09_レーニャとお遊ぼう!
エルシアはフレヤに言われたとおりに、俺をキッチンの床に下ろす。
『なに?なにするの?』俺はフレヤを見つめて、心の中で呟く。
「レーニャ、ホレホレ。」フレヤはポケットから、頭に被っていた布を出すと俺の目の前で上下左右に振る。
『ん?』俺はフレヤの振る布の軌跡を目で追い始める。
「ホーレ、ホーレ!」フレヤは布をだんだんと、大きく上下左右に振り出す。
『や、やばい、無性に飛びつきたくなる。』猫の本能が目覚めたのか、俺は布の動きに合わせて首を振って布を追いかける、
「やだ、エルシア様、レーニャちゃん可愛い~」サクラがエルシアに声をかける。
布の動きがピタッと止まる、『ここだぁ~!』俺は布に向かって飛びつく。
「ホイ!」フレヤが俺の前足が布に届く瞬間、布を上にあげる。
『ありゃ!』俺の前足は空をきり、俺は床に着地する。
「レーニャ、こっち、こっち。」フレヤが布を振りながら、俺に声をかける。
『今度こそ!捕まえる!』俺はフレヤの布に向かって、飛び上がるがもう少しのことろで届かない。
「ほーら、レーニャ、ここまで、飛べるか?」フレヤが布を高い位置で止める。
『うりゃ!』俺は力をためて、飛び上がるがフレヤの布に届くことが出来ずに、床に着地する。
『待てよ、それならば!』俺はフレヤに飛びつくと、フレヤの体をよじ登る。
「あらら、レーニャ!」フレヤが驚いた声を上げるが、俺は構わずフレヤの体をよじ登る。
『ここだ!』フレヤの手に持った布が、届く位置に来たのを確認すると、そこから俺は布に飛びつく。
『とったどぉー!』俺は心の中で叫びながら、前足で布を掴むとそのまま布に噛みつく。
「もう、レーニャ、ビックリしたじゃない。」布に噛みついて、ぶら下ってる俺をフレヤがやさしく腕の中に抱きしめる。
『こいつめ、もう離さないぞ!』俺は布に噛みついたま、「ウウウウウ」と声を上げる。
「エルシア様、わかりましたか?」フレヤがエルシアに声をかける。
「うん、レーニャとはそうやって、遊べばいいのね。」エルシアが嬉しそうに声を上げる。
「いえ、そこじゃないです。」フレヤが少し呆れた声を上げる。
「え、そこじゃないって、どこ?」エルシアが首を傾げて、声を上げる。
「レーニャのジャンプ力です。レーニャがこの布に向かってジャンプしましたが、どのぐらいの位置までジャンプできたか、わかりました?」フレヤがエルシアに確認する。
「……、ごめんなさい、レーニャのことしか、見てなかった。」少しの沈黙の後、エルシアがバツが悪そうに声を上げる。
「サクラは、わかった?」フレヤがサクラに確認する。
「フレヤ、良いですか、レーニャちゃんのあのような仕草を見て、」サクラが話しだしたが、「見てなかったのね。」フレヤがバッサリ切り捨てる。
「はい…」サクラはバツが悪そうに返事をする。
「いいですか、今のレーニャはジャンプをしても、私の腰当たりにやっと前足がかかるか、かからないかの位置までしか、飛び上がれません。それで、竈の高さですが、私の腰より少し高いです。」フレヤが説明をする。
「今のレーニャでは、竈の上に飛び乗るのは無理ってこと。」エルシアがフレヤに確認する。
「はい。」フレヤが答える。
「ねぇ、さっきフレヤをよじ登ったみたいに、レーニャちゃん竈をよじ登ったんじゃないの?」サクラが質問する。
「私も最初それを考えたんだけど、竈の表面は漆喰を塗ってるから、レーニャはよじ登れないわ。」フレヤが溜息をついて、サクラに答える。
「ねぇ、ねぇ、テーブルの上から、竈の上にジャンプしたんじゃない?」エルシアが声を上げる。
「う~ん、やってみましょうか?」フレヤはそう言うと、腕の中で布を噛んだままじゃれている俺の首の後ろを、優しく摘まんで持ち上げる。
『あぁ~』俺は体の力が、抜けてちょっと気持ちよくなる。
「フレヤ、レーニャのそんなところ摘まんで、持ち上げて大丈夫なの?」エルシアが驚いた声を上げる。
「エルシア様、大丈夫ですよ。親猫がよくあんな感じで、子猫の首の後ろを口にくわえて、運んでいるのを見ますから。」サクラがエルシアに説明する。
「痛くないのかしら?」エルシアが心配そうに声を上げる。
「さぁ、痛いかどうかはわかりませんが、運ばれてる子猫はみんなあんな感じで、おとなしいですよ。」サクラが答える。
「レーニャ、それじゃ次の実験だよ。」フレヤは俺をテーブル上に載せると、優しく俺の頭を撫でてくれた。
『あっ、気持ちいい~』俺は気持ちよくなって、テーブルの上で横になった。




