03_俺の兄弟
俺が子猫だと気づいてから、だいたい30日ほど経ったろうか、かぁちゃんがいる間は俺も含めて兄弟たちで、巣穴を出て外に出ることが増えた。
巣穴から出るのは、俺たちが夜行性であるからだと思うが夜中が多かった。
巣穴の外は木々が生い茂る山の中で、その日も辺りは真っ暗であった。
『あ痛っ。』俺の首に噛みついてきたのは、俺より少し体の大きな子猫だった。
『また、テメェかぁ~!』俺も反撃に映るが、勝敗などはつかない。
『傍から見ると子猫が仲良くじゃれあってるように見えるんだろうな~』っと考える。
俺に噛みついてきた子猫は、長い産毛が頭の上から背中に向けて立っていて、モヒカンのように見えたので『ヒャッハー』と呼ぶことにした。
ヒャッハーとじゃれあってると、本能が目覚めるのかだんだん楽しくなってくる。
『こいつ、なかなかやるな~』、お互い離れて距離を取ると、次の相手の攻撃を警戒しながら様子を窺う。
ヒャッハーが体を低くして、お尻を振り出した。
『よし、迎撃してやろう。』と思っていると、横からヒャッハーの尻に飛びついてきた奴がいた。
兄弟の中で1番体の大きな子猫だった、こいつは体の大きさ以外に見た目の特徴が特に無いので俺は『デッカー』と呼ぶことにした。
不意の攻撃にヒャッハーが、対応に追われる。
2匹の子猫がじゃれあうのを見ながら、『よし、今ならヒャッハーを仕留められるぞ!』そんなことを考えながら、ふと横を見ると巣穴の前で俺たちを優しい目で見つめるかぁちゃんがいた。
かぁちゃんの傍には、未だにかぁちゃんのミルクが恋しいのか、かぁちゃんのお腹にしきりに顔を埋めようとうする子猫がいた。
兄弟の中では1番体が小さく、俺は『ナノ』と呼ぶことにした。
「ニャーオン」とかぁちゃんが鳴いた。
俺たちは、かぁちゃんが呼んだと思って、一目散にかぁちゃんのもとへ走り出す。
かぁちゃんは俺たちが近づくと、巣穴の中に入って行く、俺たちもその後に続いて巣穴に入って行く。
巣穴に入るとかぁちゃんは、いつもの奥の寝床に身を横たえる。
ナノは一目散にかぁちゃんのお腹に顔を埋めようとするが、かぁちゃんが前足でそれを抑える。
俺たちもかぁちゃんに近づくと、かぁちゃんに体を預けるようにして体を横たえる。
『ん!どうした、かぁちゃん?』、かぁちゃんを見ると体は横たえているが、顔は真っ直ぐに巣穴の出口を見つめている。
俺も巣穴の出口を見つめると、背中にゾッとするような感覚を感じる。
「フゥゥ…」ヒャハーも何かを感じたのか、立ち上がって巣穴の出口に向かって威嚇を始める。
かぁちゃんは立ち上がると、威嚇しているヒャッハーの頭を優しく舐める。
ヒャッハーはかぁちゃんに頭を舐められると、威嚇をやめておとなしくなった。
かぁちゃんは、そのまま巣穴の出口へそろそろと近づくと、巣穴の出口から外の様子を窺う。
体に感じる感覚は、明らかに俺たちにとっては良くないものだと思われる。
『なんだろ、ここは山の中だから…、そうか他の動物…、はっ!熊とか?熊は怖いなぁ~』と心配しながら、かぁちゃんの背中を見つめる。
しばらくすると、体に感じていたゾッとする感覚が無くなった。
かぁちゃんも巣穴の出口から、寝床に戻ってくると俺たち兄弟をペロペロと舐めだした。
『かぁちゃん、敵はさったのか?』と聞いてみるが、「ニャ~」と声を上げていた。
かぁちゃんは俺の頭をペロペロと舐めると、横になって瞼を閉じた。
『よかった、よかった。』かぁちゃんの仕草で、安心をした俺はかぁちゃんの体に自分の体を預けて瞼を閉じた。
『そう言えば、熊ってなんだ?…まぁ、いいや…』最近は頭に浮かんだ単語を、いちいち考えるのが面倒くさくなってきていた。