16_レーニャにはお見通し
「サクラさん、きっとお母さん、サクラさんの顔を見て喜びますよ。」家に入ったサクラの前を歩きながら、女性が嬉しそうに声を上げる。
女性の後を着いて行くと、部屋の扉の前で女性が立ち止まり、「コンコン」と部屋の扉を叩いた。
「お母さん、入りますよ。」女性は扉に向かって声を上げると、扉を開いて中に入って行った。
女性の後を追って、俺を抱いたサクラが部屋の中に入る。
部屋の窓側にベットがあって、ベットから上半身を起こした姿勢の人が窓の外を見つめていた。
「こんにちわ、トゥルペ。」サクラが優しく声をかけると、その人はこちらを振り向いた。
「あぁ~、サクラさん。お久しぶりです。」振り向いた人はおばあさんで、サクラを見ると満面の笑みを浮かべた。
「トゥルペ、具合はどうですか?」サクラが優しくおばあさんに声をかける。
「はい、今日はとても良いのですが、ベットの上からは動くことが出来なくて、窓の外を見ておりました。」おばあさんは嬉しそうに笑顔でサクラに答える。
「隣に座って良い?」サクラはおばあさんに声をかける。
「はい、私の傍に来てください。」おばあさんは笑顔でサクラに声をかける。
サクラは黙って頷くと、おばあさんのベットに腰を下ろした。
「あら、サクラさん、その抱いている子猫は、なんですか?」おばあさんがサクラの腕の中の俺を見つめて、質問をする。
「この子は、レーニャちゃんて言うのよ。」サクラがおばあさんに答える。
「賢そうな目をしている。よろしくね、レーニャちゃん。」おばあさんが俺に優しく微笑んで、声をかける。
『よろしく~』俺はおばあさんに「ニャ~」と声をかける。
「あら?サクラさん、レーニャちゃんが、私に挨拶してくれました。」おばあさんが嬉しそうな声を上げる。
『ばあちゃんは、病気なの?』俺はサクラの腕からベットの上にヒョイと降りると、おばあさんに近づいて「ニャー?」と声をかける。
「あらあら、レーニャちゃん、私を心配してくれてるの?」おばあさんはそう言って、手を伸ばすと俺の頭を優しく撫でてくれた。
「レーニャちゃんは、可愛い子ですね。」おばあさんは今度は俺の喉の辺りを優しく撫でる。
『あっ、あっ、気持ちいい~』俺は「ゴロゴロ」と喉を鳴らす。
「すごく人に馴れているんですね。」女性が声を上げる。
「そうなのレーニャちゃんは、不思議な子でね。人見知りしないのよ。」サクラがおばあさんに撫でられて、喉を鳴らす俺を見つめて声を上げる。
「あっ!そうだわ、トゥルペ。私ね、これからカバリヤの町まで、行かないといけないのよ。私がカバリヤの町で、用事を済ませて帰ってくるまで、レーニャちゃんをあずかってもらえないかしら?」サクラがおばあさんに声をかける。
『えっ!サクラ、俺をここに置いて行く気か!』俺はおばあさんに撫でられて、気持ちよかったが直ぐにサクラの膝の上に載る。
「あら、レーニャちゃん、どうしちゃったの?」おばあさんがサクラの膝の上に載った俺に声をかける。
『ばあちゃん、ごめんね。俺はサクラと町に行くの!』俺はおばあさんに「ニャー!」と答える。
「サクラさんが言ったこと、わかったんですかね。」女性がサクラの膝の上の俺を見つめて、声を上げる。
「レーニャちゃんには、私の計画はお見通しってことかしら?」サクラは膝の上の俺の頭を撫でながら声をかける。
『あっ!サクラは、初めから俺をここに置いていくつもりだったのか~』俺はサクラのエプロンに前足の爪をたてて、「ニャ~!」と声をかける。
「ごめんね、レーニャちゃん、町まで行こうって約束したもんね。」サクラが俺の頭を撫でて優しく声をかける。
『そうだぞ、約束は守らないとダメだぞ~!』俺はサクラに「ニャ~!」と声をかける。
「サクラさん、馬の準備が出来ました。」部屋の中に男性が入ってきて声を上げる。
「ありがとう、ザイル。それじゃ。レーニャちゃん、行こうか?」サクラが俺を優しく抱いて、声を上げる。
「サクラさん、レーニャちゃんを抱いたまま馬に乗るつもりですか?」おばあさんがサクラに声をかける。
「ええ、そのつもりだけど…」サクラがおばあさんを見つめて答える。
「いけません、レーニャちゃんがいくら頭の良い子でも、馬から落ちてしまうかもしれません。そうだ、ネルケ、タンスの一番上にある布を出してくれないかい。」おばあさんが女性に声をかける。
「あっ!、ハイ。」女性は部屋の隅にあるタンスの一番上から、少し大きめの布を出す。
「お母さん、この布でよろしんですか?」女性が布を見せて、おばあさんに確認する。
「そうそう、それそれ、あと一緒に両端に輪っかが付いたベルトがあるでしょう。それも一緒に持ってきてくれるかい。」女性はタンスからおばあさんに指示されたものを、おばあさんのところに持って来ると渡した。
『なんだ、あの布?』俺はおばあさんが手に持った布をマジマジと見つめる。




