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第七十一話 クリスマス・イヴ

 


 誰も得しない残酷なショーを体験した如月大我青年はまた一つ大人として成長する事が出来た。あれからイズミは一緒に居る時も俺の顔と股間を見てから部屋を後にする事がある



 何の気を遣っているのか知らないけどものの数分で帰って来るなら最初からいなくならないで欲しい。兄さんそんなに早くないからね



 そんな微妙な距離感のまま日は経ちクリスマス・イヴです



「兄さんはもうどうすればいいか分かりません。どうせあのおばさんとレズが家に来るのでしょう」



「それは大丈夫よ。おばさんは生放送しなきゃいけないらしくて来ないのは確定だから」



「あぁ…バーチャルの方ではうるさいらしいな、でも大田さんとビッチな方の母親は暇だろ」



「そっちには来るなって言っておいたわ」



「珍しく周到だな…」



 どうやら本気で俺との一線を越えようと画策しているらしい。よくあんな事が有ってからも性的な目を絶やす事が無いなと感心するよ、不完全な愛のままでなければ愛を感じられない俺のアンバランスな恋心にも気を遣って欲しいんだけどな



「俺も男だ、イズミの事を抱きたいのはやまやまなんだが…聞いてくれるか」



「聞かせて頂戴、存分に」



「以前からイズミと同衾する機会を得ているのは恐悦至極、しかしこの俺如月大我には決して抱かれぬ理由が有るのだ…」



「言いなさいよ早く」



「目の前に極上の懐石料理が有ると、さてどこから手を付けていいのか? これほど豪華な料理を目にするのは今後二度とないかもしれぬ慎重に選ばねば一生ものの後悔をする事に…」



「この場で言い訳考えてるでしょ」



「う~ん…どうしたものか」



 抱いてしまえばその場で自分の女となる目の前の妹をまだまだ妹として可愛がりたい思いを伝えようとしてもなかなか上手く行かないのだ…



 どうせ何が有ろうと自分の妹である事に変わりはないのだが、気の持ちようと言うか…行動理念に一個不必要な感情が入ってしまいそうで気後れしてしまうのが今の本音だ



「兄さんは親切心とかでは無くてイズミだから何でもしてやりたいと思うんだけどさ、一回でも抱いてしまえばそれが崩れそうで…」



「一人の女としてよりも妹としての愛を大事にしたいって事?」



「そう…なるのかなぁ…?」



「煮え切らないわね本当に…」



「すまん…」



 散々引き延ばしてるにもかかわらずこんな程度の催促で済んでいるのは、前回のコレクション採掘によって俺にも人並みの性欲が有ると発覚したからだろう。やはり打てば響くと知れているのは心の安心感が違うらしい



「じゃあ一回でいいから私で大きくしてる所を見せてよ、まだ見た事無いんだから」



「えぇ!? だってそんなの始まっちゃうじゃん!!」



「始めないわよ…今はまだ人妻で抜いてる事が分かっただけで私が恋愛対象だと決まった訳じゃないじゃない。もしかしたら前回見たのは母さんで大きくなってたのかもしれないし」



「それは無い。断じてない」



「じゃあ証明してみてよ」



 参ったな…まさかイズミの前で下半身を露出してあまつさえ怒張させる事で愛情表明とするなんて…こんなの"男の性感開発シリーズ~えっ?男も吹くんですか!?~"の一場面みたいじゃないか。少しばかり興奮して来たぞ…



 チーン



 今のは俺ではない、オーブンで温めていた七面鳥の片面が焼きあがった音だ。どれだけ高性能な調理機材を用いても焼き上がりまでには二時間も要するものだから、その間に今後の方針を決めようと話し合いをしていたのだ



「それで? 出来るの? 出来ないの?」



「いやそれは出来るけどさ…普通にするより恥ずかしいよ」



「普通にした事も無いのによく言うわ空想勃起人間」



「罵倒の引き出し多いなお前は!!」



 もうこれ以上長引かせても面倒な事が増えるだけだと思ったので、早く終わらせて放送してしまおうと俺はズボンを脱いでイズミの前に座った。流石にパンツの上からでも分かるだろうから



「なんで脱がないのよ?」



「これ以上脱ぐ必要ないだろ!」



「分かんないわよ私だって大きくなる過程は見た事無いんだから」



「見て分かります!! 大きくなるのでそれで判断してください!」



「不公平ね…」



 何がだよ…とは思ったがそれで妥協して貰えた、なんだってこんな辱めを受けなきゃならないんだと恨み言の一つでも言いたい気分だが、こんな状況を作ってしまった俺の方にも責任は有るので文句は言えない…さっさと証明して…証明…?



