46_ネギマが気に入ったようだ
「サクラ、後は任せたわ。アモル卿、中に入りましょう!」エルシアはサクラとヴァルムに声をかけると、俺を抱いたまま裏口から店の中へと入る。
「エルシアー!レーニャはいたのか?」アルベルタが声を上げて、走ってくる。
「アルベルタ様、ここにいますよ。」エルシアがしゃがんで、俺をアルベルタの前に差し出す。
「ダメじゃないか、レーニャ!大人しくしていろと、言ったではないか。」アルベルタは俺を見つめて、声をかける。
『ウンチがしたかったんだよ~!』俺はアルベルタに「ニャ~!」と答える。
「しかし、レーニャちゃんのお陰で、裏に潜んでいた賊も、倒すことができましたね。」ヴァルムがエルシアに声をかける。
「レーニャが賊を見つけたのか?」アルベルタがヴァルムに質問をする。
「はい、グリュックゼーレ卿が裏庭に飛び出した瞬間に、レーニャちゃんが、鳴きながら垣根から飛び出して来ました。あれは、きっとグリュックゼーレ卿に賊が潜んでいることを、教えようとしていたように、私には見えました。」ヴァルムが答える。
「レーニャ、ホントにそうだったの?」エルシアが俺の顔を覗き込んで、声をかける。
『ホントだよ~!』俺はエルシアに「ニャ~!」と答えると、エルシアは俺を優しく見つめて微笑んだ後、俺の頭に頬ずりする。
「ホントに良かった、大事が無くて…」エルシアが声を漏らす。
『エルシア…、心配かけて、ごめんなさない…』俺は「ニャ…」と声を上げる。
「おぉ~、エルシア、レーニャは見つかったのか?」殿下の声が聞こえた。
「はい、まったく、お転婆さんですから、ちょっと目を放すと、この子は…」エルシアが顔を上げて、声を上げる。
俺がエルシアの視線をたどると、殿下が微笑みながら立っていた。
「お父様、裏庭にも賊がいたそうです。」アルベルタが殿下に声をかける。
「なに、裏庭にも賊がいたのか?」殿下は驚いた表情で、エルシアに確認する。
「はい、裏庭の垣根の中に潜んでいました。」エルシアが俺を抱いたまま、立ち上がって殿下に答える。
「それで、その賊は?」殿下がエルシアに確認する。
「グリュックゼーレ卿を襲おうと垣根から飛び出してきた賊は、あっという間に、サクラさんが片付けられました。」ヴァルムがエルシアの横に来て、殿下に説明をする。
「いえいえ、サクラも申しておりましたが、アモル卿とニックスが、私の背後の賊を倒してくれたから、サクラが簡単に残りの賊を倒せたのです。」エルシアがヴァルムに微笑みながら、声をかける。
「そうか、アモル卿、ニックスも大義であった。それからサクラか…、エルシアはホントに良い、従者に恵まれているな。」殿下がエルシアに声をかける。
「はい、サクラは、私には出来すぎた従者でございます。」エルシアが殿下に答える。
「殿下!店の中の片づけは、終わりました!」フランツが声を上げて、歩いてくる。
「そうか…、ならば、フランツの城に戻ろうか。」殿下がフランツに声をかける。
「あぁ、それが…、ネーベルが、食事の途中でしたでしょうからと、料理を作り始めてまして…」フランツがバツが悪そうに殿下に答える。
「あぁ…、そうか…。うん、ならば今夜はとことん、いただいて帰ろう!」殿下が明るい声を上げながら歩き出す。
「お父様、私もまたお腹が空きました。」アルベルタが殿下の後を追いかけながら、声をかける。
「そうか、アルベルタはなにが食べたい?」殿下が足元のアルベルタを見て、歩きながら質問する。
「はい、ネギマが食べたいです!」アルベルタが嬉しそうに、殿下に歩きながら答える。
「それにしても、グリュックゼーレ卿には、驚かされました。」ヴァルムがエルシアに声をかける。
「あら!サクラのことですか?」エルシアが惚けた感じで、ヴァルムに確認する。
「いえいえ、サクラさんのことではなく、グリュックゼーレ卿あなたのことです。」ヴァルムはエルシアの耳元で囁くように声をかける。
「あら!私のどんなところですか?」エルシアは惚けた感じで、ヴァルムに確認する。
「賊が現れても、身じろぎもせず、それからサクラさんが賊を倒していく中、サクラさんに声をかけられましたよね。1人は生かして置くようにと。」ヴァルムがエルシアの耳元で囁くように説明をする。
エルシアは声は上げずに惚けた表情で、前を見つめている。
「サクラさんが見えていたのですか?」ヴァルムがエルシアに質問をする。
「いえ、ハッキリとは見えませんでしたが、サクラに間違いないと思いましたから、当てずっぽうで声をかけました。」エルシアが惚けた感じで答える。
「当てずっぽうですか…」ヴァルムは口元緩めて声をかけるが、エルシアは視線を合わせないようにしている。
「アモル卿、それより、私たちもネギマを食べに参りましょう!」エルシアがヴァルムに微笑んで声をかけると、歩き出した。




