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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第1章 1日目

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09_あっ!パンツ履いてる


優しいぬくもりの中で、目を覚ますと前足に違和感を感じる。

「可愛いな~」フレヤが指で俺の前足を優しく触っていた。

俺はこそばゆくなって、触られていた前足をひっこめる。

「あっ、レーニャ起きちゃった。ごめんね。」フレヤが青い綺麗な目で、俺を見つめる。


眠っている間に、フレヤは俺を膝の上に仰向けに抱いていた。

『フレヤー!』俺は「ニャー!」と、フレヤに向かって鳴いていた。

「レーニャのお陰でだいぶ、癒されたわ。」フレヤは俺の喉の辺りを優しく指で撫でる。

『おっ、おっ、気持ちいい~』フレヤの指に、俺は自分の喉を擦り付ける。


「さて、エルシア様のところに行かなくちゃ。」俺を撫でながら、フレヤが声を上げると俺を膝からベットの上に優しく下ろした。

『なんだ、エルシアのところに行くのか。』俺はまだ眠いのか、大きなあくびをする。

「レーニャ、ここが気にいったら、眠ってていいわよ。」フレヤはそう言うと、ベットから立ち上がる。

フレヤは部屋の床に摘んである本の間をすり抜けて、部屋の隅にあるロッカーダンスを開ける。


フレヤはメイド服を脱ぎだすと、パンツだけの姿になる。

『あぁ、エルシアもそうだが、こいつらは、恥ずかしいとか無いのか~、ん?そうか、俺って猫だもんな、猫に裸を見られても恥ずかしくないか。』俺は納得する。

『あれ?そうだ、フレヤはパンツ履いてるな。』俺はあることに気が付く、『そう言えば、エルシアってパンツ履いてたっけ?』と思いながらフレヤの小さい背中に視線を移す。

『ん!なんだ、これ!』俺はフレヤの背中に無数の傷痕のような痣があることに気が付いた。


俺はベットを降りると、フレヤに近づいてフレヤの背中をまじまじと見つめる。

『なんだよ、この痣…』それは鞭で打たれたような痣だった。

『なんだよ!フレヤ、この痣は?』俺はフレヤに向かって、「ニャーオン!」と鳴いていた。

フレヤは後ろを振り返って、俺を見つめる。


「どうしたのレーニャ?」フレヤは少し驚いた顔で振り返って俺を見つめたが、直ぐに優しく微笑む。

『誰にやられたんだ?』俺はフレヤに向かって、「ニャー!」と問いかけてみる。

「レーニャは、甘えん坊さんね。」フレヤはしゃがんで、俺の頭を優しく撫でる。

『あっ、あっ、気持ちいい~』俺はフレヤに頭を撫でられて、気持ちよくなる。


『いやいや、そうじゃない。フレヤの背中の痣だ。エルシアかサクラにお仕置きされた?いや、あの二人が、そんなことをフレヤにするはずは無い…』俺はフレヤの背中の痣について考える。

「ちょっと待ってて、直ぐに着替えるから。」フレヤは立ち上がって、背中を向けるとロッカーダンスの中から出会った時と同じようなシャツを出して、腕を通す。

『そうか、フレヤは生まれてきたことが辛かったって、言ってたっけ…』俺はフレヤが木の下で言っていた言葉を思い出す。


気が付くとフレヤは、ズボンを履いていて出会った時と同じような姿になっていた。

出会ったときと違うのは、シャツもズボンも汚れていない。

『エルシアとサクラが救ってくれたって、言ってたな。まだ、子どもなのに…、どんな辛い経験をしたんだろう…』俺はフレヤの背中の痣を見て、胸が締め付けられそうになった。

『フレヤ、今は幸せか?』俺はフレヤに向かって、「ニャー!」と聞いてみた。


「もう少しだから、レーニャちょっと待っててね。」フレヤは俺の問いに、優しい声でそう答えた。

『言葉は通じねぇよな…』俺は少し猫に生まれたことを後悔する。

「よし、できた!」フレヤは布を海賊のように頭に巻いて、後ろを振り返る。

『やっぱり、海賊だよな~』フレヤの左目の黒い眼帯も相まって、俺は心の中で呟く。


「そうだ、レーニャ、私の工房に来る?」フレヤは俺を見つめて、明るい声を上げる。

『工房?あっ!あの小屋のことか、行くー!』と俺はフレヤに向かって、「ニャー!」と返事を返した。

「よし!おいでレーニャ。」フレヤはしゃがんで、俺を優しく抱き上げた。

フレヤの青い瞳は綺麗で、俺は吸い込まれそうになる。


『あっ!ひょっとして、この左目は…』俺はフレヤの左目の眼帯を前足で触る。

「レーニャ、どうしたの?眼帯が気になった?」フレヤは俺に優しく微笑む。

『きっと、この左目も何かあったんだ…、フレヤ…』俺は前足をひっこめて、俯いてしまう。

フレヤの無邪気な笑顔が、ますます俺の胸を締め付けた。


「フフ、レーニャ、どうしたの?急におとなしくなっちゃって。」腕の中で俯いてしまった俺に、フレヤは優しく声をかける。

『そうか、フレヤは今幸せなんだな。馬鹿な事聞いちゃったな。言葉が通じなくて、良かった。』俺は猫で良かったと思った。

「レーニャ!それじゃ、行こう。」フレヤはそう言うと、部屋の扉を開けた。

『フレヤ。』俺が「ニャー!」と呼ぶと、フレヤは優しく微笑んだ。


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