40_こいつ、すっとぼけた…
「いつもは、牛肉で作るのですが、今日は鶏肉で作ってみました。エルシア様、お味はどうでしょうか?」サクラがエルシアに声をかける。
「うん、鶏肉でも美味しいわよ。」エルシアが答える。
『あれは…、ロールキャベツ…』俺はエルシアが食べているものを見つめて、心の中で呟く。
「あら、レーニャ、どうしたの?レーニャもドルマが食べたいの?」エルシアが俺に声をかける。
『えっ!ドルマ…。あれって、ロールキャベツじゃないのかよ…』俺がエルシアが食べているものを見つめて心の中で呟く。
「レーニャ、どうしたの?」エルシアが俺に声をかける。
『あぁ…、遠慮しときます!』俺はエルシアに「ニャ、ニャ!」と答えると、お椀の中の茹でた鶏のひき肉を食べる。
「サクラ、ひょっとして、このトマトソースが血に見えたとか?」エルシアがサクラに声をかける。
「エルシア様、前にもトマトソースの料理は、レーニャちゃん見てますから、大丈夫だと思いますよ。」サクラが答える。
『トマトソースは、知ってるが…、ドルマってなんだ?…』俺はお椀の中の鶏のひき肉を食べながら心の中で呟く。
「サクラ、フレヤはまだ工房なの?」エルシアがサクラに質問をする。
「そうですね、先ほど工房に言ったら、食事は作業の合間にとるからと言われました。」サクラが答える。
「あら…、今夜も忙しいのかしら?…。そうだ、後で様子を見に行こうかしら…」エルシアが声を上げる。
「あぁ…、エルシア様、それなんですが、フレヤから工房には近づかないようにと、言われてるんですよ。」サクラが声を上げる。
『えっ!なんだ?…。工房に近づくなとは…』俺はお椀の中の鶏のひき肉を食べながら心の中で呟く。
「えっ…、サクラ、それは、どういうことかしら?」エルシアがサクラに質問をする。
「フレヤからは、危険だからと言われております。」サクラが答える。
「危険…、サクラ、なにが危険なの?」エルシアがサクラに質問をする。
「あぁ…、私もフレヤに詳しくは聞いておりませんので、なにが危険なのかはわかりません。」サクラが答える。
『なにが危険なんだろう…、エレクラなら、わかるかな…』俺はお椀の中の鶏のひき肉を食べながら心の中で呟く。
「サクラ、フレヤはカゾの村で、カイコ小屋の床下の土を取ってきたのよね?」エルシアがサクラに声をかける。
「はい、そうですね。」サクラが答える。
「サクラ、カイコ小屋の床下の土って、なにか危険なものなの?」エルシアがサクラに質問をする。
「はて…、床下の土ですからね…、私にもわかりませんね…」サクラが答える。
『カイコ小屋…。あっ!絹糸って言ってたな…。フレヤ、はたでも織るのかな…、フレヤの恩返し?…。そんなわけは、ないか…』俺はお椀の中の鶏のひき肉を食べながら心の中で呟く。
「あっ…、サクラ、フレヤの食事はどうするの?」エルシアがサクラに質問をする。
「あぁ…、それなら、台所に置いておくように言われております。」サクラが答える。
「台所に置いておけば、フレヤは勝手に食べに来るってこと?」エルシアがサクラに確認する。
「はい、その通りです。」サクラが答える。
「そうか…、ふ~ん…」エルシアが溜息交じりに声を上げる。
「エルシア様、どうされたんですか?」サクラがエルシアに声をかける。
「いや、明日は、なにをしようかと思って…」エルシアが答える。
「はい…。エルシア様、まだ請願書は残ってるんじゃ、ないんですか?」サクラがエルシアに声をかける。
「あれは、来週までに片付ければ、良いのよ。」エルシアが答える。
「エルシア様、明日にはまた、新しい請願書を私が貰って来るんですよ。」サクラがエルシアに声をかける。
「そうね…、明日にはまた今週分が…」エルシアが溜息交じりの声を上げる。
「エルシア様、どうされたんですか?」サクラがエルシアに質問をする。
「いやね…、この生活がいつまで続くのかと…、そう思っただけよ…」エルシアが溜息交じりに答える。
「それはエルシア様が、領主をお辞めになるまでだと思いますよ。」サクラが声を上げる。
「そうか…、領主を辞めるには、どうしたら良いのかしら…」エルシアが溜息交じりの声を上げる。
「それは、新しい領主を…、あっ!エルシア様!」サクラがエルシアに声をかける。
「ん?サクラ、どうしたの?」エルシアがサクラに確認する。
「そういえばエルシア様、昔フレヤに領主をやらせようと、してませんでした?」サクラがエルシアに声をかける。
『あっ!そういえばエルシア、フレヤに領主やってみないって、言ってたな…』俺はお椀から顔を上げてエルシアを見つめる。
「えっ…、そんなこと、あったかしら…」エルシアがサクラから視線を外して答える。
『あっ!こいつ、すっとぼけた…』俺がサクラを見つめると無表情でエルシアを見つめていた。




