11_アマガミ
フレヤは俺を抱いたまま、工房の扉を開ける。
工房の中は床板は無く土間のような感じで、真ん中に煉瓦で組まれた高さは無いが丸い炉のようなものがあり、その炉の周りに丸椅子が2つ置いてあった。
壁の棚にはたくさんの壺と、見たことも無いようなものが、所狭しと並んでいた。
「それじゃ、さっそく始めようか。」フレヤは俺を丸椅子の上に置いた。
『おっ、なに始めるんだ。』俺はワクワクしながら、フレヤの行動を見つめる。
フレヤは工房の奥から、透明な半円のボールのようなものと四角い鉄板を引っ張り出してきた。
「うん、こんな感じかな。」フレヤが鉄板を煉瓦で組まれた炉のようなところに乗せると、机のようになった。
フレヤは手に持ってきた革製のカードケースのようなものから、トランプの大きさくらいのカードを1枚取り出すと鉄板の上に置いた。
次にフレヤは透明な半円のボールのようなものを、鉄板のカードを覆うように上に乗せる。
『おっ、これからどうなるんだ。』俺はワクワクしながら鉄板の上を見つめる。
横を見るとフレヤが丸椅子に腰を下ろして、静かに鉄板の上のカードを見つめている。
俺もフレヤと同じに静かに鉄板の上のカードを見つめる。
『眠くなってきた…』10分ほど見ていたが、なにも変わったことは起こらず、俺は眠くなってきてあくびをする。
「レーニャ、いらっしゃい。」フレヤは俺を優しく椅子から持ち上げると、自分の膝の上に置いた。
『なにも起こらんぞ。』俺はフレヤに向かって、「ニャー!」と鳴く。
「はいはい、私の膝の上で眠ってていいわよ。」フレヤは優しく俺の頭を撫でると、俺は気持ちよくなってそのまま丸くなって眠ってしまった。
俺は前足に違和感を感じて、目を覚ます。
また、フレヤが膝の上で、俺を仰向けにして、指で俺の前足の肉球を優しく触っていた。
俺はこそばゆくなって、触られていた前足をひっこめる。
「あっ、レーニャ起きちゃった。ごめんね。」フレヤが青い綺麗な目で、俺を見つめる。
『もう、こいつは、俺の前足が好きなのか?』俺は心の中で呟く。
『あ、あぁ~、気持ちいい~』フレヤは今度は、俺の喉の辺りを指で優しく撫でる。
「あっ、痛っ!」俺は嬉しくなって、フレヤの指を甘噛みしていた。
「もう、レーニャ。指噛んじゃダメだそ。」フレヤが少し困った顔で俺を見つめる。
「コンコン」っと工房のドアをノックする音が聞こえた。
「フレヤ、入るわよ。」サクラの声が聞こえてきた。
工房の扉を開けて、取っ手のついたバスケットを持ってサクラが入ってきた。
「どう、なにかわかった?」サクラはフレヤに近づいてきて、質問をする。
「はぁ~、まったく、ずっと見てるんだけど、なんの反応も無いのよ。」フレヤが溜息交じりで、サクラに回答する。
「それより、レーニャちゃん、だいぶフレヤになついちゃったわね。エルシア様が、ちょっと妬けるわねって言ってたわよ。」サクラはフレヤの膝の上で、仰向けになっている俺を見つめて声を上げる。
「あっ、でもサクラ。レーニャさっき私の指を噛んだのよ。」フレヤは俺が噛んだ指をサクラに見せる。
「フフ、それはね、たぶんフレヤのことが好きで、噛んだんじゃないかしら?」サクラは微笑んで、フレヤに声をかける。
「え~、なにそれ?」フレヤが納得がいかない声を上げる。
「猫が甘噛みするのはね、愛情表現の一種よ。まぁ、他にはもっと遊びたいとか、触るのをやめてほしいって時に噛む場合があるわ。」サクラが丸椅子に腰を下ろしながら、フレヤに説明する。
「ふ~ん、なんで、噛んだのレーニャ?」フレヤが俺に質問する。
『もっと、撫でてほしいのと、フレヤが好きだから。』俺はフレヤに「ニャー!」と答える。
「フフ、嫌だったらフレヤの膝の上からさっさと逃げてるわよ、やっぱりフレヤのことが好きだからじゃない。」サクラは微笑んで声を上げる。
「レーニャ、私のこと好き?」フレヤは綺麗な青い瞳で俺を見つめる。
『大好き!』俺はフレヤに「ニャー!」と答える。
「フフ、これはエルシア様に報告したら、きっと嫉妬でおかしくなっちゃうかも。」サクラは楽しそうな声を上げる。
「え~、レーニャ、エルシア様のことも好きだよね?」フレヤは困った顔で俺を見つめる。
『うん、大好き!』俺が「ニャー!」と答えると、フレヤは満面の笑みをうかべる。
「ほら、サクラ。レーニャ、エルシア様のことも大好きだって!」フレヤが嬉しそうにサクラに声をかける。
「ウフフ、それじゃ、それも合わせて報告しないとね。」サクラは優しく微笑んで答えた。
「それより、フレヤ。お腹は大丈夫?」サクラがフレヤに声をかける。
「あっ、もうそんな時間なんだ。」フレヤはお腹に手をあてて、声を上げる。
「レーニャちゃんも、お昼ご飯食べる?」
『食べる!』俺はサクラに「ニャー!」と鳴くと、フレヤの膝の上で立ち上がる。




