27_エルシアの返礼
『乗船♪乗船♪』大きな船の横のタラップをドラードを先頭に上って行く、フレヤの前にぶら下った俺はワクワクしている。
「エルシア、海に出るといろんなものが、見れるんだぞ!」殿下に抱かれたアルベルタが、殿下の肩から顔を出して、エルシアに声をかける。
「まぁ、そうなんですか、それは楽しみですね。」エルシアがアルベルタに答える。
「レーニャ、怖くないか?」フレヤが俺に声をかける。
『全然!ワクワクだよ~!』俺は上を向いてフレヤに「ニャ~!」と答えると、フレヤが優しく微笑む。
『おぉ~、ここが船の上か~』タラップから甲板にフレヤが上がって、俺はフレヤの前でキョロキョロする。
『あっ!なんかフレヤも嬉しそうだ。』上を向くと、フレヤは辺りを見渡してから、俺を見つめて微笑む。
「フレヤ、これホントに沈まないの?」サクラが小声でフレヤに声をかける。
「心配しなくても、大丈夫よサクラ。」フレヤがサクラに小声で答える。
「全員!整列!」ドラードが声を上げると、甲板の上にたくさんの軽装の男性たちが、集まってきて綺麗に整列する。
「殿下、アルベルタ様に礼!」軽装の男性たちが、一斉に右腕を握って前に出して、「ハッ!」と声を上げると、その右腕を胸の前で水平にする。
「皆、出迎えご苦労!帝都まで、よろしく頼む。」殿下が軽装の男性たちに声をかける。
「全員、出航準備!帆を張れ!」ドラードが声を上げる。
「ハッ!」整列していた男性たちが、声を上げると、一斉に甲板のあちらこちらに散っていく。
「エルシア様、サクラ、上、上。」フレヤが声を上げる。
『おっ!おぉ~!これって、帆船なのか。』俺が上を見ると、マストに大勢の男性たちが登って、帆を張る準備を進めている。
「レーニャ!出航するぞ~!」アルベルタが俺の傍に来て、嬉しそうな声をかける。
『うん!就航する~!』俺もワクワクして、「ニャ~!」とアルベルタに答える。
「殿下、今日は波も穏やかですし、一時半もあれば帝都に到着します。」ドラードが殿下に声をかける。
「そうか、一時半か…」殿下が少し寂しそうに声を上げる。
『殿下、なんか寂しそうだな…』俺は殿下を見つめて、心の中で呟く。
「船長!出港準備、整いました!」右腕を胸の前で水平にした男性が、ドラードの前で声を上げる。
「よし!錨を上げよ!出航ー!」ドラードが大きな声を上げる。
「ガコン!」と「ギシギシ」と船から音がして、「バフォン!」と帆が風を受ける音がする。
「殿下、アルベルタ様、エルシア様に礼!」船の下から声が聞こえる。
「アルベルタ、エルシア。」殿下が声をかけて、船の欄干へ向かって歩き出すと、その後ろをアルベルタとエルシアが着いて行く。
サクラとフレヤは、殿下たちから少し離れた欄干に移動する。
「フレヤ、ホントに進んでいるのね。」サクラがフレヤに声をかける。
『見えない~!』船の欄干が邪魔な俺は「ニャ~!」とフレヤに声をかける。
「レーニャも見たい。」フレヤは俺を包んだ布を欄干から見えるように持ち上げてくれる。
『うわぁ~、陸地が遠ざかっている~!あっ!案内役の人たちだ。』鎧を着た2人の男性が、右腕を胸の前で水平にして立っていた。
『あっ!アルベルタ、手を振ってる。』横を見ると殿下に抱き上げられたアルベルタが、案内役の人たちに手を振っていた。
『あれ?また、同じ格好してる。』エルシアは右腕を胸の前で水平にして立っていた。
『バイバーイ!』俺は案内役の人たちに「ニャー!」と声をかける。
「ほら、レーニャ、あれが昨日泊まった、お城だよ。」フレヤが前を指して、俺に声をかける。
『う、うわぁ~!なんじゃこりゃ~!』案内役の人たちから視線を上げると、巨大な山のような建物が見えた。
『あっ!あの1番高いところって、今朝登ったところかな。』建物の先を見つめて、心の中で呟く。
「殿下、驚きました。私にまで礼をしてくれるとは…」エルシアが欄干から離れて、殿下に声をかける。
「うん、多分、昨夜のことをフランツから、聞いたのであろう。しかし、流石はサイタマ兵団総帥だな。エルシアの返礼、とても綺麗だったぞ。」殿下がエルシアに声をかける。
「殿下、私を揶揄いになられてますか?」エルシアが殿下に声をかける。
「揶揄ってなどおらん。アルベルタもエルシアの返礼、綺麗だったろう?」殿下が腕に抱いているアルベルタに声をかける。
「はい、お父様。とても綺麗でした。」アルベルタが殿下に答えると、エルシアが困った表情をする。
『総帥?…、エルシアは、領主の他に総帥もやってるの…』俺はエルシアを見つめて心の中で呟く。
「あっ!お父様、下ろしてください。」アルベルタが俺たちを見て、殿下に声をかける。
「エルシア、サクラ、フレヤ!周りがもっと良く見える場所に行くぞ!」殿下がアルベルタを甲板に下ろすと、アルベルタが3人に声をかける。




