表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第2章 2日目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/900

02_全員不正解です!


朝ご飯を食べ終えて、部屋に戻るとフレヤは浴衣を脱いでパンツだけになって、すぐにメイド服に着替える。

サクラはエルシアの浴衣を脱がして、スッポンポンにすると黒いドレスを大きなカバンから出して、エルシアに着せていく。

『今日は、黒いドレスなんだ。そうか。今日はお葬式か。』俺はエルシアのドレスを見て、少しせつなくなった。

「この服は、ホントは着たくなかったわね。」エルシアは自分が着せてもらったドレスを見て、寂しそうな声を漏らす。


「さぁ、レーニャも行きましょうか。」エルシアが俺を持ち上げると、優しく胸に抱いて歩き出す。

「サクラ、先に行ってるね。」フレヤがまだ浴衣姿のサクラに声をかけると、エルシアの後を着いてきた。

エルシアとフレヤは、少し俯きながら廊下を屋敷の玄関の方に向かって歩いている。

「エルシア様とサクラって、やっぱりすごいですね。」フレヤがエルシアに声をかける。


「なに、どうしたのフレヤ。」エルシアは振り向かず、フレヤに確認する。

「いえ、私もエルシア様や、サクラのようになりたいと思って…」フレヤが寂しそうな声を漏らす。

「フレヤ、なにを言ってるんです。昨日サクラが私に嬉しそうに言ってたわよ、フレヤが良い娘に育ったって。」エルシアがフレヤに嬉しそうに声をかける。

「えっ、あっ、もうサクラったら~」フレヤの恥ずかしがる声が聞こえた。


『サクラかぁ~』俺は昨日の夜、エルシアの胸の中で泣くサクラのことを思い出す。

『あっ!うぉ!し、しまった~、サクラの着替え!』俺はエルシアの腕から飛び降りると、踵を返してサクラの部屋に向かってダッシュする。

しかし、エルシアの直ぐ後ろにいたフレヤにヒョイと捕まって、俺は両脇を抱えられるように持ち上げられる。

『後生ですから、私を部屋に戻してください!サクラの着替えを~』俺はフレヤに向かって「ニャー!」と声を上げる。


「レーニャ、どうしたんだ?」フレヤが不思議そうな顔で、俺の顔を覗き込む。

フレヤの綺麗な青い瞳に、俺は心が見透かされそうな感じを受けて、思わず視線を反らす。

「どうしたのかしら?昨日から、レーニャ、時々大きな声で鳴くわよね。」エルシアがフレヤの傍に回り込んで、首を傾げてフレヤに抱えられた俺の顔を覗き込む。

『いや、あの、どうしても、確認しないといけないことが…、あったような…、なかったような…』俺は心の中で呟いて、エルシアを見つめると、エルシアは困った表情で俺を見つめていた。


「どうされました?二人でレーニャちゃんを見つめて。」メイド服姿のサクラが、エルシアとサクラの後ろから声をかける。

「あっ、サクラ。レーニャがね、エルシア様の腕の中から、急に飛び降りて玄関と反対方向に走り出したの。」フレヤが説明する。

「あら、どうしたのレーニャちゃん?」今度はサクラが俺の顔を覗き込む。

『いや、あの、だから、すみませんでした。』俺はエルシアたちに向かって、「ニャー」と謝る。


「もう、レーニャ、あんまり驚かさないでね。」エルシアは俺をフレヤから受け取り胸に抱くと、廊下を歩き出す。

『あぁ~、今日も天気がいいなぁ~』俺は廊下から見える青空を見て、心の中で呟く。

廊下の端の木戸を開けて、囲炉裏がある部屋に入る。

サクラは先に土間に降りると、式台に腰を下ろしたエルシアに靴を履かせる。


3人は声をかけるでもなく、エルシアを先頭に屋敷の玄関から外に出る。

「さぁ、まいりましょう。」黒い着物姿のスミレが玄関の外で待っていて、エルシアたちに声をかけると歩き出した。

スミレもエルシアたちも、口を閉じて黙々と屋敷の門を出ると、スミレに従って村の道を歩く。


『あぁ、なんだろうな~、この虚脱感って…』俺はエルシアの腕の中で、ボーっとしながら心の中で呟く。

「レーニャちゃん、ず~とおとなしいですね。」サクラがエルシアの腕の中の俺を見つめて声をかける。

『いや、そんな目で見ないで…』サクラの視線に耐え切れずに俺は視線を外す。


「猫には人の気持ちが、わかるそうですよ。」前を歩いていたスミレが、立ち止まって振り向くと声を上げる。

「レーニャちゃんは、賢い子です。エルシア様、サクラ様、フレヤおねぇちゃんの今の気持ちが、わかってるんじゃないでしょうか。」スミレは振り返ってそう言うと、また前を向いて歩き出す。

『いや、ばぁちゃん、そう言うことでは、ないんだけどなぁ~』俺はスミレの後姿を見て、心の中で呟く。


「レーニャ、大丈夫だよ。」フレヤが優しく笑って、俺に声をかける。

「レーニャちゃん、ありがとう。」サクラも優しく笑って、俺に声をかける。

「レーニャ、私たちはみんな大丈夫だよ。」エルシアが俺の頭を撫でながら、優しく声をかける。

『いや、あの…、ブッブー!全員不正解で~す。』俺は心の中で呟く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