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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第1章 1日目
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30_殿様みたい


「皆、ご苦労様です。」サクラは優しく村人たちに声をかけると、村人たちが一斉に顔を上げる。

「サクラ様、サキチたちは?」村人の1人がサクラに質問をする。

サクラは黙って、俯いて首を左右に振った。

一旦顔をあげた村人たちが、うなだれたり悔しそうな表情を浮かべる者、泣き崩れる者もいた。


「皆、顔を上げなさい。3人はこの村を家族を守るために戦ったのです。皆が3人を思うのであれば、この村のあなたたちの誇りとしなさい。」サクラの声は優しくも力強く聞こえた。

「はっ!」村人たちが一斉にサクラに頭を下げる。

『ス、スゲーなサクラ…、殿様みたい…』俺は心の中で呟く。


「皆、後のことはゲンジロウの指示に従ってください。」サクラは村人たちに声をかけると、屋敷に向かって歩き出した。

フレヤも俺を抱いたまま、黙ってサクラの後を着いて行く。

屋敷の戸は開いていて、サクラが中に入って行くとフレヤも後に着いて入って行く。

屋敷の中は薄暗いが、広い土間が広がっていて、両側に土間から高くなったところに式台が続いていた。


片側の式台の方は、板戸で閉めらえているが、反対は式台から板張りの部屋になっていて、その先に囲炉裏が見えた。

「サクラ様、フレヤさん、お帰りなさいませ。」囲炉裏の傍には女性が正座していて、声を上げると平伏した。

「ツツジ、ただいま戻りました。」サクラが平伏する女性に優しく声をかける。

『うわぁ~、スゲー!囲炉裏だ~』俺はワクワクしてフレヤの腕から、飛び降りると囲炉裏に向かってダッシュする。


「あぁ~、レーニャ!」フレヤが後ろで声を上げる。

「私たちも、上がりましょう。」囲炉裏までたどり着いて、後ろを振り向くとサクラもフレヤも部屋の中に上がってきた。

『あっ!ちゃんと脱いでる。』二人の足元を見ると、靴を脱いで上がってきたようだ。

囲炉裏の上には天井から垂れ下がっているものがあり、それに鍋がかかっていた。

『なんて、言うんだっけこれ?』俺は天井から垂れ下がったものを見つめて、心の中で呟く。


「こら、レーニャはホントにジッとして無いなぁ~」フレヤは声を上げると、ヒョイと俺を持ち上げて胸の中に抱いた。

『あぁ~、懐かしいなぁ~、ばぁちゃん家だ~』俺はフレヤの腕の中で、囲炉裏の匂いを嗅いで心の中で呟く。

「ツツジ、エルシア様は?」サクラが囲炉裏の傍の女性に質問をする。

「はい、奥の書斎にて、お父様と一緒におられます。」囲炉裏の傍の女性は正座した姿勢で、サクラに答える。

「ありがとう。」サクラは声をかけると、その部屋の奥の板戸を開けて先に進んで行く。


囲炉裏のあった部屋の板戸を出ると、長い廊下になっていた。

サクラは自分の家でもあるかのように、スタスタと廊下を進んで行く。

廊下の片側は庭のようになっていて、もう片側は障子戸が続いている。

『やっぱり、これ日本家屋だよな~』俺はフレヤの腕の中でキョロキョロしながら心の中で呟く。


「エルシア様、戻りました。」サクラが立ち止まると、明るい光が出ている障子戸に向かって声をかける。

障子戸がスーッと開くと、サクラが中に入って行く。

『えっ!自動ドア!』俺が驚いていると、フレヤが続いて部屋の中に入る。

部屋の中に入ると、障子戸の傍におじいさんが正座していて、空いた障子戸をスーッと閉めた。


『なんだ、このじぃさんが開けたのか。あれ、このじぃさんって…』よく見ると、おじいさんは村で最初に声をかけてきた老人だった。

「お帰りなさい。サクラ、フレヤ。」部屋の中は畳が敷いてあって、エルシアが奥に鎧を着たまま、胡坐をかいて座っていた。

『あっ、エルシア!』俺はフレヤの腕の中から、「ニャー!」と声を上げる。

「レーニャもお帰りなさい。」エルシアは俺を見つめて、優しく微笑んで声をかける。


「ヒコタロウもこちらへ。」サクラとフレヤはエルシアの前に、向かい合わせで正座すると、サクラが障子戸の傍にいるおじいさんに声をかける。

「はっ!」おじいさんは、答えると中腰の姿勢になりスルスルと移動して、エルシアの正面に正座した。

部屋の中の4人は車座となった。

「サクラ様、フレヤさん、お帰りなさいませ。」おじいさんは平伏して二人に声をかける。


「面を上げなさい、ヒコタロウ。それから、ただいま。」サクラが声をかけると、おじいさんは顔を上げて穏やかな表情をする。

『やっぱり、サクラ、殿様みたい。』俺はサクラを見つめて心の中で呟く。


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