08_迷?探偵サクラ
「エルシア様、私の話を聞いてもらえますか?」サクラがまた額に指をあてて、声を上げる。
「聞いてるじゃない。だから、なんなのレーニャが犯人って、なんの犯人なの?」エルシアが少し呆れた感じで、サクラに声をかける。
「はい、それでは説明しましょう。」サクラがスッと立ち上がると、エルシアとフレヤも立ち上がる。
「まずは、テーブルの上のお椀とお皿を見てもらえますか。」サクラがテーブルを指して、声を上げる。
エルシアとフレヤはマジマジとテーブルを見つめる。
「なにか、お気づきになりませんか?」サクラがエルシアとフレヤに質問をする。
「レーニャが綺麗に食べたお椀と、私が食べかけのご飯が置いてあるわ。」フレヤが答える。
「う~ん、そうなんです。レーニャちゃんは、ご飯を綺麗に食べ終えた。」サクラは右手の人差し指を立てて、声を上げる。
「それで?」エルシアが首を傾げて、サクラに質問する。
「はい、レーニャちゃんは、まだ子供です。子どもと言うのは、食べ盛りです。」サクラが説明を始めたが、俺もエルシアもフレヤもキョトンとして聞いている。
「先ずレーニャちゃんは、自分のご飯を食べ終える。お腹いっぱいになったかなぁ~、でも、もう少し食べたいかなぁ~、などと思ったところ。」サクラが小芝居を交えて説明を続ける。
「思ったところ、どうしたの?」エルシアがサクラに質問をする。
「あっ!まだ、フレヤが食べている鳥団子があるじゃない。と、レーニャちゃんが気が付くわけです。」サクラが説明を続ける。
「それで?」エルシアがサクラに質問する。
「はい、レーニャちゃんはとても賢い子です。フレヤの食べているお皿から、鳥団子をいただくには、どうしようかと考えるわけなんです。」サクラは右手の人差し指を立てて、エルシアとフレヤを見つめて声を上げる。
「そこで、レーニャちゃんは、昨日フレヤが気を失ったことを思い出した。なにも無いところに向かって、ニャーと鳴けばフレヤが気を失う、そのすきに鳥団子をいただこうと、犯行を思いついたわけです。」サクラの自信満々な表情とは反対に、エルシアとフレヤは無表情でサクラを見つめる。
「おわかりいただけましたか、これは賢いレーニャちゃんだから、できた犯行なのです。」サクラが説明を終える。
「それで、レーニャが鳥団子を食べた証拠はあるの?」フレヤがサクラに質問をする。
「えっ!」サクラは声を上げると、テーブルの上のミートボールが残った皿を見つめる。
「お皿の中の鳥団子をレーニャが食べようとしたら、トマトソースが足に付くでしょう。そしたら、テーブルの上とかに、レーニャの足跡とか残るんじゃない。」フレヤが冷静な説明をすると、サクラはテーブルの上をキョロキョロと見渡す。
「サークーラー」エルシアが抑揚のない声をサクラにかける。
「こ、これは、失礼しました。」サクラがエルシアに向かって頭を下げる。
「まったく、レーニャがいくら賢くても、そんなこと考えるわけないでしょう。ねぇ、レーニャ。」エルシアが腕の中の俺に声をかける。
『そうだ、そうだ!』俺はサクラに向かって、「ニャー!」と声を上げる。
「それより、どうしてエルシア様とサクラが、ここに来たんですか?」フレヤがエルシアとサクラに質問をする。
「それは、レーニャが私たちを呼びに来たからよ。」エルシアが答える。
「えっ!レーニャがですか?」フレヤがエルシアの腕の中の俺を見つめて、声を上げる。
「そうそう、フレヤが作った専用の出入り口を使って、レーニャちゃんが書斎に入ってきたら、また直ぐに廊下に出て、いつもと違う鳴き方するから、エルシア様と2人でなんだろうと思ってね。」サクラが説明を始める。
「そう、それで廊下に出たレーニャを、サクラと追いかけてきたら、キッチンであなたが倒れていたのよ。」エルシアが説明を終える。
「食堂のドアは閉まってましたよね?」フレヤがエルシアとサクラに質問する。
「そうね、閉まってたわ。」エルシアが答える。
「ねぇサクラ、キッチンのドアって、閉まってる?」フレヤがサクラに質問する。
「うん、さっきも見たけど閉まってたわよ。えっ!」サクラが答えると、3人が俺を黙ったまま見つめる。
「もう、フレヤ。窓が開いてるじゃない、レーニャちゃんは、あの窓から外に出たんじゃないの。」サクラが竈の上の空いた窓に気が付いて、窓を指して声を上げる。
サクラの声を聞いて、フレヤは竈の上の空いた窓を見たが、その後は俺を黙ってジッと見つめる。
『なに?どうしたのフレヤ。』俺はフレヤから視線を外すと、辺りをキョロキョロする。
「エルシア様、レーニャを床に下ろしてもらえますか。」フレヤがエルシアに声をかける。
「フレヤ、どうしたの?」エルシアがフレヤに質問する。
「ちょっと、実験をしたいんです。」フレヤがエルシアに答える。




