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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第3章 3日目

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13_本能には勝てないのか…


「レーニャちゃん~、ホラホラ~」サクラの声と共に、椅子の下から見える視界にそいつは突然現れた。

『な、なんだこれ!』俺はフリフリと動くそいつに目が釘付けとなる。

「レーニャ、出てこないじゃん。」エルシアの声が聞こえる。

「まぁまぁ、エルシア様、少しお待ちください。」サクラの声も聞こえるが、俺の目はそいつを見つめたままである。


『ん!動きが止まった。』俺は椅子の下を、移動するとそいつを前足で掴もうとする。

「おっと、危ない!」サクラの声と共に、そいつは前足が振れる寸前に視界から消える。

「やだ、レーニャ、椅子の下から前足だけ出してる。」エルシアの嬉しそうな声が聞こえる。

「あら、引っ込んじゃった!」俺が椅子の外に出した前足を椅子の下にひっこめると、エルシアが驚いた声を上げる。


「エルシア様、ここからです。」サクラが声を上げると、覗いている椅子の下の少し先にそいつが現れる。

『さっきから、な、なんなんだ、これは…、む、無性に触りたい。』俺はそいつに向かって、椅子の下からまた前足を出す。

『ん!今、俺の前足が触れたぞ!ここは、たたみかけるぞ!』俺は反対の前足でそいつを狙う。


『ありゃ!』そいつは俺の前足をかいくぐって、またフリフリと動いている。

「あら、レーニャの前足が両方、椅子の下から出てきた!」エルシアが嬉しそうに声を上げる。

「フフフフ、レーニャちゃん、こっちですよ~」サクラが少し離れた場所にしゃがむと、床の上でそいつがフリフリと動き出す。


『うぉりゃー!』俺は椅子の下から、飛び出すとそいつに向かって猛ダッシュする。

「ホイ!」サクラの声と共にそいつが視界から消える。

『ど、どこ行った!』俺は辺りをキョロキョロする。

「アハハハハ、やだ、レーニャ、探してる~」エルシアが楽しそうに笑いながら声を上げる。


「レーニャちゃん、探し物はどこですか~」サクラが俺に向かって声をかける。

『ん!頭の上になにかが、載ってるような…』俺は頭頂部に異常を感じて、上を見上げるとそいつがいた。

『そこに、いたのか!』俺はそいつを両方の前足で掴もうとするが、そいつは俺の前足をスッと避ける。


「ねぇねぇ、サクラ、それはなんなの?」エルシアがサクラに質問をする。

「これは、エノコログサです。通称、猫じゃらし!どんな猫でも、これを目の前で振ると飛びついてきますよ。」サクラが楽しそうに声を上げる。

『お、おのれ~、今度こそ捕まえてやる!』俺は頭の上でフリフリ動くそいつに、ジャンプして飛びつくが少し届かない。


「レーニャちゃん、残念~」サクラが嬉しそうに声を上げる。

「ねぇ、サクラ、それ私にも貸してよ~」エルシアが駄々っ子のような声を上げる。

「いいですよ~、但し、報告書が出来上がったら、お貸ししましょう。」サクラが少し意地悪そうに声を上げる。

「えぇ~、報告書書かないとダメ~」エルシアが嫌そうな声を上げる。


「はい、報告書を仕上げるのが先です。」サクラがエルシアに答えながら、俺の頭の上でそいつをクルクルと回す。

「わかったわよ~、フフフフ、レーニャさっきから頭クルクル回しちゃって、可愛い~」エルシアが笑いながら声を上げる。

『目が離せない~』俺は頭の上でクルクル回るそいつの軌跡を、さっきから頭を回して追いかけていた。

「はい、ここまで。」サクラが声を上げると、そいつは姿を消した。


『あれ?どこ行った?』俺は上を見つめてキョロキョロする。

「エルシア様、無駄ですよ。」サクラが声を上げる。

『ん!どうした?』俺がエルシアとサクラを見ると、エルシアがサクラの背後を見つめたまま固まっていた。

『なんだ?エルシアが背後からサクラを襲おうと、してたのか?』俺はエルシアとサクラを交互に見つめる。


「わかりました、報告書を仕上げます。」エルシアが大きな溜息をついて、声を上げる。

「エルシア様、よろしくお願いします。」声を上げるサクラを見つめると、なぜか右手を頭の後ろに隠している。

『ん!そうか、サクラそいつを隠してるな~』俺はサクラに「ニャ~」と声をかける。

「あら、レーニャちゃんどうしたの?フフフ。」サクラは左手で俺を抱き上げると、立ち上がった。


「さぁ!エルシア様、机の方へ。」サクラがエルシアに声をかける。

「ハイハイ。」エルシアが気だるそうに大きな机に向かって歩き出す。

『いまだ!』俺はサクラの左腕から、サクラの胸の上に載って背後に周ろうとする。

「ダメですよ、レーニャちゃん。」俺はサクラに首の後ろをつままれて、体の自由が奪われる。


「そうだ、エルシア様。レーニャちゃんは、連れて行きますね。」サクラが声を上げる。

「えぇ~、なんでよ!」エルシアがサクラに声をかける。

「レーニャちゃんが、傍にいたら、また報告書の仕上がりが、遅くなるんじゃないですか?」サクラが冷たくエルシアに声をかける。「サクラの意地悪!」エルシアがむくれて声を上げる。


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