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第205話 押忍!! 大田まさみ!!

 


 なんか大田さんから急に呼び出し喰らったかと思えば道着を身に纏った大田さんが俺の前に立ちはだかっている。今にも勝負を仕掛けてきそうだけど急に殴ったら驚くだろうか? サプライズ的な雰囲気を醸し出せば許して貰えないだろうかと考えていると目の前の大田さんはようやっと口を開いた。



「さぁ大我さん! 実は日夜研鑽を積んできた私ともう一度勝負してください!」


「え、なんで? 給料はもう上げないよ?」


「お金の話はどうでも良いんですよ! もとより私の目的はあなたの隣に居らっしゃるイズミさんなのですから!!」


「何言ってんだコイツ……?」



 おかしな事を言いやがる、だって大田さんは既に大野卓三の娘と恋仲に発展している筈。俺のセンサーが感度ビンビンにそう判断したんだから間違いは無いだろう。となると考えられる理由は一つ……



 こやつセフレを欲しておるな?



 元はと言えば意中の人間だったイズミのダイナマイトバディが忘れられないんだろう、しかしあの娘の態度を考えるに夜の営みも淡白なんだな。俺の妄想でもそんな感じのシチュが何度かあったし激しく求めあう夜もあった。しかし性欲モンスターの大田さんは一度や二度では到底満足する事が出来ずにイズミを手籠めにしようと……



 自分達の関係がバレていないと思っている大田さんは一途な自分を演じつつも俺の懐に潜り込もうというわけか……二つの意味でな。百合に関しては純愛主義な俺がそんな不貞を見逃す訳無いだろう、ボッコボコにしてあの娘と慰めックスして貰おうじゃあないの。



 という事で



「はじめっ!」



 なんと愚かな事か、まさか"人間の最高到達点"相手に武器も持たず丸腰で勝てると本気で思っているのか。腹を空かした熊かイズミを前にした大我か、どちらの方が危険なのか世界的に論文が書かれていると聞いた事がある様な無い様な。人間を相手する事に特化した武道なんざ相手にならんのだよ。



「はぁ!」



 そう、大田さんがしている様に柔道のセオリーとは相手の襟首を掴み、捻り上げなんとか重心を崩す事が先決。しかし身長差は30cm以上有り体重に至っては50kgは違うだろうか? 人間が車と衝突して無事でいられないように、この世の万物は物理法則の下に成り立っているのだ。こんな小柄では俺を投げ飛ばせる道理が無い。



「お前が積み上げてきた努力とは俺に勝つ為に非ず。至極一般的な小兵相手にしか通用しない制限付きの力なのだよ」



 なんだかラスボスみたいでカッコいいな今日の俺、このまま地面に叩きつけて終わりにしても良いがもう少しこの圧倒的な自分の力に酔いしれていたいとも思わせる。それほど俺は強すぎる、もしも俺が何かの競技に熱を上げていたならその種目で俺に敵う者は地球上に存在しなかったはずだ。その分野で頂点を極める事はなんと虚しい事か……きっと対戦相手にはこんな風に哀れみの視線を向ける事しか出来ないのだろうな。



「すみませ~ん、大我くん居ますか~?」


「誰だ」


「うおおおおぉぉぉ!! ふんぎいいいぃぃ!!」



 大田さんに胸ぐらを掴まれ、踏ん張られながらも後ろからした声を気に掛ける余裕すらあった。だが俺の事を大我クンと呼ぶのはカガリしか居ないはず、しかも男の声となると大田さんの父親とかか? 大層強いという評判の俺を相手にしてみたくなったとか? 男とは常に強者に惹かれる……これも"運命"なのだろうな。



「うおぉー!! 本当にいたよ会いたかったよ"ミュゼー"!」


「ミュゼ……はぁ!? ジョンか!?」


「みゃああおおぉぉん!!」



 俺をそう呼ぶ男なんてこの地球上に一人しか存在しない。俺が人生において唯一友人と呼べる人物で現在は海外でレストランを経営している黒人のジョンだ。何の連絡も無しに来日しあまつさえ大田さんの道場に俺が居る事をどうやって知ったんだ? 話したい事は山ほどあるが目の前で奇声を上げる女をどうにかしてから考えよう。



「どけぃ」


「ふぎゃああ!」


「どうしたんだ連絡も寄越さずに、ていうかなんでここが?」


「あぁ、それならここに来る前……」



 ~2時間前~



「ふぅ、何年振りだろう日本に来るのは。今回はミュゼーにも内緒で来ちゃったから驚くだろうなぁ~」



 ジョンは現在営んでいるレストランを本格的な日本食専門にしようと考え、従業員たちと様々なメニューを開発しては現地人の舌に合うように改良し、日本人が来店した場合には日本の味をそのまま提供できるようにとこの一年間試行錯誤を繰り返していた。そして遂に改装の目処が立ち一か月間の休暇を取る事が出来たそうで、連絡すら取り合っていなかった大我に会うため来日したのだと。



「えぇ~っと、前来た時のアプリだとここら辺に……おぉ! そうだそうだこの無駄に馬鹿でかいマンション! 暗証番号とか分かんないけど大丈夫かなぁ……」



 ジョンが前回この家を訪れた時には大我も一緒だったので顔パスで家に入れ、そのせいで守衛の存在を知らずノープランで来てしまったのだが「まぁなんとかなるやろ」の精神は時に事件に発展しかねない。皆さんもよく知っている大野卓三もまったくの無能という訳でもないので……



「いけません、旦那様がお帰りになるまではお通しできません」


「え、留守にしてるって事?」


「本日は道場に出向かれるとの事ですのでしばらくは帰られないかと」


「あ、じゃあソッチに行きます。場所どこですか?」


「えっとですね確かこの辺の……」



 ~そして現在~



「という感じでここを教えて貰ったんだよ☆」


「あの野郎……ジョンが殺し屋だったらどうするつもりだ……」


「おぉう!! しかも柔道やってるじゃん! 俺にもやらせてよまだ練習してるんだよ!」


「マジでやってたのかお前……いやお前に合うサイズの道着なんかあるかな?」



 俺がふと大田さんの方を見るとまだ倒れたままで、もしや当たり所が悪くて脳震盪でも起こしてしまったかと思い顔を見てみるとそこには鼻をすすり涙を流している大田さんの姿が。まさか俺に負けたのがそんなに悔しかったんだろうか……? なんて思って当初の目的を思い出すとただイズミをセフレに出来なかったから泣いてるだけのゲス野郎だった。すぐさま引き起こして涙を拭かせると俺はある事を思い出した。



「そういえばお前ら一緒にハイジャックに遭ったんだよな?」


「あぁ!? あの時の女の子だよぉ!」


「え……? あぁ、そう、ですね……?」


「お前絶対分かってないだろ」



 日本人からすれば海外の人は皆同じ顔に見えてしまう。確かにあの時ハイジャック犯を制圧してくれた黒人の人は居たけどこの人……この人か? なんかそう言われたらそんな気がするけどどうだろう……? って感じになってしまう。逆にジョンが大田さんの事を覚えていた方が不思議なくらいで……あぁそういえばあの事件くらいからジョンは柔道を習い始めたんだっけ? なんか感銘でも受けたんだろうか。



「大田さん、一番デカい道着持って来て。今日俺はジョンを殺す」


「え、いいですけどちゃんと片付けてくださいね……」


「あれ、あの人こんなだったかな? なんか俺人違いしてる?」



 こうして突如来日したジョンと大我の真剣勝負が幕を開けるのだった!!


 恵まれた体格と瞬発力のある筋肉を持つジョンに大我は勝てるのか!?


 そして大我に勝負を挑んだ大田まさみの真意とは!?


 次回に続く!!



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