16_フレヤが白目になる
「どうしたんだ、レーニャ。」フレヤが声をかけて、俺の傍に近づいてきた。
『フレヤ、ここに妖精さんが…』俺は妖精さんがいた辺りを見つめて、フレヤに説明しようとしたら妖精さんの姿が無かった。
『あれ?』俺は辺りをキョロキョロするが、妖精さんの姿は無い。
『あれれ?』俺は首を傾げる。
「レーニャ、なにかいるのか?」フレヤが声を上げて、辺りをキョロキョロする。
『フレヤ!妖精さんがいたんだよ!』俺はフレヤに「ニャー!」と声をかける。
「レーニャ、おいで。」フレヤが優しく俺を抱きかかえると、エルシアたちが座ってる場所に戻って座る。
「フレヤ、なにかいたの?」エルシアが興味津々にフレヤに質問をする。
「さぁ~、なにもいませんでしたね。」フレヤが首を傾げて答える。
「河童でも、いたんじゃないですかね?」サクラが声を上げる。
「河童なんて、いなかったよ。」フレヤが直ぐに否定する。
「だとすると…」サクラが空を見つめて考える。
「うん、はいはい、そういことかしらね…」サクラが今度は俺を見つめて、何か納得したような声を上げる。
「なーに、サクラ、わかったの?」エルシアがサクラに質問をする。
「はい、おそらく幽霊が見えたのではないでしょうか?」サクラが答える。
「幽霊?なんの?」エルシアが顔を引きつらせてサクラに質問をする。
「さぁ、なんの幽霊かはわかりませんが、カゾの村では猫がなにも無いところをジッと見たり、そこに向かって鳴いたりするのは、死者の霊が見えるからと、言われてます。」サクラが淡々と説明をする。
「レ、レーニャ、なんの幽霊が見えたの?」エルシアが明らかに狼狽しながら、俺に質問をしてくる。
『だから、幽霊じゃなくて、妖精さんだよ!』俺はエルシアに「ニャー!」と答える。
「サクラ、今レーニャはなんて言ったの?」エルシアがサクラに質問をする。
サクラは一瞬エルシアと目を合わせるが、直ぐに視線を外して口を押えると、肩を震わせる。
『はい、サクラのツボ入りました~』俺はサクラを見つめて心の中で呟く。
「サークーラー、また、私を揶揄ってるのですか?」抑揚のない声で、エルシアがサクラに声をかける。
「フフフフ、申し訳ありません。フフ、エルシア様…、ただ、カゾの村で言われているのは、フフフ、本当です。」サクラが笑いを堪えながらエルシアに答える。
『いや、幽霊じゃなくて、妖精さんなんだけど。』俺はサクラに向かって「ニャー!」と声をかける。
「もう、ホントにサクラは、ねぇレーニャ…、フレヤ!フレヤ!」エルシアはムッとした感じで、俺に同意を求めた後、フレヤを見て大きな声を上げる。
俺もエルシアの慌てた表情を見て、上を向くとフレヤの綺麗な青い瞳が白目になっていた。
「フレヤ、しっかりして!」エルシアがフレヤの傍に来て、体を優しく抱いて、フレヤに声をかける。
「あっ!エルシア様、私、あれ?」フレヤの白目が、いつもの綺麗な青い瞳に戻る。
「もう、サクラは私たちを怖がらせて、大丈夫よフレヤ。」エルシアがサクラを叱って、フレヤに優しく声をかける。
『まったく、サクラはエルシアを揶揄って、フレヤは幽霊とか怖いのか。』俺がフレヤを見つめて、心の中で呟く。
『あっ!妖精さんだ。』エルシアの肩に妖精さんが座って、俺を見つめていた。
『あなた、人の言葉が理解できるの?』妖精さんが俺に話しかけてきた。
『うん、わかるよ!』俺は妖精さんに向かって、「ニャー!」と声をかける。
「どうしたのレーニャ。」エルシアが俺を見つめて、声をかける。
『エルシアの肩に妖精さんがいるよ!』俺はエルシアに「ニャー!」と声をかける。
『あっ!』妖精さんは、エルシアの肩からヒラヒラと飛んで、俺の目の前に来ると右へ左へとヒラヒラと飛ぶ。
俺は目の前で飛ぶ妖精さんを、首を左右に振って目で追いかけるが、エルシアもサクラも俺を見つめたままでいる。
『フフフ、あなた面白いわね。』妖精さんが俺の目の前で止まって、微笑んで俺に声をかける。
『妖精さんは、ひょっとして、みんなには見えないの?』俺は妖精さんに「ニャー?」と質問をする。
『そうね、私の姿が見える者には、ほとんど会ったことが無いわ。それに、こうやってお話ができたのは、何年ぶりかしら。』妖精さんが俺に説明する。
『妖精さんは、ここに住んでるの?』俺は妖精さんに「ニャー?」と質問をする。
『私はどこにでもいるし、どこにも住んではいないわ。』妖精さんが答える。
『また、機会があったら、会いましょう、可愛い子猫ちゃん。』妖精さんは優しく微笑むと目の前からフワッと消えた。
『あっ!消えた。』俺は妖精さんを探して、キョロキョロする。
「サクラ…、こ、これは、なに?」エルシアが目を泳がせながら、俺を指さしてサクラに質問をする。
サクラが口を押えて、驚いた表情で俺をジッと見つめている。
「レーニャちゃん、幽霊さんがいたの?」サクラが俺に優しく声をかける。
『違うよ!妖精さんがいたんだよ!』俺はサクラに「ニャー!」と答えた。
「フレヤ、フレヤ!しっかりして!」エルシアの慌てた声で、上を向くとフレヤの綺麗な青い瞳が白目になっていた。




