第七十話 クリスマス間近の大戦略!
如月大我という名前の由来は"いつまでも大層な自分を思い描きなさい"という意味だったそうだ。思い描いた事象よりも現実の方が楽に感じる日々も多かった人生にこの名前は少し不釣り合いな気がする。そんな話をイズミに話したら思いもよらぬカウンターを喰らってしまった
「そんな事いいからいつになったら私の事抱くのよ」
「んっふっふ~wwwwwご飯どうしよっか?」
「また誤魔化すのね」
危ない危ない、クリスマス目前でイズミも盛っておるわ…何が性の十二時間か、その時間をどう乗り切るか考えている今が一番生を実感する。
こればっかりは想像通りに行ってくれない難しい問題だな。イズミとの肉体関係を結ばないまま人生を終えるという終着点は未だ俺の目には見えて来ない、この場で首でも切らない限り達成するのは困難だろう…しかし諦める事無く邁進していきたい所存です。如月大我と申します
「まず何が気に入らないのよ。抱けば良いじゃないの快楽を目的として」
「快楽のみを目的とした際には自分の手が一番だという統計が出ている」
「じゃあ人はなぜ交尾を繰り返すのよ」
「潜在的に子孫を残そうという欲求、及び他者を得たという征服感を満たす為だと思われる」
「得なさいよ兄さんも私を」
「悲しい事に俺はもう自分の物だと錯覚している」
「じゃあ詰みじゃない」
いつもは笑って誤魔化していたこの話もいよいよ腰を据えて話す時が来たのかもしれない。理論的に感情を一切出す事無く誠心誠意一心不乱に俺の気持ちを打ち明けよう、そうすればイズミも分かってくれるはずだ
「じゃあいいわよ、クリスマスは大田さんと過ごすから」
「許さんぞそれだけは」
「なんでよ」
「それだけは絶対に許さん、どうせ酒の勢いに任せて愛も無く一線越えるに決まってるんだから」
「抱かずに手元に置いておく事だけが愛の有る行為と呼べるのなら兄さんが言う事にも一理あると思うわ」
この女ついに痺れを切らして禁断のカードを切ってきやがったな…どうせここで俺が手をこまねいていたら以前キスをした時の様に大田さんと行為に及ぶ事は想像に難くない。後が無いと俺に言って来てるのだろう、なんとしても兄妹で過ごす初めてのクリスマスに俺の事を抱くつもりらしい…なんて妹だ
「考えてみても欲しい、そんな事をしてこれからも俺と一緒に暮らしていけると思うのか?」
「暮らせるでしょうね、兄さんが私の事を愛してるなんて知っているんだから」
「だったら抱かれずとも感じて欲しい、この愛情溢れる俺の想いに」
「抱かれず愛撫もされずに感じる女なんて居ないと思うけれど?」
「なんで急に上手い事言い出してんだこの子」
膠着状態が続くこの時間にいつもなら都合よく誰かから電話が掛かって来る筈なのに、今日に限ってそんな事はなくまだまだ議論する時間は残されていると誰かが言っている様だ。なんとも大きなお世話だが一世一代の大傾き咲かせて見せよう男の花を
「いいかイズミ、俺とお前が性交をするという事は今後の人生の大半がその時間で占められると考えて欲しい。一度線を越えれば我慢なんて出来ないだろうから」
「素敵な事じゃない、世界が終わるその日まで愛しあえば良いのよ」
「耐えられるのか? その身体で」
「どういう事…はっ!?」
「そう、イズミの顔よりもデカいんだぞ?」
「・・・」
初めてイズミが難しい顔をして黙りこくった。危なかった、もしも今まで一度も実物を見せた事が無かったなら理論で押し通されていたかもしれない。しかし目の前にある問題を無視する事なんか出来ない、イズミも一度見た時にデカすぎて引いてしまってるんだから
「どうにかなるでしょ…」
「交尾に使用する部分は人間の内臓だぞ? 本当に無事か?」
「ん…」
腹に手をやり心配そうにしている。"本当は全然大丈夫"という事を言ってしまいたくなるほど悩んでいるのが伝わって来て申し訳なくも感じるが、これは男のプライド的な話なんだ。イズミを抱く事を俺は愛情表現とは感じられないと言うか…
「どこに電話してるんだイズミ」
「母さん」
「やめなさい、手を止めなさいどうせ面倒な事になるんだから」
そして
「やあ童貞クン、外は寒いけどさぞ暑かろうや?」
「なんだお前童貞だったのか?」
「ごめんなさいね…? たまたま一緒だった物だから…」
「また大我さんの股間の話ですか…」
「…なんか想定したより多くね?」
「クリスマスの過ごし方を会議してたらしいのよ。全員独身だから」
実母、義母、他人に囲まれながら実の妹との性事情を語らされるとか前世でどんな業を背負ったんだよ俺は。国でも転覆させてないと割に合わんだろこの拷問は
「つまりイズミちゃんが言うには大我クンの陰茎の大きさと自らの…」
「全部言わなくても分かってるんだからやめろォ!! 恥ずかしいわ!!」
「なんだ大我チンコでかいのか? どれ母ちゃんに見せてみろ!」
「近寄るなケダモノどもが! 身の清い俺が穢れる!!」
朝陽さんと大田さんだけなら何とか丸め込む事が出来ただろうが、厄介な年増が二人も増えた事で明らかに俺が劣勢になっていると分かる。幼少の折にきちんとした性教育が施されていればこんな事にはなっていなかったかもしれないのに…いや待てよ?これだ!この線で押し返せば…
「大体なぁ! お前らが俺の小さい頃にもっとちゃんとしてれば…」
「ないないw 親が子供にセックスの事教えるとか…w」
