12_海が好き~!
『うわぁ~、メッチャ高いなぁ~!』俺はフレヤの前に布に包まれて、ぶら下って下を見ている。
「下の部屋の覗き窓より、ここからの方が、町の様子が全て見渡せます。」カトゥルスが声を上げる。
『ここは、展望台なのかな。』俺たちは覗き窓の部屋の梯子を上って、部屋の上にいる。
「アルベルタ様、いかがですか?」ポトランカが声を上げる。
「うん、凄くよく見える。」周りを鉄で出来た柵が囲んでいて、アルベルタが柵の隙間から下を覗いていた。
「凄いね、レーニャ。」フレヤが俺に声をかける。
『うん、凄い!』俺は上を向いて、フレヤに「ニャー!」と答える。
『凄いな…、カバカリヤの町よりも全然大きい…、あんな遠くまで、家がある。』俺はカーマの町を見渡して、心の中で呟く。
「カトゥルス様、この下の幾重にも重なった、城壁なんですけど、規則性が無いように見えるんですが…」フレヤがカトゥルスに声をかける。
「それは、敵が攻め込んだときに、城壁と城壁の間で、敵が道に迷うように作られているんです。」カトゥルスがフレヤに説明をする。
『ホントだ、城壁が長かったり、短かったり、城壁の間隔もまちまちで、ところどころで切れたり、つながったりしてる。』俺は真下に見える城壁を見つめて、心の中で呟く。
『あっ!家もある。』城壁と城壁の間には、よく見ると家の屋根も見えて、木が生えていたり池も見えた。
『あら、大きな川がある。』視線を先に向けると、一番遠くの城壁の先に大きな川が見えて、町に向かう橋が見えた。
「アルベルタ様、フレヤさん、こちらに来てもらえますか。」カトゥルスが声をかける。
アルベルタとフレヤが振り向くと、カトゥルスが反対方向を指していた。
「カトゥルス!そっちからは、なにが見えるのじゃ!」アルベルタが嬉しそうに声を上げる。
「カーマの町より、もっと凄いものが見れますよ。」ポトランカが声を上げると、アルベルタと手をつないで歩き出す。
「うわぁ~!」アルベルタが柵の隙間から、覗いて大きな声を上げる。
『なにが見えるんだろう!』俺はアルベルタの声を聞いて、ワクワクする。
「レーニャ、なにが見えるのかなぁ~」フレヤが歩きながら、俺に声をかける。
『海だぁ~~!』アルベルタの隣にフレヤが立つと、俺の目の前には青くて広い海と、遠くに水平線が見えて、「ニャ~~!」と俺は大きな声を上げる。
「レーニャ、どうしたの大きな声出して、フフフフ…」フレヤが笑いながら俺に声をかける。
「年に数回、沖の方に鯨が現れるんですよ。そうすると、ここから狼煙を上げて、漁師たちに知らせるんです。漁師たちは小舟に乗って大勢で、鯨を狩りに行くんですよ。」カトゥルスが説明をする。
「そうだ、アルベルタ様、今度はこちらへ。」ポトランカが声をかけて、アルベルタの手を引いて歩き出す。
「カトゥルス様、あちらからはなにが、見えるんですか?」フレヤがカトゥルスに確認する。
「あっちは、帝都の方角になります。今日は天気が良いので、ベステ川とブランカリオの山が見えると思います。」カトゥルスが説明をする。
「レーニャ、川と山が見えるそうよ!」フレヤが嬉しそうに俺に声をかけて歩き出す。
『今度は、川と山か~!』俺はワクワクして「ニャ~!」と声を上げる。
「アルベルタ様、見えますか?こちらの方角なんですが…」ポトランカがアルベルタに声をかける。
「う~ん、よくわからんな~」アルベルタが声を上げる。
『どれどれ~、あぁ、なんか遠くに山並みが見えるな。』アルベルタの隣に立った、フレヤの前から俺も前を見つめる。
「あの川と山を越えると、帝都になります。」カトゥルスが説明をする。
「カトゥルス様、申し訳ありません。私には遠くに霞んだ山並みが、見えるぐらいですかね。」フレヤが声を上げる。
「そうですか、山の中腹辺りから、滝が流れているんですが、見えませんか?」カトゥルスがフレヤに声をかける。
『滝…、そんなもん見えねぇぞ…、山自体が霞んでるのに…』俺は心の中で呟く。
「申し訳ありません、良く見えません。レーニャには見える?」フレヤが俺に声をかける。
『いや、全然見えませ~ん!』俺はフレヤに「ニャ~!」と答える。
「なんか、フレヤさんとレーニャちゃんを見てると、お話をしてるみたいに見えますね。」カトゥルスがフレヤに微笑みながら、声をかける。
「えっ!フフフ…、お話だなんて…、ねぇ~、レーニャ。」フレヤが俺に声をかける。
『俺は猫だから、なに話しても会話にならないんだけどね~』俺はフレヤを見上げて「ニャ~」と声をかける。
「話…」フレヤの顔から微笑みが消えて、俺をジッと見つめる。
『ん!どうした、フレヤ?』俺はフレヤに「ニャ?」と声をかける。
『んあぁ~!』フレヤの綺麗な青い目が、白目に変わる。




