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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第0章 気が付いたら
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07_そいつは突然やってきた


俺たちは食事を終えると巣穴に戻って、かぁちゃんと一緒に眠りについていた。

兄弟の誰かに蹴られたのか、俺はみんなが固まって眠っている場所からはじき出された。

『誰だ…、今蹴ったの…』そんなことを思いながら、みんなの眠っている場所に戻ろうとしたとき、背中にゾッとするものを感じた。


『これ、ヤバいやつだ。』俺がそう思って、顔を上げるとかぁちゃんが体を半分起こして巣穴の出口をジッと見つめていた。

『かぁちゃん、またなんか来たのか?』俺はかぁちゃんに「ニャー?」と聞いてみる。

かぁちゃんは、起き上がると俺の傍にきて頭をペロペロと舐めた。


かぁちゃんに頭を舐められると、なぜか安心した。

かぁちゃんは、そのまま巣穴の出口付近まで行って外をジッと見つめる。

『前にもあったけど、今度も大丈夫だきっと。』俺は根拠は無いがそう思い込む。


俺は兄弟が眠っているところに戻ると、その前でかぁちゃんの背中を見つめながら丸くなった。

かぁちゃんの背中から、緊張感が伝わってくる。

気が付くと、俺の右側にはヒャッハーが後ろの方にナノが起きて体を寄せてきた。


眠っていた場所を見ると、デンチがぐっすりと眠っていた。

『こいつ、野生の王国じゃ、長生きできねぇタイプだな…』と俺は少しあきれた

俺に体を寄せてきたヒャッハーとナノからは、多分俺と同じ緊張感が伝わってきた。


「ニャー!」かぁちゃんが、突然振り向くと俺たちに向かって、大きな声を上げた。

次の瞬間、巣穴の天井から「ドーン!」と音が鳴り響くと、天井が崩れだした。

かぁちゃんを先頭に俺たちは巣穴を飛び出す、俺はそのまま走ると近くの木の幹に飛びついて登り始めた。


『高く、高く。』俺は必死に木を登り、枝に乗ると一息ついた。

『良かったぜ、木登り覚えていて。』俺は枝の上から、巣穴の方を確認した。

俺たちの巣穴があった場所からは、土煙が上がっていて何が起きているのか確認できない。


『かぁちゃんたちは?』俺が下を見ると、かぁちゃんと一緒にヒャッハーとナノが木の陰に隠れながら巣穴の方を見つめていた。

『良かった、みんな生きてる。ん?デンチは?』俺はデンチの姿をキョロキョロと探す。

『デンチがいない。まさか…』もう一度巣穴があった場所を確認すると、土煙が少し収まっていた。


『ん?なんだあれ?』巣穴のあった場所の土煙の中で、何かが動いている。

次の瞬間「ニャァァァー!」断末魔のような、鳴き声が聞こえた。

『えっ?なに今の…』茫然としていると、「グチャグチャ」と何かを咀嚼するような音が聞こえてくる。


『えっ!熊なのか?』土煙がようやく落ち着て、巣穴のあった場所で動く大きな体が見えてきた。

「バリバリ」と骨を噛み砕くような、音が「グチャグチャ」と咀嚼する音に混じって聞こえてきた。

『おいおい、あいつ何喰ってやがんだ。まさか…、デンチ…』俺は背中がゾワソワとして毛が逆立つ感じを受ける。


しばらくすると、「グチャグチャ」と何かを咀嚼する音が止み辺りが静かになる。

巣穴のあった場所の大きな体が、立ち上がった。

『えっ!二本足?人間なのか?』立ち上がったものは、背中をこちらに向けているが、二本足で立ち上がり肩から太い両腕が下に伸びていた。


「フハァァァァァー!」かぁちゃんが、背中を向けているそいつに向かって威嚇を始める。

しかし、俺たちにとっては大きな体のかぁちゃんが、そいつとの比較で明らかに小さいことがわかった。

『かぁちゃん、ダメだ!そいつと戦っても勝てないって、逃げてくれー!』俺は「ニャァァァー!」と声を上げていた。


俺の鳴き声が聞こえたのか、かぁちゃんは上を見上げると、木の枝の上にいる俺をいつもの優しい目で見つめた。

巣穴のあった場所に立っていたそいつが、振り向いてかぁちゃんの方を向いた。

「ゲフッ!」そいつは振り向くと大きなゲップをした。


『えっ?角?牛?なんだこいつ?』振り向いたそいつの頭はどう見ても牛であった。

『えっ、えっ、ちょっと待って、落ち着け、落ち着け』俺は深呼吸をして、もう一度そいつを見る。

頭は牛、体は体格のいい人間のようで、下半身は獣が二本足で立ったような感じである。


『こいつって、ケンタウロス。あっ、違うこいつミノタウロスだ。えっ?なんでこんな奴がいるの?』俺は何かが頭の中に引っ掛かったが、今はそれどころで無い。

「フハァァァァァー!」かぁちゃんが体を丸めて毛を逆立てて威嚇する。


『ギャー!ダメだ、かぁちゃん、勝てねぇよ。そんな化け物に…』俺は威嚇を続けるかぁちゃんをハラハラしながら見つめる。

「フハァァァァー!」隠れていたはずのヒャッハーが飛び出してきて、かぁちゃんの傍らで同じように威嚇を始めた。

『バカ!ヒャッハー!なんでお前まで飛び出してくんだよ~』俺の心臓は鼓動を早めていた。


ミノタウロスは威嚇を続ける、かぁちゃんたちを見て微動だにしないで立っている。


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