第四十八話 緊急女子会・夏の陣
なんだろうこの感覚
もう朝かしら?兄さん…
兄さんよりも早く起きて…?
というか何か…ッ!?
え!? これ…え!? 兄さん…え!?
* *
「本当に大丈夫なんですか朝陽さん?」
「いいのいいの~! たまの休みなんだから、女子会だなんて嬉しいわ~」
「イズミも大田さんもあんまり夜遅くまで起きて迷惑とか掛けないでよ…? もういい歳なんだから…」
「はいはい! 男子は早く帰ってください! ここからは男子禁制なんですから!」
「・・・・・」
「わ、わかったから…それじゃあ朝陽さん、くれぐれも…」
「は~い、任せてちょうだい!」
(そういう所が心配なんだよな…)
大我が帰ってからすぐ、イズミを中心に女子たちは神妙な面持ちで会議を開いた
「それで、どうしたの?イズミが相談してくるなんて相当な事だと思うけど…」
「そうね…母さんにしか相談できない事だと思ったの…」
「わ、私も何かお力になれれば…」
「いえ、大田さん。あなたに関しては"警告"よ」
「警告…?」
「そう、これは今朝の事で…目が覚めると私は腹部に違和感を覚えたわ…」
そしてイズミは事の顛末を赤裸々に語った。兄の"いちもつ"がとてっつもない勢いで屹立していた事、それはとてもではないが生殖のメカニズムに反した規模にしか見えなかった事。それを聞いた"経験者の朝陽"と"未経験者の大田まさみ"の脳内には、種類のまったく異なる警鐘が鳴っていた
* *
イズミ…まさか大我ちゃんとそろそろ一線を超えようと…?にしても、身長の大きな人が大きいって本当だったんだ…慶二さんも初めて見た時はなんと猛々しい…とは思ったけれど///
そうよね、遺伝とかもあるけれど母さんの最初の経験も踏まえてアドバイスできれば、母親冥利に尽きるってものよね!優しく手解きしてあげましょう!
* *
イズミさん…?もしかしてもう大我さんとそういう大人の関係に…?しかも大きいって…確かに海で見た時は「おや? エイリアンの頭部かな?」と衝撃を受けたものだが…私はあのデカさが膨張時のMAXだと考えていた…しかし、もしもあれ以上の大きさになるとしたら…?
もう、腕じゃないですか…!
* *
一方、如月大我は一人寂しく放送をしながらうじうじと酒を飲んでいた。いつも以上に面倒くさい、女の腐ったようなメンヘラ配信者になってしまい、視聴者達は優しくする事を強いられていた
「なんかしちゃったのかなぁ…? イズミが進んで俺から離れる事なんか無かったのに…なぁ、皆見てて俺に至らなかった所ってどこかある…?」
【いや、よくやってると思うよ】
【イズミちゃんもただの里帰りなんじゃないの?】
【気にする必要ないと思うけどなぁ】
「そういう慰めるだけの無責任なコメントが一番困るんだけど!? 俺はイズミが嫌がる所とかなかったの? って聞いてるんだから、ちゃんと答えてよ! 本当に困るんだけど!」
【めんどくせぇな…】
【そういう所じゃないの?】
【こりゃ家出もするわ】
「なんでそういう事言うの!? 俺がイズミの事で悩んでる時はね? 黙って相談に乗って欲しい。聞いて欲しいって事なんだよ!?」
【イズミちゃん早く帰って来て…】
この日の大我はずっとこの論調で情緒も不安定だった。
* *
ところ変わって女子会の様子だが、流石に経験者の朝陽。イズミに臆する事無く詳細な所まで問い詰めている様だ
「それで、大きさって言うと…どのくらい? 角度的には上からだろうから…母さんがイズミの役やるから、ちょっと同じ形になってどこくらいに有ったとか教えて?」
「うん…こうやって向かい合って…私の方が少し下側で…」
と普段から寝ている形になると、大田まさみは「その手が有ったか…」と悔しそうな顔で眺めていた。そしてイズミは自分の股間から、大体の目測で"大我のタイガー"部分を指で追う
大きさでいうとこのくらいだっただろうか…?いや、でも自分の体に当たった所を考えるとここ…?いや、これでも足りない…こう、ここ…くらい…
どんどん自分の身体を駆け上がってくるイズミの指に朝陽の顔はドンドン青ざめて行った。嘘でしょう…?まだ?まだなの…?これより上って…イズミ、そこは…母さんのそこって…
――もう、"胃"なのよ…?
最終到達点を確認し終えた三人は皆一様に下を向いて黙りこくっている
ある者は想像以上の大きさに
ある者は見知った物とは別次元だった事に
ある者は…
「それ…死んじゃいませんか…?」
生意気言ったら"それ"で殺されるかもしれないという恐怖に
今までは人間だと思っていたのに、股座にそんな凶器を仕込んでいたなんて思ってもみなかった。これがイズミも冒頭に言っていた"警告"という意味なんだろう
もしも大田さんがイズミと先に一線を超えようものなら…力では到底勝つ事の出来ない大田まさみに抗う術はなく、理性を失った如月大我は加虐欲を満たす為に、手段を選ぶ事はしないだろう
誰もそんな事をするなんて言っていないのに大田さんは既に涙目だ。今まで男も知らず、ようやく人生において愛する人を見つけたのに…こんな形で自分の操を散らされそのまま殺されるなんてまっぴらごめんだ!と一方的な被害者意識を植え付けられている
「で、どうすればいいの? 母さん…?」
「あ、うん…そうね…」
母さんも分かりません。正直言って、イズミが寝惚けていたという説を願うしかありません。だって人間の中でもかなりの規模じゃないの…?もしかして大我ちゃんが頑なにイズミと関係を持たなかったのってこれが原因…?
