24_エルシア、元気出せ!
「フレヤおねぇちゃん、いってらっしゃ~い!」荷車を付けたハルナが走り出すと、アヤメが声を上げて手を振る。
「それでは、エルシア様、こちらへ…」スミレがエルシアに声をかけて、アヤメと一緒に前を歩き出す。
『あっ…、アネモス…』俺が上を見つめるとアネモスが、歩くエルシアと一緒にフワフワと付いてくる。
「おばぁちゃん、フレヤおねぇちゃん、レーニャちゃん連れて来てくれたね。」前を歩くアヤメが嬉しそうにスミレに声をかける。
「アヤメ、良かったね~」スミレが微笑みながら答える。
『おばぁちゃんと孫って、見てて微笑ましいな…』俺は前を歩くスミレとアヤメを見つめて心の中で呟く。
「そうだ、エルシア様、本日はどのようなご用件で、いらっしゃったんですか?」スミレが振り返ってエルシアに声をかける。
「あぁ…、そうね…」エルシアが溜息交じりに返事をする。
『えっ!子猫を見に来たんじゃないの?』俺は心の中で呟く。
「大事な話であれば、主人とゲンジロウを呼んできましょうか?」スミレがエルシアに確認する。
「あぁ…、そんな大事な話はないわよ。」エルシアが答える。
「そうだ、エルシア様、家に子猫がいるんですよ。」アヤメが振り返って嬉しそうにエルシアに声をかける。
「あらま、子猫がいるの~」エルシアが嬉しそうにアヤメに声をかける。
『いや、エルシア、子猫見に来たんだろう…、なにすっ呆けてんだ?…』俺はエルシアを見つめて心の中で呟く。
「はい、レーニャちゃんより、小さくて可愛いんですよ。」アヤメがエルシアに説明をする。
「あら、レーニャより、可愛いの?」エルシアがアヤメに声をかける。
「こら、アヤメ、レーニャちゃんは、レーニャちゃんで可愛いでしょう。」スミレがアヤメに声をかける。
「あっ!そうだった…。エルシア様、レーニャちゃんも可愛いです。」アヤメがバツが悪そうにエルシアに声をかける。
「フフフ…、そう、アヤメにとっては、レーニャも可愛いのね?」エルシアが優しくアヤメに声をかける。
「は、はい!レーニャちゃん、可愛いです。」アヤメが答える。
「フフフ…、そうだ、そうしたら、その可愛い子猫に会わせて貰えるかしら?」エルシアが嬉しそうにアヤメに声をかける。
「はい、わかりました!おばぁちゃん、先に行くね!」アヤメは答えると、スミレに声をかけて屋敷に向かって走って行く。
「エルシア様、申し訳ありません。」スミレがエルシアに頭を下げる。
「あら?なにかあったかしら?」エルシアがスミレに確認する。
「いえ、アヤメがレーニャちゃんより、可愛いとか…」スミレがバツが悪そうに答える。
「フフフ…、なにを言っているんです。それにアヤメは、レーニャも可愛いと、言ってたでしょう。なんの問題もないわよ。」エルシアが優しくスミレに声をかける。
「ありがとうございます。」スミレがエルシアに頭を下げる。
「それより、アヤメが先に行っちゃたけど、大丈夫なの?」エルシアがスミレに質問をする。
「はい、それは、なんの問題もありません。」スミレが微笑みながら答える。
「レーニャ、子猫に会えるのよ、楽しみよね~」エルシアが微笑んで俺の頭を撫でる。
『いやいや、エルシア、お前がな…』俺はエルシアに「ニャ…」と答える。
「フフフ…、ホントにレーニャちゃんは、可愛いですね。」スミレが俺を見つめて微笑んで声を上げる。
「そうだ、スミレ…、サツキの様子はどう?」エルシアが歩きながらスミレに声をかける。
「はい、未だにヨロクと住んでいた家に、1人で住んでおります。」スミレが答える。
『サツキって、あの綺麗な女の人か…』俺は泣いていたサツキを思い出して、少し胸が締め付けられるような感じを受けた。
「そう…」エルシアが哀しい顔で声を漏らす。
「エルシア様、シュヴノワールフの女は皆強いですから、サツキは大丈夫ですよ。」スミレがエルシアに微笑んで声をかける。
「スミレ…、ありがとう。」エルシアが答える。
「エルシア様、なにをおっしゃってるんですか。それより帝国から、弔慰金をいただきましたよ。エルシア様から皇帝陛下へ、お口添えいただいたんですよね?」スミレがエルシアに質問をする。
「私は、領主として、出来ることをしたまでよ…」エルシアが哀しい顔で答える。
「いえいえ、人の命は金には代えられないと言われますが…、残された者にとっては、帝国が死んだ者に対して、敬意を表した証となります。本当にありがたいことでございます。」スミレがエルシアに声をかける。
「そう…、良かったわ…」エルシアが哀しい顔で声を漏らす。
『エルシア、元気出せ!』俺はエルシアの頬に自分の頭を擦り付ける。
「あら…、レーニャ…」エルシアが俺に声をかける。
「レーニャちゃんは、本当に人の気持ちがわかる、優しい子ですね。」スミレが微笑みながらエルシアに声をかける。




