08_ロックオーン!
『そうだ、ナノは?』俺は枝の上からナノを探すと、ナノはまだ木の陰に隠れていた。
『良かった。ナノそのまま隠れてるんだぞ。』俺が見つめると、ナノは視線を感じたのか枝の上にいる俺と目が合った。
微動だにしていなかったミノタウロスが、首を左右に捻ると「ゴキゴキ」と音が鳴った。
「ウワァー!オォォー!」威嚇しているかぁちゃんたちに向かって、ミノタウロスが雄たけびを上げた。
それが戦いの合図だったのか、かぁちゃんは跳躍するとミノタウロスに向かって飛び掛かっていた。
一瞬だった飛び掛かったかぁちゃんの体は、ミノタウロスの太い腕で薙ぎ払われた。
かぁちゃんの体は、飛んでいった方向にあった木の幹に叩きつけられた。
『かぁちゃん!』俺は言葉を飲み込んだ。
「フハァァァァー!」ヒャッハーがミノタウロスに向かって威嚇を続ける。
『ヒャッハー、ダメだ、かぁちゃんもやられたんだ。』俺の心の叫びは届かず、ヒャッハーはなおもミノタウロスの前にいる。
ミノタウロスは、「ウワァー!オォォー!」とヒャッハーに向かって雄たけびを浴びせると、ヒャッハーはそこから逃げようと走り出す。
『そうだ、ヒャッハー逃げろ!』俺が思った瞬間、ミノタウロスは直ぐにヒャッハーを捕まえていた。
「ミャー!フヒャー!」ヒャッハーがミノタウロスの大きな手の中でもがく。
「ゴキ!」と音が聞こえた、『ヒャッハー…』ミノタウロスの手の中で、ヒャッハーはグッタリした感じでもがくことをやめた。
『もう頭きた!こいつ、ぶち殺す!』俺の中でフツフツと怒りの感情が湧き上がっていた。
「フゥオォォォォォン」俺は木の上で、ミノタウロスに向かって怒りの唸り声を上げた。
ミノタウロスは俺の唸り声を聞いて、上を見る『やべー!』と思ったが遅かった。
『ロックオンされちゃったー!』ミノタウロスと目が合った。
『次は俺か。いいだろうテメーの片目ぐらい奪ってやる!』不思議に恐怖心は薄れていて、家族を奪ったやつに対しての怒りしかなかった。
俺は木の枝の上で身構える。
「ニャー!」木の陰に隠れていたナノが、飛び出してかぁちゃんのもとに走る。
『ナノ、ダメだ!』俺が心の中で叫んだ瞬間に、ナノはミノタウロスの手の中にいた。
「ミャー!ミャー!」とナノがミノタウロスの手の中でもがく。
ミノタウロスは力を込めれば、握りつぶしてしまうようなナノを見つめている。
『やめろー!』俺が心の中で叫んだ瞬間だった、ミノタウロスの頭にかぁちゃんが飛び掛かっていた。
かぁちゃんは、ミノタウロスの片目に自分の前足の爪を浴びせていた。
『かぁちゃん!』俺が驚いた瞬間、ミノタウロスは両手でかぁちゃんの前足を掴むと、かぁちゃんの体を引き裂いていた。
「ミギャー!」かぁちゃんの断末魔だった。
ミノタウロスの手から逃れたナノが、走って俺のいる木の幹に飛びついてきた。
『ナノ!今のうちだ、早く登ってこい!』ナノは必死に木を登ろうとしたが、途中まで登ったところで、ミノタウロスの手にまた掴まれた。
「ミャー!」ナノが叫び声を上げる、『やめてくれ、もうやめてくれ!』俺は心の中で誰かに祈った。
ミノタウロスは手の中をナノをしばらく見つめていたが、大きな口を開くとナノをその中にほおり込んだ。
「ニャァァァ!」ナノの鳴き声が聞こえた瞬間、ミノタウロスは「ゴックン」と喉を鳴らした。
『こいつ、ナノを丸呑みしやがった。』怒りの頂点を超えていた。
『お前の、もう一つの目ん玉は俺が潰す。』悲しいかな、自分でも一矢報いるしかないと悟っていた。
俺は枝の下のミノタウロスを見つめると、ミノタウロスも俺を見つめた。