37_おにぎりみたいだなっと
「フレヤ、ここが書庫よ。」エルシアがフレヤに声をかける。
『へぇ~、こんな部屋があったんだ…。学校の図書室よりは、小さいか…』俺の目の前には、整然と並んだ本棚とその本棚の中に綺麗に並んだ本が見えた。
『レーニャちゃん、学校の図書室なんて知ってるんだ?』エレクラが俺に声をかける。
『ちょっと前に帝国に行ったときに、フレヤと一緒に学校の図書室に行ったんだ。』俺が答える。
「エルシア様…、ここにある本はなんなんですか?」フレヤが辺りを見渡しながらエルシアに質問をする。
「ここにあるのは、生前私のお父様が大陸中から集めた本よ。それから、お父様が書き記したものも、いくつか置いてあるわ。」エルシアが答える。
「エルシア様のお父様が、書き記したもの?…」フレヤが声を漏らす。
「フレヤ、エルシア様のお父様は、このサイタマの国の王、アルベルト王なのよ。」サクラがフレヤに説明をする。
「エルシア様のお父様って、王様だったんですか?」フレヤがエルシアに確認する。
「そうね…、このサイタマがまだ王国だったときの王よ。というか…、なんでサクラもいるの?」エルシアがサクラに質問をする。
「いえ、エルシア様がフレヤになにをお見せしたいのかと、気になりましたもので…」サクラが無表情で答える。
「エルシア様、エルシア様のお父様が、書き記したものって、なんなんですか?」フレヤがエルシアに質問をする。
「そうね、お父様の手記ね。」エルシアが説明をする。
「手記とは、なんなんですか?」フレヤがエルシアに質問をする。
「手記は、お父様がなにかを感じたり、どこかで見たものや聞いたものを忘れないように、書き留めたものよ。」エルシアが説明をする。
「あぁ…、そうか…」フレヤが顎に手を当てて声を漏らす。
「フレヤ、どうしたの?」エルシアがフレヤに確認する。
「はい、聞いたものは直ぐに紙に書いて、残しておけば忘れないって、キキョウ様に教えて貰ったんです。」フレヤが答える。
「フフフ…、そうね、それは良いことね。」エルシアが微笑んでフレヤに声をかける。
「はい、私これからは、いろいろ聞いたことを紙に書いて、残すようにします。」フレヤが嬉しそうに声を上げる。
「フレヤ、聞いたこと以外にも、感じたことや見たことを紙に書いて、残すようにしなさい。」エルシアがフレヤに声をかける。
「はい、わかりました。」フレヤが答える。
「エルシア様も、忘れないように、やられているんですか?」サクラがエルシアに声をかける。
「サ、サクラ…、口が過ぎますよ。」エルシアが慌てた顔でサクラを窘める。
「これは、出過ぎたことをお聞きしてしまい、申し訳ありませんでした。」サクラがエルシアに頭を下げる。
『えっ!どういうこと?』フレヤがエルシアとサクラを交互に見つめて首を傾げる。
『エルシアが、メモとか取ってるのを見たことないわよ。』エレクラが声を上げる。
『あっ!そういうこと?…』俺がエレクラに確認する。
『そうよ、フレヤの前でやってないなんて答えたら、フレヤがガッカリするでしょう。』エレクラが答える。
「そうだフレヤ、ここに置いてある本、全て読んでみなさい。」エルシアがフレヤに声をかける。
「えぇ!私が読んでも良いんですか?」フレヤがエルシアに確認する。
「そうよ、そのために、あなたをここに連れて来たのだから、ゆっくりで良いから読んでみなさい。」エルシアが答える。
「ちなみにエルシア様は、全部読まれたのですか?」サクラがエルシアに質問をする。
「サクラ、口が過ぎますよ。読んでいるに、決まってるじゃないですか。」エルシアがムッとした顔でサクラを窘める。
『おぉ…、ホントに読んでいるのか?』俺が心の中で呟く。
『うん、それは間違いないわね。』エレクラが声を上げる。
『エルシア、スゲーな…』俺はエルシアを見つめて感心する。
『但し、内容を全て覚えているとは、限らないけどね。』エレクラが声を上げる。
「フレヤ、夕ご飯までには時間があります。どれでも、好きな本を読んで見なさい。」エルシアがフレヤに声をかける。
「でも…、いっぱいあって…、どれから読んだら良いのでしょうか?」フレヤが困った顔で本棚を見つめる。
「それなら…、これなんか、良いかしら。」エルシアが本棚から1冊の本を取ってフレヤに渡す。
「この本は、なんですか?」フレヤがエルシアに質問をする。
「開いたらわかるわよ。」エルシアが優しくフレヤに答える。
「開いたらわかる…」サクラが両手を前で閉じて、左右に開いて声を上げる。
「サクラ、どうしたの?」エルシアがサクラに声をかける。
「あっ…、いえ…、お昼に食べたおにぎりみたいだなっと、思いまして…」サクラが答える。
『なんだエルシア、驚いた顔してるぞ…』エルシアがサクラを驚いた顔で見つめていた。