だってどう考えても収まる様に作られてないのよ…私がイズミより小さい事を考えても、内臓の位置ってそこまで変わらないんだから…その長さの刃物持ってたら一発で逮捕されるじゃないの。法律違反、なにが"イチモツ"なのか…?"ジュウイチモツ"に名前変えた方がいいんじゃないの…?
貴重な経験者の脳内も他の二人同様、混乱していた
このままでは埒が明かないと三人はインターネットで検索してみる事に。すると旦那さんのナニのデカさで悩んでいるというトピックは山ほどあった。それらを見ていく内に三人の顔色はどんどん悪くなっていく…そして会議もそこそこにその日は誰が言うともなく各々布団の中で眠りについた
―翌日―
大我は「きっと昨日の女子会は大変遅くまで楽しんだのではないか」と思い、朝の配信を一人で終え昼前頃に神田家へ迎えの車を走らせた。早く朝陽に会いたいと思いながらも、大体のヤンキー漫画ではこういう目標寸前で事故るので、努めてゆっくりと法定速度のしきたりに倣い胸のエンジンはフルスロットルのまま目的地へと到着した
「イズミぃーーーー!! 会いたかったよイズミーーーー!!」
イズミの姿を目で捉えると今まで抑えてきた反動や、一日も空けたら余計に綺麗に見えていつも以上に興奮してしまった
しかし、俺が駆け寄る仕草を見せた時のイズミはどこか怯えているように見えた
いや――――
イズミだけではない
ここに居る全員が俺の存在に怯えている。しかもなんだか目線が下の方を向いていた。
朝陽さんですら少し余所余所しいというか…エロ本見つけたお母さんみたいになっている。大田さんなんかイズミの後ろに隠れてしまっている。ていうかそれはただイズミと接触したいだけじゃないだろうな?昨日何かしてたら許さんぞ。なんか腹立って来たわこの女
「大田さん、イズミにくっつきすぎだろぉ。離れろよ」
「ヒッ…! ご、ごめんなさ…」
「大田ちゃん! ほらこっち! お母さんの方いらっしゃい!」
「ひゃああ!! お義母さん…」
「……え?」
なんだこの空間…?まるで俺が昨日何かしてたみたいに…放送見られてても問題ない話しかしてなかったと思うんだけど…過去に何かやらかした話…?カツアゲされてるジョンを助けるために何人か半殺しにした話はどこにも出してない…ジョンが骨折ってること忘れてローキックした事も聞いてないはず。なんだ?どれが漏れ出した…?
「あ、あの…へへへ、大田さん…?」
「いやああ!! お、犯されるぅ!!」
「お、おかっ!?」
「大我ちゃんダメよ! 性欲に抗う事が出来ないとしても一般の子に手を出すなんて!!」
「無理やり犯して屈服させるなんて…フィクションだけなんだからね!!」
「一ミリも話が見えて来ないッ!!」
理解が追いつく間もなく、なんだか自分が悪い事をしてしまっているという強迫観念に負け、イズミを車に乗せると急いで自宅までの道を引き返した。イズミの視線はずーっと俺の股間に釘付けだ
「なぁ、結局昨日は一体何が有ったんだ? 明らかに様子がおかしかったけど…」
「兄さんの股間の話になったわ」
「はぁ!? なんで急に!?」
「昨日の朝に、ちょっと目が合ってしまって…」
「昨日…? あぁー!!」
心当たりは有った。そう、エロゲーの世界でぐっちょぐちょになる夢を見た日だ。確かにあの時のイズミの驚いた顔と言ったら…もしかして夜の生活に不安を持ったイズミが経験者の朝陽さんに…?しかし…自分で言うのもなんだが俺のはマグナムどころではなく、戦車砲くらいはある訳で。流石に朝陽さんでも参考にはならなかっただろう
どおりでイズミ以外の二人が脅える訳だ。朝陽さんは"なまじ知っている"が故に、大田さんに至ってはエイリアンが侵略しに来たのと同義だもんな。そりゃあんなビビり方するわ…にしても犯されると思うのはヤバすぎるけども
これで心のもやもやは晴れたけれど…イズミは今後も頭を悩ませてしまうだろうな。こればっかりは兄さんも小さくする手術とかはしたくないし我慢してもらうしかない。非常に残念な事ではあるが、兄さんからイズミに対しての性交渉は難航を極めているって事だ。いやーある意味助かった。
ん?イズミ?兄さんの股間眺めるの飽きたか?あまりにも動きが無い事を退屈に思ったのか俺の方をジッと見つめて…なにか…?
「それでも――」
「え?」
「こんな大きな障害だとしても、私は乗り越えて見せるわ。いえ――」
「 跨って見せるわ! 」
「下品だからやめなさい」
体位がどうなるかは分からないが、イズミの夢には一歩前進…?したのだった




