14_あっ!やっぱり
サクラは俺を胸のところに抱き上げて、工房を出る。
「レーニャちゃん、しっかりつかまってないとダメよ。」サクラがそう言うと、走り出した。
サクラの走るスピードが尋常ではないことは、後頭部にあたる空気の流れで感じられた。
『ヒ、ヒャー!、こ、これは、正面向いたら窒息するぞ!』俺は思わずサクラの胸に顔を埋める、いい匂いがしたが後頭部にあたる空気の流れは依然として強い。
『ん?』後頭部にあたっていた空気の流れがピタリと止まる。
サクラの顔を下から見つめると、息一つ切らしていなかった。
『ここは、どこだ?』俺は辺りをキョロキョロすると、周りは高い木が生い茂っていて、下を見ると土が見えていた。
「どうしたのです?」サクラが正面を向いて、声をかけた。
俺はサクラの胸の中で、サクラが声をかけた方向を見る。
「こ、これは、サクラ様。申し訳ありません。緊急用の笛を吹いてしまって。」馬に乗っていた農夫のような男性が、馬から降りるとサクラの前で頭を下げながら答えた。
「良いのです、ゲンジロウ。それより、なにがあったのですか?」サクラは男性に質問をする。
『ゲンジロウ?この人の名前かな?』俺はマジマジと男性を見つめる。
「はい、実は3日前にサキチが、サキチの子どもと一緒に山に山菜をとりに入ったのですが、戻って来ないんです。」男性はサクラを見つめて答える。
「それで、どうしたのですか?」サクラは落ち着いた声で、質問を続ける。
「はい、昨日村人数名で、山に捜索に入ったのですが、今度はキノスケとヨロクが戻って来なくて…、村のみんなで相談をして、エルシア様に報告にあがりました。」男性は心痛な表情で答える。
「わかりました。エルシア様には私が報告します。ゲンジロウは先に村に戻って、私たちが到着すまで決して山に立ち入らないようにしてください。」サクラが真剣な表情で男性に声をかける。
「はい、かしこまりました。」男性はサクラに一礼すると、直ぐに馬に乗って走り去っていった。
『サクラ様?サクラはエルシアの使用人じゃないのか?』俺はサクラの顔を見つめて心の中で呟く。
「レーニャちゃん、怖かった?」サクラは男性が馬に乗って走り去って行くのを見つめていたが、俺を見つめて声をかける。
『怖くは無かったけど、サクラは足が速いのか?』俺はサクラに「ニャー!」と聞いてみる。
「よしよし、レーニャちゃんはいい子ね。さぁ、エルシア様へ直ぐに報告に行きましょう。」サクラは腕の中の俺の頭を優しく撫でると、また走り出した。
『ヒ、ヒャー!』また後頭部を強い空気の流れが襲ってきた、俺は頑張って横を向くとものすごいスピードで森の中のような景色が流れていく。
『こ、これは、た、たまらん。』俺は再びサクラの胸に顔を埋めた。
『ほぇ…』後頭部にあたっていた空気の流れがピタリと止まる。
俺は辺りをキョロキョロと見ると、既に屋敷の玄関だった。
サクラは玄関を開けて中に入ると、スタスタと屋敷の大広間を抜けて階段を登り、エルシアのいる部屋の前で立ち止まる。
「エルシア様、サクラです。入ります。」サクラは部屋の扉を開けて中に入る。
部屋の中にはメイド服姿になったフレヤと、大きな机にエルシアが座っていた。
「サクラ、なにがありました?」エルシアが真剣な表情で、サクラに声をかける。
「はい、カゾの村で3日前、それと昨日、山に入ったものが、帰って来ないとのことでした。」サクラは答えながら、エルシアの机の前まで移動しながら説明をする。
「まさか…、私としたことが…」一瞬でエルシアの表情がくもり、悔しそうな声を漏らす。
「フレヤ、直ぐに出立の準備を始めて!」エルシアがフレヤに声をかける。
「はい。」フレヤは返事を返すと、部屋を飛び出して行った。
「サクラ、手伝ってもらえるかしら?」エルシアが次にサクラに声をかける。
「かしこまりました。」サクラが返事を返したのを確認して、エルシアが立ち上がると部屋の隅に向かって歩き出す。
サクラは俺を抱いたまま、エルシアの後ろを着いていく。
『どうしたんだろう?エルシアが、出立って言ったな。さっき会った男性の村に向かうのかな。』俺はサクラの腕の中で、そんなことを考える。
サクラの先を歩くエルシアが、部屋の隅の扉をあけて中に入って行く、サクラも続けて中に入って行った。
『あっ!部屋、つながってたんだ。』そこはエルシアの寝室だった。
「レーニャちゃん、ちょっとここにいてね。」サクラが優しくエルシアのベットの上に俺を置く。
サクラは部屋の真ん中に立っているエルシアに近づくと、エルシアのドレスを手際よく脱がす。
エルシアはスッポンポンの状態となる。
『あっ!やっぱり、パンツ履いてない。』俺はエルシアを見つめて、心の中で叫ぶ。




