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第五十九話 朝陽さんと大田さん

 


 如月大我と申します。先日から気にはなっていたのですが、最近やけに朝陽さんと大田さんが仲良く、買い物とかに行っているらしい


 それに今日だってこの道場で朝陽さんとの待ち合わせだし…どう考えてもおかしい、この仲の良さは義理の母親にならんとする女性に接する距離感では無いだろう。そう、俺の予想が正しければ…



 大田さんは朝陽さんの身体を狙っている!!



「恋敵である俺が言うべきじゃないかもしれないが…大田さんイズミの事そんな好きじゃ無くね?」


「何を馬鹿げた事いってるんですか? めちゃくちゃ好きですけど」



 朝陽さんと買いに行った服を着ながら、朝陽さんとの予定を整理している女が何を言っているのか…?俺には分かる、この女は乳のデカい女なら誰でも良いんだ。例えそれが四十を超えていたとしてもだ



「でも最近はあんまりイズミにくっついたりしないじゃん」


「そ、それは…その…怖いというか…」


「何が?」


「何がとかは…言えないですけど…///」



 何か煮え切らない回答だ、まぁ確かにこれを認めてしまえば"自分は性欲に塗れた猿です"と自己紹介する様な物だから恥ずかしく思うのは仕方が無いだろう。 だがイズミからはすぐさま手を引いてもらいたい、ここで詰めるが吉だろう



「なんで言えないの?」


「げ…下品だからですよ!!///」


「まあ下品だとしても認めるしかないよね、自分がそういう女なんだって」


「私の事どんな女だと思ってるんですか!?」



 この淫猥女はそれでも認めようとしなかった。何を考えて義理の母親を手籠めにしようとしているのか?俺に敵わないと諦めて乗り換えた…か


 それは英断と言えよう、相手が朝陽さんで無ければなァ!



「大田さん、もう一度俺と勝負してくれないか」


「なんですか藪から棒に…今日は一段とおかしいですよ?」


「俺が勝ったら認めて欲しい、朝陽さんに乗り換えたと」


「はぁ!? なんでお義母さんが!?」



 * *



「遅いわよ母さん」


「ごめんね~! 皆お待たせ…」



「おら、認めろこの淫猥女ァ!!」


「ひぃぃ! イズミさん助けてくださいぃ!」


「何やってるのよ大我ちゃん!?」





「いやー、お恥ずかしい所を見せました」


「本当にビックリしたのよ!? 大我ちゃんが大田ちゃんの服を脱がそうとしてる様にしか見えなかったんだもの…イズミも止めなきゃダメじゃない!」


「巻き込まれるのは面倒よ」


「大切なお友達でしょう!」



 朝陽さんも勘違いするくらい鬼気迫っていただろうか?だが誤解だったとして、未だにイズミとの距離感については解決していない訳で、大田さんからハッキリした回答が無ければ安心して夜も眠れないよ



「でもね朝陽さん、そもそも大田さんの方に問題が…」


「何言ってるんですか! 急に発狂したのは大我さんの方ですよ!」


「はいはい、じゃあ話を整理しましょうね…?」



 ただ一人蚊帳の外というか、あえて離れているイズミからは幼稚園生の喧嘩にしか見えなかった



「俺はイズミと距離感が遠いって感じてるんです。お義母さんとか言ってるけど義理でもなんでもないじゃないですか!」


「別にこれからなるんだからいいじゃないですか!」


「だからその気概が感じられないと言ってるんだよ!」


「ほらほら、二人共落ち着いて…?」



 実況のイズミは何回やるんだよ。当の本人ここに居るんだから選ばせなさいよ、兄さんもなんでムキになってるの?そろそろ勝利宣言しても良い頃じゃないの?と思っていた



「朝陽さんはどうなんですか? 俺はこんなのおかしいと思います」


「おかしくないです、お義母さんもそう思いますよね?」


「そうねぇ…まぁでも理由としては…大我ちゃんのせいじゃない?」


「お、俺が大田さんを遠ざけてるとでも言うんですか!?」



 ブレないで兄さん。初期のあなたは遠ざけようとしてたじゃない、どうして良きライバルキャラみたいになってるの?私も言ってるじゃない兄さん一筋だって。イズミは少し狼狽えていた



「その…夏頃にイズミと大田ちゃんとお泊りした事があったじゃない…?その時に…」


「ま、まさか俺の…ビックバンタイガーギャラクティカマグナムの事ですか…?」


「それはちょっとよく分からないけれど…まぁ、その時にした話がね…?」



 数か月前、寝ていた大我の下半身が膨張しイズミと目が合ってしまった事からこの三名により緊急会議が開かれた。その際にどれほどの大きさだったのかを検証した所"超ド級だった" そこで発情するのはエロ漫画だけだろう、各々が感じたのは"純粋な恐怖"自分の体内に収まるはずが無い凶器に恐れおののいた



 そして当時、如月大我とイズミ争奪レースを繰り広げていた大田まさみ氏の脳内にある不安が芽生えたのだ。「あれ? これ大我さんの機嫌次第で殺されない?」と もちろん"そんなモノ"を使わなくても機嫌次第で殺す事は出来るのだが、あまりにも衝撃的だった事から悪い方向に振り切って妄想してしまったのだろう。それ以来大我を歩く男性器と認識している節すらある



