19_空を見上げて
「しかし…、刀身を見せて貰って、これが300年以上前に作られた刀なのかと、正直私も驚きました。」ルンゼが声を上げる。
「私も驚きました、こんな綺麗な刃文は、今まで見たことはありません。」ラインが声を上げる。
『ハモン…、好きだったよ、坊や…って、なんだこれ?』俺は首を傾げる。
「ライン、なんと呼ばれる刃文かわかるか?」ルンゼがラインに質問をする。
「勿論よ!ニオイデキって、呼ばれてるんでしょう。」ラインが答える。
「うん、そうだ。」ルンゼが嬉しそうに声を上げる。
『ニオイデキ…、臭いのかな?…』俺は心の中で呟く。
「あぁ!ねぇ、サクラ、そのフトコト刀に、私が名前を付けても良いかしら?」エルシアが嬉しそうに声を上げる。
「エルシア様、懐刀です。」サクラがエルシアに声をかける。
「ん?…、だから、フトコト刀でしょう?…」エルシアが首を傾げる。
『エルシア、ひょっとして、懐刀って言えないの?』俺はエルシアを見つめる。
「エルシア様…、フ・ト・コ・ロ・刀です。」サクラがエルシアに声をかける。
「えっ!あれ?…」エルシアがキョトンとした顔をして、ルンゼとラインを見つめると2人とも顔を両手で覆って、俯いて肩を震わせていた。
『ん?エルシア、どうした?』エルシアが俺をジッと見つめる。
「レーニャ、フトコト刀で合ってるよね?」エルシアが俺に確認する。
『いいえ、懐刀です!』俺はエルシアに「ニャ、ニャ!」と答える。
「えっ…、違うの?…」エルシアが俺を見つめて声を上げる。
「ダ…、ダ…、ダメ~!」サクラが声を上げて、裏庭の塀を飛び越えてどこかに消える。
『あら?サクラのツボに入ったみたい…』俺は心の中で呟く。
「あらま…」エルシアが声を漏らす
『あら…、みんな驚いてるな…』俺がルンゼとラインを見つめると2人とも、ポカンとサクラの消えた塀を見つめていた。
「流石は、サクラさんだ…」ルンゼが声を漏らす。
「そうね、サクラなら、このぐらいの高さの塀は、簡単に飛び越えるわね。」エルシアが声を上げる。
「でも…、エルシア様、サクラさんどこに行っちゃったんですか?」ラインがエルシアに質問をする。
「あぁ…、大丈夫よ。ちょっと待っていれば、帰って来るわよ。」エルシアが答える。
『普通の人なら、この高さの塀は、飛び越えられないよな…』俺は消えた塀を見つめて、心の中で呟く。
「そうだエルシア様、懐刀の名前はなんですか?」ルンゼがエルシアに質問をする。
「うん、サクラいなくなっちゃけど…、名前はねクモキリってどうかしら?」エルシアが答える。
「ほぉ…、クモキリですか…」ルンゼが声を漏らす。
「そう、あの刀が折れたのは、帝都で大きな蜘蛛を切ったことが原因なのよ。」エルシアが声を上げる。
「あぁ…、その話なら、とても大きな蜘蛛が現れて、サクラさんがその蜘蛛の足を切り落としたと…。しかし…、そのせいで、ヒメツルの刀身が折れてしまったと…、フレヤさんか聞いています。」ラインが声を上げる。
「なんと…、サクラさんの剣技を持ってしても、刀が折れるとは…」ルンゼが声を漏らす。
「とてもやっかいな蜘蛛だったわ…」エルシアが声を漏らす。
『うん、あんなやつとは、2度と会いたくないわな…』俺が心の中で呟く。
「でも、最後にはエルシア様が、炎の魔法でその大きな蜘蛛を焼いて、倒したんですよね?」ラインがエルシアに声をかける。
「あぁ…、まぁ…、そうね…」エルシアがバツが悪そうに答えて、俺を見つめる。
「クモキリ…、私は良い名前だと思います。」ルンゼが声を上げる。
「ホント!サクラも気に入るかしら?」エルシアが嬉しそうにルンゼに確認する。
「はい、但し、クモはクモでも、大きな蜘蛛ではなく、あの空に浮かんでいるような雲を切るような…、そんな名前の方が良いかと思います。」ルンゼが空を見上げて答える。
「そうか、あの雲を切るか…」エルシアが空を見上げて声を上げる。
「はい、私の作った刀が、空高く吹き抜ける風、アマツカゼですから、その懐刀の名前がクモキリとは、良い名前だと思います。」ルンゼが声を上げる。
『雲を切るか…』俺も空を見上げて心の中で呟く。
「フフフ…」ラインが笑い声を上げる。
「ライン、どうしたのだ?」ルンゼがラインに声をかける。
「いや…、あの…、エルシア様とおじぃちゃんが空を見上げていたら、その子猫も一緒になって空を見上げていて、こちらから見ていて、なんでしょうかね…」ラインが嬉しそうに笑いながら答える。
「あらま、レーニャも、今空を見上げていたの?」エルシアが俺に声をかける。
『うん、見てたよ!』俺はエルシアに「ニャー!」と答える。
「フフフ…、そうだレーニャ、あのフトコト刀の名前はね、クモキリよ!」エルシアが俺に声をかける。
『いや…、クモキリは良いけど、懐刀だよ!』俺がエルシアに「ニャ、ニャ!」と答える。
「えっ!クモキリじゃ、ダメなの?…」エルシアが俺に確認する。