「ん~大我氏www 少々フィクションの見すぎでわ…w」
「……え、そうなの?」
じゃあもしかして学校で堂々と教育するの?性行為に関するリスクとかの話とか?うわ、恥ずかし…義務教育受けてない所が如実に出てしまった…清楚系配信者の如月大我ここに在りみたいな所が出てしまった…
「つまり大我ちゃんのその……がね? 大きいって事は前も話して…」
「朝陽ちゃ~んw ちゃんと言ってくれなきゃ分からないんだがねぇ?w」
「やっ、それは///」
「ババア二人で盛ってる所申し訳ないけど本題に入って良いかしら」
「口の悪さがとんでもねぇなこの女…」
「そこがまたイズミさんの魅力なんですよ」
「やりたい放題かお前ら」
混沌としたこの状況にも無知を晒してしまった自分にも辟易としている大我はなんならこの流れのままお流れになってしまわないかと期待していたのだが、そんな事をイズミが許すはずも無く…いよいよ逃れる事が出来ない局面まで来てしまった
「話を戻すと、イズミちゃんは自分の中にあんな大砲が入る訳が無いと悩んでるんだね?」
「そうね」
「ご安心あれ! 男性の陰茎とは全体を刺激しないと快感を得られないという訳では無いのだ!!」
「本当?」
「もちろんだ、その点はこれから実戦形式で三沢っちが見せてくれるからよく観察するといい!」
「おし脱げ大我。地元では腰砕きの三沢と呼ばれたアタシが直々に…」
「ふざけんななんだその異名は!! 聞きたくも無いし見せたくも無いんだよッ!!」
それから画像などを駆使して科学的にカガリが、実践的な技術を晴香が、そして感心しながら見ている神田親子と生々しい話に顔をしかめている大田まさみはみっちりと保健体育(成人向け)を終えるとそこに大我の姿は無く書置きだけが残されていた
『ご飯食べて来るのでこのお金で好きに食べててください。あとあまり下品な事をイズミに教えないでください。さようなら』
「逃げやがったなアイツ…」
「本当に肝の小さいと言うか…あっちがデカくとも包茎なんじゃないのか?」
「いちいち下品なんですよカガリさんは!」
「仕方ないだろう? 今回は要望通りなのだから」
まあこのままイズミ一人を残して帰ればただでは済まない事を理解している彼女たちは仕方なく出前を取り如月家への駐在を余儀なくされていた。そしてある一言を皮切りに大我の下した判断が誤りだった事を痛感する事態に急転するのだが…
「そうだ、アイツの部屋にAVでもあるだろうからそれ見ながら帰りでも待つか?」
「無理よ、兄さんの隠し場所を探ろうとしても見当もつかなかったもの…」
「どれどれ、これだけの人数が居れば虱潰しで見つけられるだろうし…」
「や、やめましょうよそんな泥棒みたいな真似は…」
「そうよ? 大我ちゃんにもプライベートな空間が…」
これだけで今まで大我が不満を述べていたこの二人がどれだけ常識人なのかが見て取れる。それに比べ残りの三人は軽快な足取りで大我の部屋に侵入し遠慮も無しに家探ししている。今まではイズミだけだったのが大我の親であるこの二人も無茶苦茶な事を平然とやってのける"この親にしてあの子あり"と言えるだろう
「うおお~~!! 見つけたぞ諸君ーー!!」
「あれだけ探したのに、一体どこに…?」
「あのムッツリ野郎マットレスの更に下に敷いてやがったのか」
「いや私もその上で寝ていたんだけど。どんな神経してるのよ兄さんは」
無断で家探しする様な妹には死んでも言われたくないだろうが、にしても酷すぎる隠し場所という点では概ね世の女性は同意するだろう。ざっと見て三ケタ本数くらいは有るだろうか?よくもまぁ今まで隠し通せていたと言うか…そして気になるジャンルといえば…
「うっそ…大我さんこういうのが好きなんですね…ちょっと幻滅」
「そ、そうね…男の子だから仕方ないけど…こういうのはちょっと…ねぇ…?」
「まあその…私達も秘密を暴くにも気を付けねばならないと言うか…なぁ?」
「お、おう…なんか申し訳ない事したって言うか…気付かなかったフリを…」
「ただいま…」
「…兄さん違うのよ」
目の前に広げられている自身のコレクションの数々に呆然とするしかない大我はもう開いた口が塞がらないといった様子だ。それもそのはず、ひた隠しにしていた"若妻NTRシリーズ"や"借金返済を条件に緊縛される妻シリーズ"も白日の下に曝され、極めつけはこれだろう
【デリヘル呼んだら実母が来た!? ~息子のアソコは旦那よりも凄いッ!~】
もうどうすればいいのだこんなもの
「い、いやぁ…大我クンは私達をそんな目で見てないのは知っているから…」
「そうそう…こういうのが好きなだけで……なぁ?」
「あの、その…大我ちゃんはそんな事しないと思うし…」
「・・・」
案の定熟女たちがあからさまに危機感を覚えて優しく接してきやがる。結婚してなくても母親居てもこういうジャンルは見るだろうが。作品として見てるから全然大丈夫なんですけど。一緒にするなよ貴様ら…と言葉にする事も出来ない程にメンタルをやられてしまった
帰ってくれないか。その一言だけで蜘蛛の子を散らした様に帰る部外者共を見送るとイズミとは目を合わせずに粛々とコレクション達を片付け始めた。そしてこの日は久しぶりにイズミと別の部屋で寝て、泣きながらコレクションを使った。もうこうするしかないと体が訴えていたのだ。
翌日、不思議とイズミの口からクリスマスの話が出なくなったのは僥倖と言えるだろうか




