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第121話 マヨネーズ中毒者・大田まさみの末路

 


 今日という日も明日という未知も、何はともあれ通らねばならぬのが"食"という一本道…邁進するならばより高みを、と誰しも願うでしょう。ならばと私が手にしたのはそう、マヨでした



「大田さんまたそれ掛けるの? それ掛けちゃうと元の味なんてどうでもよくなるんだからティッシュでも噛んでなよ」


「なんでも良い訳無いじゃないですか! 元が美味しくなきゃマヨを掛けてもそれは美味しくないマヨなんですよ!」


「もうマヨ食べてるって言っちゃってるじゃない」



 最近になって揚げ物以外にもマヨネーズが合うんじゃないかと手広く攻めだして、今ではマヨネーズに合うお菓子を探している始末。『~マヨ味』という商品もあるにはあるんですが…なんというか私の想像しているマヨじゃなくて、酸味だけが抜き取られた『マイルドお酢味』って感じがしてあまり好みじゃないんですよねぇ…



 やっぱり自分で探し当てる楽しみに加えて、更にアレンジも施せる今のシステムこそが至高って訳ですよ!まぁそんな生活をしていたら久しぶりに作っていただいた大我さんの料理にも癖でマヨってしまい、絶賛怒られている最中なんですが…それに今も言っている通り、美味しくない料理にマヨをかけるとその効果がマイナスの方向に働いてとても食べられた物じゃないので、あながちその場しのぎの言い訳って事でも無いんですよ?



「大体大田さんが柿の種にマヨネーズ掛けてるのが信じられないんだよね…」


「そこは鉄板でしょうよ! そもそも七味マヨとか明太マヨって物があるんですから、舌に刺激的な辛味に対してマヨが合わない訳無いんですって!」


「だから自分でも言ってる様に、わざわざ柿の種に掛ける必要が無いって事だよ」


「これだからにわかは!」



 人の事を脳死で"マヨラー"扱いしてくる人っていうのは基本こちら側が異常者というバイアスの掛かった状態で意見をしてくるので、私がオススメした物が美味しかったところで「でも必要はないかな…」とか反発してくるんですよ!そりゃ美味しいから既製品として売り出されてる訳なんで、アレンジして元より美味しくなっちゃったらそれはそれで企業側の怠慢って事になるじゃないですか!?自分がどれだけ満足できるのか?っていう部分がアレンジにおいての終着点なんだから放って置いてくれないですかね!?



 という事を熱弁していると大我さんも「それはそうだ」と納得してくれたらしい。こういう所で素直に引く判断も出来るのが、私の良きライバルとして認めている部分でもありますね



「じゃあ俺も今度アレンジしてみるからそれを大田さんが採点してみてよ」


「え? なんですかその夢のような企画? お金払いませんからね?」


「流石にイズミの健康考えたら多量のマヨは食わせらんないからね…」


「あぁそういう…」



 それから数日の時間を空け、ついにマヨアレンジ品評会が開催される事となりました!



 どれだけ着飾った料理だろうとマヨ味に帰すという事で富裕層から忌み嫌われているこの庶民の味方が、様々な高級レストランで研鑽を積んできた一流料理人の手によって昇華される。その時をこれほど心待ちにしていた人間は、恐らく地球上にも数えるほどしか居ないはずです。



「じゃあ今日の前菜から食べて貰うんだけど、これ何か分かる?」


「これは…生の玉ねぎですね?」


「そう、オニオンサラダにはドレッシングをかけて食べる人が多いけど、マヨネーズだって野菜の味方だろう? だから今日はこれをアレンジしたソースで食べて貰おうと思う」


「楽しみにしています!」



 そう言って大我さんが準備する食材を見ていると私の中にある既視感が…これってもしかして"タルタルソース"の材料なんじゃ…?



「そう、これは玉ねぎのみじん切りを入れずに食感を残したタルタル"玉ねぎで食べるマヨネーズ料理"って訳さ」


「なんですかその意識高そうな料理は!? こんなの高級レストランで出てきたら騙される人続出ですよ!?」


「さぁ召し上がれ」



 これは確かに盲点でした…タルタルなんてお店で添えられるか既製品で食べる事が基本になっていたので、マヨから作られている事すら今思い出したくらいです…それにこの香りはゴマ?もしかしてマヨネーズを作る過程でサラダ油の代わりにごま油を加えて作ったのですか!?天才的すぎる…辛みを感じさせない下処理のされた玉ねぎからは甘みも感じられ、これだけマヨネーズを使っているのにヘルシーにさえ感じてしまいます!



 これが如月大我の料理力…否が応でも次の料理を期待させる出来栄え。あっぱれですね



「こういうのを連続で期待してたら悪いんだけど、こっからは家庭でも応用が利く庶民的な料理になるよ。しかも手軽にね」


「グレードなんて気にも留めてないですよ、勝手に期待させて貰いますので!」


「そう、それじゃあまずは適当に何肉でもいいから用意して貰って…」



 そう言うと大我さんはスーパーで買ったと思われるごく普通の豚バラ肉を広げて、その表面に市販のマヨネーズを塗っている。その上から何か茶色い粉をかけるとそのままオーブンの中に入れてしまった、これだけで調理が終わりだとでも言うんでしょうか?すると程なくして嗅いだ事の有るいい香りが鼻腔に駆け込んできて…



「これ…カレーですか…?」


「そう! 意外とカレー味とマヨネーズって合うんだよ。B級仲間っていうか…どっちも他の味を寄せ付けないくらい強烈な味だけどさ、これが上手く手を取り合うんだよ」


「へぇ~…あまり印象にないですね…」



 それを温かいご飯の上に乗せて追いマヨネーズをすれば完成『マヨカレー豚丼』の完成です。食べる前から美味しい匂いが立ち込めていざ食べてみるとやっぱり美味しい。なんてったってどちらも馴染みのある、それどころかどこか懐かしささえ感じるほどに予想通りの味。日本という国の庶民に産まれたとしたら、必然的に落ち着くのだ



「なんかいっつも札束ちらつかせて偉そうな大我さんからこういう料理が出て来るとは思いませんでした…」


「お前みたいな貧民が望んでも富豪にはなれないけど、富豪は自分の意思で下に降りるだけだから簡単なんだよ」



 なんてひどい事を。きっと友達がいないから私でストレスを発散しているのでしょう。これではイズミさんにDVする日もそう遠くは無いでしょうから、早く私の手で寝取らなければ…



 他にもこれからの季節、夏に冷えた野菜を食べる際なんかには味噌と合わせると美味しいらしい。にわかには信じられないのですが想像出来そうでもある絶妙なランクだ。今日はもう満腹ですが夏が来たら試してみようと思います。



 マヨネーズ、なんて素晴らしい調味料なのかと改めて感じられました。これからも様々な調理法に使って私も大我さんの様に布教できる側の人間になりたいものです



「おい、流石にアイスには使うなよ?」


「あっ…すいませんつい癖で」


「それはもう病気っていうのよ」



 …やっぱり少しだけ自重しようかと思います


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