「全然変わらないじゃない。もう終わってるの?」



「いやちょっと待って!! まだまだ、まだ大きくなるから!」



「早くしてよ。それとも私じゃ大きくならないって事?」



「違う違う!! あれ…おかしいな…」



 なんか目の前で人に見られてると緊張してしまって下半身まで血液が回らないのか、まるでピクリとも反応してくれない…これではイズミから誤解を受けたままこれからも生活しなくてはいけなくなって"熟女でなければ反応しない男"というレッテルまでも付いて回る事になる



「おかしいな…ちょっとイズミこっち見ないでよ…」



「その勃起に何の意味が有るのよ、プライベートじゃないのよ」



「だってぇ…なんか緊張するんだもん…」



「どうにかしなさいよ男なんだから」



 待てど暮らせど俺の股間は反応せず、チキンの焼きあがる方が早くなりそうでさらに焦って泥沼にはまっていく。考えてみれば人に見られた状況でした事なんか無い訳で、いつも見ているビデオの男優さんはとんでもない精神力の持ち主なんだと思い知らされる。これからは一層感謝して見なければ



「…兄さん私が触りましょうか?」



「いやいやいや!! もう手を使ったら前戯ですから!!」



「だってどうするのよこのまま待ちぼうけで」



「いやぁ…じゃあちょっと匂いだけ!! 匂いで加勢して貰っても良いですか?」



「なんか変態性が増してる気がするけど…」



 それからイズミに下半身を凝視されながら匂いを嗅いでみる。なんだこのプレイは…興奮よりも恥ずかしさで顔に血が集まっているのを感じる。こんな事してなにが生まれると言うんだ…めちゃくちゃ恥ずかしいよ兄さん



「変わらない…わね…」



「…ちょっともうおっぱい見せてもらっていいっすか?」



「ダメよ、そうなったら胸で興奮してるんでしょ? 私じゃなくても良くなるでしょ?」



「いやでも男ってそういう物ですから! 全部脱がなくてもいいから!!」



「イヤよ、それなら私が触っても一緒じゃない」



 こんなにも真剣な表情で話しているのに内容は"俺の股間が大きくなるかどうか"なんてくだらない物だと知ればどれだけの人にバカにされるだろうか?でも俺はイズミで大きくなる事を証明したいしイズミだってそれを望んでいるんだ、そして導き出された折衷案が…



「…外して来たわよ」



「ノーブラ…ですか…?」



「そうだから早くしてよ、私だって恥ずかしいんだから」



「確認もしてないのにその響きだけでなんか興奮して来た…これはヤバいな」



 イズミも本当に恥ずかしいんだろう、確かにイズミが寝ている時にも着けてないのは知っていたしだからと言って何かをしようなんて思わなかったが…何でもない状況で俺の股間を大きくする為だけに脱いだのだと考えるとまた捉え方は変わって来る…



 なんだか昔掲示板に現れてはID付きで裸の画像をアップしていく"女神"と呼ばれる人を初めて見た時と似た感覚だ、日常の中で唐突に味わう背徳感は映像で見る作品とはまた違った興奮を俺の中に芽生えさせて…おや?これはまさか…



「あ、来てる来てる。これはもう完全に来てるわ」



「嘘…え、あっ本当だちょっと…これで完全体?」



「いや、もうちょい、あっ、はい。大丈夫です」



「…前見た時こんなに大きかったかしら?」



「あっ、何かこれもうダメかも、ちょっとこのままするか…」



「え? 兄さん何を言って…?」



 なんかもうムラムラが限界を突破したと言うかあまりにも現実感の無い興奮度合いに頭の中がバカになってしまったんだろう、俺は下着も脱ぎ捨てイズミの前に怒張したイチモツを曝け出しこれから完全にイズミを抱くと宣言した



「ちょ、兄さん、まだ別にいいじゃない? 私にも心の準備が──」



「とりあえずベッドに…いや誰が見てる訳でも無いし良いか…」



「いや本当に…鶏肉も焼けるし…」



「こんな事もあろうかと避妊具も万全だし…」



「兄さん…? 本気…?」



「大丈夫、知識はあるから」



 そう言ってイズミに覆いかぶさり完全に雄と化した俺だったが────



 ピンポーーーン




「・・・」



「ハッ ハッ /// に、兄さん///」



「…ハッ!? 俺は一体何を!? しかも客…あっ! 今行きまーす!!」



「ハァ…ハァ…ッハ…///」



「た、助かった…///」



 * *



 それから下着とズボンを素早く履き、宅配物を受け取り帰って来た兄さんはいつも通りの様子だった。もしあの時誰も来なければ私は本当に抱かれていたんだろうか……それに私を抱こうとする兄さんの目はいつもの優しい兄さんの物では無く、いつも以上に漢らしく見えてまだドキドキしている…



 その日食べたチキンの味もよく分からないまま、寝る時も自分の部屋で眠り…その日は少し夜更かしをしてしまった。眠る前に用事が出来たと言うか…まぁ…



 ────そういう事である。




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