27_今度は、不正解なの?
「そうなんだ…。紹介されたときに、ヒコタロウがステキに見えたとか…、そんな感じ?」エルシアがスミレに質問をする。
「いえいえ、そんな感じではございません。なんかこう…、私はこの人と一緒に暮らすだって…、漠然とした…、感じでしょうかね…」スミレが答える。
「漠然…」エルシアが声を漏らす。
「はい、言葉では言い表せない感じでございます。そう、あの感じは…、好きだとか嫌いだとかとも…、少し違う感じでございました。」スミレが説明をする。
「つまり、それが縁ということ?」エルシアがスミレに確認する。
「はい、私はそう考えております。」スミレが答える。
「う…ん、縁か…」エルシアが声を漏らして、真っ直ぐに前を見つめる。
『なるほど…、縁ね…』俺は心の中で呟く。
「エルシア様、つまらない話をお聞かせして、申し訳ございません。」スミレがエルシアに声をかける。
「ううん、つまらなくなんてないわ。スミレ、ありがとう!」エルシアがスミレに嬉しそうに微笑んで声をかける。
『なんか、ヒントになったのかな…』俺はエルシアを見つめて心の中で呟く。
「あら…、スミレ、良い風が吹いてきたわ…」縁側に優しい風が吹いて、エルシアがスミレに声をかける。
「はい、左様でございますね。」スミレが答える。
『うん、気持ちい風だ…』俺が心の中で呟く。
『レーニャ、私のこと呼んだ?』声が聞こえて見つめるとアネモスが目の前にフワフワと浮いていた。
『うわっ!』俺は驚いてエルシアの膝の上に立ち上がる。
「あら、レーニャ、どうしたの?」エルシアが俺に声をかける。
『あっ!なんでもない!』俺はエルシアに「ニャ、ニャ!」と答える。
「そう…」エルシアが俺の頭を優しく撫でる。
『ズッと私のこと見ていて、そんなに驚くことはないでしょう。』アネモスが俺に声をかける。
『いや、そうだけど…、さっき呼んだときには、返事しなかったじゃん。』俺が答える。
『あぁ…、まぁ…、ちょっと…、考えごとしてたからね…』アネモスが溜息交じりの声を上げる。
『そうだアネモス、ミンツチに聞いたけど、まだエレクラとコイケヤのこと、怒ってるの?』俺はアネモスに質問をする。
『怒る…。そうね…、今回は私も言い過ぎたわ…』アネモスが溜息交じりに答える。
『それじゃ…、もう、怒ってないの?』俺はアネモスに確認する。
『うん…、怒ってないわよ。さっき、このスミレって娘の話を聞いて…、怒ってることが、ばかばかしくなっちゃったわ。』アネモスが溜息交じりに答える。
『娘?スミレは、おばぁちゃんだよ?』俺がアネモスに確認する。
『レーニャ、なにを言ってるのよ。私にとっては、人なんてみんな子どもよ。』アネモスが答える。
『あぁ…、そうか…、エレメントはスミレなんかより、年寄りなんだ…』俺は心の中で呟く。
『はい、年寄り?』アネモスが俺をジッと見つめて声をかける。
『あぁ…、いや…。うん、アネモスたち、エレメントはもう数100年…、いや数1000年もこの世界にいるんだもんね。人なんて、アネモスたちにとっては、みんな子どもなんだね。』俺が答える。
『レーニャ、そういうあなたも、私たちにとっては一緒よ。』エレクラが俺に声をかける。
『そうか…、俺もアネモスにとっては、一緒なのか…』俺は心の中で呟く。
『まぁ、レーニャの場合は、私たちとこうやって、話すことが出来る、特別な存在だけどね。』アネモスが俺に声をかける。
『そうだアネモス、スミレの話を聞いて、なんで怒ってることが、ばかばかしくなっちゃったの?』俺はアネモスに質問をする。
『縁よ…』アネモスが溜息交じりに答える。
『縁になにかあるの?』俺はアネモスに確認する。
『ねぇレーニャ、あなたは縁って、なにかわかるの?』アネモスが俺に質問をする。
『えっ!それは、気が付いたら一緒にいるとか…。うん、俺がエルシアと一緒に暮らしているとか…。そうだ!こうやって、アネモスと出会えて一緒にいることだと、俺は思うよ。』俺が答える。
『フフフ…、レーニャ…、大正解よ。』アネモスが俺に優しく声をかける。
『おぉ…、大正解!』俺は少し嬉しくなる。
『そう、坊やが…、アルベルト王がね…、昔私に言ってくれたのよ…。アネモスに出会えたのは…、縁だと…。そう…、大事なのは思い出じゃなかったのよ…』アネモスが哀しそうに声を上げる。
『アネモス…』俺はアネモスを見つめて心の中で呟く。
『レーニャ、出会えたこと…、一緒の時間を過ごせること…、短くても長くても、それが1番大事なんだって…。縁とはそう言うものだと、坊やが言っていたわ…』エレクラが説明をする。
『でも、それって思い出なんじゃないの?』俺がエレクラに確認する。
『フフフ…、レーニャ、不正解!』アネモスが笑って答える。
『えっ!…、今度は、不正解なの?…、なにが違うんだろう?』俺は首を傾げる。