「テメェ…俺の事歩く男性器だと認識してんのか……?」


「ひぃっ!? おおお犯されるぅ!!」


「大田ちゃん! お母さんの方にいらっしゃい!!」


「ひぃ~! お義母さん!!」



「前もやってたでしょそのくだり…」



 呆れを通り越してついに声を出してしまったイズミだが、今回ここに集められた理由を思い出したのか、両手には車に積まれていた荷物を持っている



「ほら、兄さんもまだ残ってるんだから持ってきて」


「ぐぅぅ…煮え切らない思いで"誕生日を祝う"のは癪だな…」


「まぁまぁ、一年に一度なんだから…ね?」



 本筋から大幅に逸れていたが、今回この三名が集められたのは大田まさみ生誕祭の為である。十月八日で"天覇の日"と覚えると良いらしい、仰々しいよ



 普段から撮影の際に飯を食って帰ったり、朝陽さんとも度々食事に行ってるのだから彼女の趣味趣向は知り尽くしているつもりだ。大鍋を携え揚げ物祭りを開催する用意は万端、後は火の元さえ確保出来れば…つまりいつもの焚火だ



 今回はいつものBBQとは違い揚げ物をするのだから、事故防止のために消火用の水を持って来る事や油を火元から遠ざけるなど最低限の準備は必ずしよう! また、準備段階でもパン粉が風で舞ったり卵液の中に虫が入るなども考えられるので揚げる直前の状態で持って来た。当然ながらイズミも食べるので山ほどだ



 種類も多めにトンカツ、メンチカツ、エビフライ、イカリング、それに牛肉で串カツも作る事にした。すぐに揚げてくれという視線を痛いほど感じるので、野菜の紹介はまた後にしよう



 寸胴鍋を使って揚げ物なんて初めてだから温度計でしっかり温度を測りながら揚げる。一度に揚げられる量を見極めなければ効率が落ちてしまう、カツ一枚に対してどれだけ温度が下がるのかも見ておかねば。 まさか中国で働いていた頃に大衆向け食堂で培った"多人数向けの調理法"がこんな所で活きるとは、やはりなんでもチャレンジしてみるもんだ



 試しに一枚揚げてみると火加減の調整が難しい、常に一定の火力で調理出来る訳ではないので不慣れな人は焚火で揚げ物はやめた方がいいだろう。そんな事言われずとも分かっているだろうが…ちくしょう



 こうなってしまっては逆に一遍に揚げてしまって、出来上がった物から取り出した方が上手く行く事に気付いた。しかし油跳ねはそこそこ起きるので長袖の着用をオススメしておこう



 しかし忙しい、油の劣化を防ぐために衣カスは常に取らねばならないし、火が近くてクソ暑いし、にも関わらず油に水滴が入っては大惨事だと大好きなビールで体を冷やす事すら叶わない



 この瞬間、俺はもう二度と外で揚げ物はしないと心に決めた。



 半分ほど揚げ終えるとついに限界を迎えた俺は、朝陽さんと大田さんに任せ小休止を取る。もう冬に近い秋だというのにこれほど暑いとは…揚げ物おそるべし。しかしなんだな…こう見ると背丈とか雰囲気だけ見るとイズミよりも大田さんの方が娘っぽいな



「…とか思ってたんでしょ」


「まぁ、思わない事も無いかな…」


「ちょうどいいわ、老後の介護は大田さんに任せて国外に逃げましょう」


「現代版姥捨て山か…」



 物騒な事を言うイズミから缶ビールを受け取り一気に飲み干した。体中の血管がフル稼働、全身にアルコールを供給する


 癒える、疲れと熱が一気に霧散する。幽霊にとっての塩ってこんな用途で使われているんだろうか? であればもしも霊的存在と出会った時には全力で投げつけてあげたい




 その後は再び揚げ作業に戻り、全ての食材を揚げ終えた時点で外は真っ暗。このまま油を放置するのは危険なので油が固まるやつでしっかり回収。後片付けまでがBBQだぞ!



 一通り食べたようなので、では帰ろうか?と神田一族に問うと朝陽さんは申し訳なさそうにカバンの中からある物を取り出した



「あ、あのね…? もしかしたら遊ぶかな~って思って…」



 そう言って手に持っているのは"人生ゲーム"だった。しかもかなり新しめの物だったから、朝陽さんの家で眠っていたとかそういう物じゃないんだろう。 まさか今日遅れたのってこれを買いに行ってたのか?だとしたら非常に…ひじょーーうに断り辛い。



「あのね朝陽さん…俺達明日…」


「そ、そうね…また~…今度にしましょう…」



 これは…会った事も無い神田慶二の顔が目に浮かぶ。分かる、分かるぞ…俺の体内に流れる父親の血が人生ゲームをやれと言っている。寝ずにやれと…



「あの…今日だけですよ?」


「ホントぉ~!?」


「あまり甘やかすんじゃないわよ、兄さん」


「だってよぉ…」



 家族なら言えるだろう…?とイズミに目配せするも根本ではイズミも俺と同じ気持ちなのだろう。実に断り辛い、せめて大田さんの家が使用禁止で…



「いよぉ~し!/// そんじゃ私の部屋にGO~!!///」



 誰も止めなかったのかこの女を。いつまで経っても学ばない我々は大田まさみ宅で再び人生をスタートする事になった。それも泥酔女の介護をしながらだ──




 つづく!





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