第181話 如月大我~孤独の叡智~
俺の名前は如月大我、どこにでもいる普通の25歳……とはいかないまでもいやらしい事に対する興味は同年代とそう変わりは無いだろう。今日はそんな俺の営みを君達に知って貰おうと思うんだ。
まずは妹であり人生のパートナーでもあるイズミの監視から逃れるため、自分の部屋で作業をすると伝える事からなんだがこれがなかなか難儀なこって……理由としては俺とイズミは年中家の中で缶詰めになりながら配信の事ばかり作業をしている。つまりイズミから離れて一人でしなくてはならない作業なんて存在しない。だから不審に思われた時にどう誤魔化したらいい物なのか未だに分からん。何か参考になる意見が有ったら教えてくれ
「どこ行くの兄さん」
「いや……自分の部屋で作業しようかと思って」
「なんで?」
「……暑いから」
「……そう」
何だよ暑いからって、この家の中基本どこに居ても一定の温度になってんだから暑いもクソもあるかよ! しかし俺の異変に気付いての事かイズミも深くは追及しないでいてくれた。きっと体調不良かか何かかと思ったんだろう、しかしそうなるとお見舞いに来てしまいかねないから鍵を掛けるのを忘れないようにな。よし、これで準備は整った。
では作業するフリをして買い漁った"叡智ビデオ"のサルベージ作業に入るとしますか
まず俺が何に重きを置いて作品を買うかという所だが、正直言ってパッケージ買いはお勧めできない。かなり修正されて別人になっている確率が99%。酷い物だとパッケージに映っている女優は短時間の物にしか出て来ないで、150分の超大作には影も形も存在しなかった残念女優が起用されている事もある。なので俺はもっぱらこれを最初に処理してしまうのだ
『人妻ナンパ~○○年ぶりのマジ交尾!!~ 男の人のって……こんなに硬かったっけ!?』
これは素人奥様詰め合わせみたいな作品で街頭インタビューを装ったスタッフに車内に連れられて行くと、そこでは下着調査だなんて丸め込まれ次第に身体にも触られ、最終的にはホテルで一戦……というのが大まかな流れだが、こういう系統には極稀に大当たりが混じっている場合がある。ギャンブルと分かっていながらもどうしてもその時の捗り具合が忘れられず何度も手を出してみるのだが……
出たな人妻(50)俺の守備範囲からは逸脱しておりしかも妖怪ぬっへほふのような体は見ているだけでもチン萎えを起こしてしまう。これを最初に味わっておかねば後に支障をきたすのだ。そもそも俺の趣味は人妻なのであって熟女ではない。
さぁ、それでは気を取り直してここからようやく抜きの候補に入っている作品群だ。マジックミラー系統は鉄板でありながらも期待値を下回る事も儘ある。これは最終的にピンとくるものが無かった時の妥協案としていつも購入しているのだが、今日はもう少し踏み込んだものにチャレンジしてみようと思う。
『兄妹で挿入まで!? 一つ屋根の下でムラムラしたら♂と♀』
そう、兄妹物に初めて手を出してみる。いつものソロプレイで候補に入らなかった理由としては俺にとってのイズミは妹というより一人の女性としての範疇。属性ではなく単一個体として抱いている訳で、もしかしたらそっちの方面でも行けるのでは? と試しに購入してみたがいかがなものだろうか?
『ちょっと……お兄ちゃん、入っちゃうよぉ……』
『ねぇ……キス、して?』
「う~ん……」
このカメラ撮ってる奴が気になって全然入り込めんわ……!!
なんで兄妹のプライベートスペースにこれほどの技術を持った撮影班が居るんだよ! ほんでお前らも違和感ないのか? なんか隣でカメラ構えてる男の人いるなぁ……とか思わんもんなのか? まぁ……フィクションっていうのは分かってるんだが、実体験も踏まえるとあまりにも無茶な状況すぎて……没入感が高すぎても反応しないんだな。これは参考になった、次に行かせて貰おう。
『僕の部屋がギャルのたまり場になって性処理まで無理矢理されてしまうオタク男子は実は巨根!?』
出来損ないのラノベみたいなタイトルしてるもんだからつい気になって買ってしまったよ。正直俺は根暗で人の言いなりになるタイプの人間でも無いし、海外に居ると日本人基準なら全員がギャルと言っても差し支えない性格の女ばかりだった。だから良い印象も無いしなんだっけこういうジャンル……逆レ〇プか、俺に力で勝てる女なんかいないんだから今後経験する事も無いだろうな。いわばフィクション中のフィクションって事だ。
『あぁ……はぁぁ凄いっス……』
『えぇちょっと待って……こいつのチ〇コ超やばっ……』
『うわマジすげぇじゃん、えぇ全部入ってるwやばぁw』
ん?
『おら早く出せよ次アタシだかんな♡』
『あっ……あぁ~イキマス!!』
『やっ……ッ~~~~♡』
「こ……これだ……!!」
気付けば俺は導入まで巻き戻し没入感を高め、この根暗な彼に自身を投影し抜きを始めた。自分の家を溜まり場にしていたギャルで今までどれだけ抜いて来たのか? 彼女らによって奪われた安息の場を取り戻す日なんて二度と来ないだろうと考えていた彼の胸中は察するに余りある。しかしある日訪れたのだ、青天の霹靂。
今まで自分を虐げてきたこの女共とて生物学上は♀、彼は手に入れたのだ彼女らに対抗できる♂としての武器を……!! このカタルシスを感じながら俺は映像上の彼と共に果てた。これは叡智作品を見ている者にとっての礼儀として古来から伝わる作法。相撲でいう蹲踞の姿勢に通ずる物とでも言おうか……今日は新たなジャンルの開拓という実りある一日だった。
(次は食わず嫌いしてた学校のマドンナ物にも挑戦してみようかな……)
「あら兄さん、もう良いの?」
「うん大丈夫終わった」
「そう、じゃあこっち終わらせといたから確認しといて貰える?」
「あぁ、イズミは?」
「トイレよ」
イズミが俺に作業を任せるって事はうんこか。長いんだよなイズミの。まぁ普段あれだけ食ってれば当然か、にしても毎回俺の部屋を経由してから行くのはなんでなんだ? あぁトイレットペーパーか。戸棚に保存してあるって言ってるのに頑なに俺の部屋から新品持って行くんだよな、女子ってそういう物なのか?
まぁこっちはスッキリしたし真面目に作業しておきますか……
「ただいま」
「随分とスッキリしてるな」
「兄さんもね」
「……ん?」
何事も溜めすぎは御用心。




