、幸せになるよ」
「??? 何を言ってるんですか大我さん」
「君がイズミを諦める時が来てしまったんだよ。イズミは俺のチン〇に完堕ちしてしまったのだから」
「ハッ、ハァァァァ!?」
エロ同人においてはありふれたシチュだとしても現実世界ではあまり見る事の無いチン堕ち。ほとんどの場合は財力だったり名声だったりで堕ちてしまう事が多い中、今回の事例ではシンプルに俺のイチモツにイズミが屈服した形となる。大田さんには決して生える事無い俺だけのアイデンティティがイズミに認められた結果が今日、大田さんからのインデペンデンス・デイである
「悪いね大田さん、という訳で俺のイチモツ無しでは生きて行けない体になったイズミの事なんか忘れて普通に恋愛しなさい。さようならだよ」
「そ、そんなの噓っぱちに決まってます! だって私とイズミさんは…」
「ごめんなさいね大田さん、もうおチ〇ポ様無しの人生なんて考えられないわ」
「ゴハッ!?」
明らかに煽りながら楽しんでるイズミはさておき大田さんはというと、最期に残された希望すらも奪われ完堕ちしたイズミの一言を聞いた瞬間泡を吹いて倒れてしまった。やれやれこれでやっと面倒な女の話を聞かずに済む。俺は大田さんの亡骸をボーリングの球が如く部屋の隅まで滑らせると、これからイズミと一緒に寝る時に我慢する方法をバアサンズに享受して貰う事にした。そりゃ口では我慢すると言っても悶々としたまま寝る事なんて出来る訳が無いだろうと俺は自信満々に言ってのけた
「あぁ、その点は安心してくれたまえ。可愛い息子の為だ我々も一肌脱ぐよ」
「そうだな、自分の年齢考えたら恥ずかしくて出来たもんじゃねえけど。大我の為だもんな」
「このままじゃイズミの体も持たないだろうし…そうね! お母さんも頑張るわ!」
いまいち話の内容は掴めないが、なにか策は有るらしくこの日の会議は誰の犠牲も無く円満に終わった。大田さんは目覚めてからも恨み言を呟きヤンデレ化する一歩手前まで行ったものの、誕生日プレゼントの指輪をイズミの薬指にハメて見せた瞬間に眩い光と共に気を失った。恐らく悪魔か何かの類なんだろうから、もう関わるのは辞めにした方が良いかもしれないとイズミに相談すると「まぁ面白いから良いでしょ」と好意的な様子だった
──そしてこの日の夜
風呂に入っている間も俺だけ服を着せられてすぐに襲えないようになっている。イズミの裸がこんなに股間にくるとは…美しすぎる物は目に毒だと言うが今の状況はまさにそれで、はち切れんばかりに熱く滾る俺のリビドーは今すぐにでも襲ってしまえと囁く。しかし俺はイズミの兄としての理性でなんとか抑え込み、イズミの入浴を済ませる事が出来たのだ!偉い俺!!
髪を乾かしている時も首筋に興奮し、昨日自分が残したキスマークなんかも見つけてしまった物だから…イズミから「背中に当たってるわよ」と言われるまでは自分の興奮度合いが分からない程にもう夢中だった。よくないぞ、もう避妊具だってすべて使い切ってしまったのだからもしも今日手を出してしまったらそれこそ人間としてのタブーを犯してしまう。俺がイズミを愛する資格なんてないただの獣であると認める事になってしまうのだから
念仏を唱えるんだ、俺の脳内を支配している煩悩よ出て行け…悪しき性欲に支配された悪魔の子らよ…我の中から出て行き大田まさみという女に不幸をもたらしたまえ。どれだけ悟りを開いた仏の心を理解しようとも、仏はイズミの事知らねえんだもん。身近にイズミみたいな綺麗な人間居たら絶対ギンギンになってるもん、俺が悪いんじゃなくて傾国の美女と呼んでも差し支えない程に美しい容姿で、俺の事を誘惑しているこの女が悪いのだ!ええい俺の如意棒で成敗してくれるわ!!
辛抱たまらず大切な妹との約束を破り襲い掛かってしまった俺にはやはり天罰が待ち受けている訳で…目の前でパッと光ったそれはイズミのスマートフォン。その画面には昼間一緒に居たババアズこと母親三人衆の姿が、それもただの記念撮影なんかではなく…マイクロビキニ姿でピースサインをしている姿だった…
みるみる俺の股間は萎びていき、顔色も青ざめ気分も悪くなってきた。今まで食べていた肉が人間だったと言われた方がまだマシな気分だ…完全に脳裏に焼き付いてしまったそれはこれでもまだ優しい方だとイズミから教わる。もしもこれからの生活で約束を破るような事が有れば、一段階ずつババアズの布面積が減っていくとの事だ。
俺は吐きそうな内臓を慰めながら、さっきとは違った意味で念仏を唱え始めた。神様仏様、どうかこれからの人生に多くは望みません、なので今見たおぞましい物の記憶だけは僕の脳内から消してください。と
どれだけ願っても瞼を閉じれば母親のマイクロビキニが浮かび、この日改めて神も仏も居ない事を痛感した如月大我は翌日、天罰の質が日本昔話の比じゃない。と語ったという




